月城くんの偏食事情。

静夢の母親の両親も近頃は二人の恋愛を反対することもなくなったらしく、会おうと思えば普通に会えるという話になり、早速翌週に会うことになった。

「こーくんも来て。お母様の体質を変えたのは彼だから、有益な話が聞けるかも知れない。」

静夢がそう言うので、俺も同席することになったけれど……気まずいな……。


──翌週

駅近くのファミレスで、俺たちは緋美の父親を待っていた。静夢は「どんな人だろうね」と待ちきれない様子でそわそわしていたけれど、緋美は終始無言で、さすがに緊張しているようだった。

ほどなくして、静夢の母親と一緒に、長身の男性が現れた。

「静夢、緋美。久しぶり。会ってくれてありがとう。」

「静夢の彼…光くんだったね。初めまして。天宮 斗夢(あまみや とむ)です。今日はありがとう。」

「えっと、あ、はい、日向野光です。よろしくお願いします…。」

緋美の父親は意外と穏やかそうな人だったが、眼鏡の奥の瞳には、吸い込まれそうなほどの色気があって…格好良いな。まるで、若い頃のジョニデみたいだ。

…と言うか、若い。
えっ!?若くない?

「緋美のお父さん若〜い!何歳ですか?」

さすが静夢。静夢の辞書に遠慮なんて言葉はない。

「34だよ。」

え、ちょっ、
待って??緋美は今15だから…

「ええ!お母様より7つも下なんですか?すごーい!」

いや、確かに年齢差すごいけど、
緋美が生まれた時まだお父さん10代では!?

お母さん…毒親で結婚を反対されたとか言ってたけど、そりゃ反対されるよ。さすがこの二人の母親、ぶっ飛んでるな!
一方だけの話を聞いても、真相ってわからないものだと言うけれど、今それを目の当たりにした気がする…。

「会えて嬉しいよ。ずっと二人の話は聞いてた。俺もまだ若かったしさ、お互いの両親の反対を押し切ってまで紅美(くみ)と一緒になることは難しくて…情けない父親だよね。」

「紅美が昇さんと結婚しても諦められなくて。でも紅美の幸せが俺の幸せだから、見守ることにしたんだ。だけど、紅美が独りになって、お腹に静夢(こども)がいると聞いた時、俺はもう絶対に紅美と離れないって決めた。俺が紅美を幸せにするって。」

「でもその時まだ俺は学生で…親の脛齧ってる奴が、紅美と子どもを幸せになんて、できっこないよな。反対されて当然だ。一人前にならなきゃ子どもに会う資格はないと思って、君たちが物心つく前に、俺から離れることにしたんだ。」

「それからはがむしゃらに頑張って、今やっと、紅美と君たちを受け入れられる土台が出来た、って感じかな。遅くなって本当に申し訳ないけど……。」

「じゃあ今、実家暮らしなんすか?」

「うん。両親と、弟もいるよ。お前たちにとっては叔父さんだな。」

「…そうなんすね…。」

緊張で強張っていた緋美の頬がふわっと緩んだ。
今、緋美の一番聞きたいことが聞けたのかも知れないな。

「緋美のお父さん、そんなにお母様のことが好きだったんですね!ステキ〜♡」

「うん、大好きだよ。もちろん、お前たちのことも。静夢のことも俺は、自分の本当の息子だと思ってるよ。」

「『静夢』って名前をつけてくれたの、彼なのよ。」

「えっ!そうなの?僕、自分の名前気に入ってます、ありがとうございます!じゃあ僕も、お父さんって呼んじゃおうかな!」

「うん、呼んでよ。敬語も使わなくていいよ。これからは本当の親父だと思って頼って。静夢、緋美。」

若いお父さんで驚いたけど、家族のために頑張って、やっとこうして会えたなんて、感動的だな…。


「ところでお父さん、お母様は、血をもらうようになってから、どのくらいで陽の光に強くなったの?」

「そうだな…紅美と再会して、血を与え始めてから1ヶ月経った頃には、日中に眠ることがなくなってきて、光が眩しいとも、あまり言わなくなったかな。それから徐々に強くなって、緋美が生まれる頃には、日傘もマントも無しで外出できてたよ。」

「そうなんだ!僕も最近日中起きていられるようになってきたから、このまま血をもらい続ければ、日光への耐性は思いの他早く獲得できそうだね!」


「あと、食事の方は?何回くらいの行為で、食べられるようになったの?」


静夢……!?