月城くんの偏食事情。

「ちょちょちょ…っと待って、それってもしかして…」

「こーくん、本当に引かないでね。」

そう言って月城くんは、ポケットから血のついたティッシュを取り出した。

「これ、こーくんの。」

「えっ!うそっ!もしかしてサッカーの時の鼻血!?」

「うん…すんごい良い匂いがして、持ってきちゃった。」

「ちょっ…とストップ、色々と整理させて。。。」

「…月城くんがさ、緋美くんの血を飲んでるのは、なんで?緋美くんしか、飲ませてくれないから?」

「えっと、実は血って買えるんだ。僕やお父様みたいな体質の人、全世界にいるらしくてね。」

「昔は僕も、取り寄せた血を主食にしてたんだけど、生産者?によって、血の味も値段も、ピンキリなの。」

「そんなに違うの??」

「うん、全然違う!血を提供してくれた人の性別、体質や年齢なんかによって、大きく味が変わるから、ランクもあるんだ。」

「健康な若者の血100%は高価だね。老若男女のブレンド血液は安いけど、正直僕には合わない。」

「ワインみたいなもんかな…父さんがそんなことを言ってたような…」

「そうだね、ボジョレヌーボー、知ってるでしょ。解禁解禁って、毎年大人が騒ぐじゃない?血液市場は特に、新鮮な方が人気で、その中でも圧倒的に人気の品種があるんだけど…」

「どんな品種?」

月城くんは俺に耳にソッと唇を近づけて、

「……若い女の子の血。」

小声で囁いた。

「えっ…それって…!」

吸血鬼が好むやつ………!!!

と思ったけど…また笑われそうだから、俺はグッと言葉を飲み込んだ。

「実は僕も一度、飲んだことあって……。
あー、恥ずかしいな…でも、一番人気って、飲んでみたくなるじゃない?でもね、正直僕には合わなかった。」

「一番人気の高級血液が不味いって知った時、なんだか悲しくなっちゃて…」

「落ち込んでたら緋美が、俺の血飲んでみる?って言ってくれて…。」

「弟から直接血を飲むなんて、倫理的にどうなの?って思ったんだけど、飲んでみたら、エッ何これ今までで一番美味しい…!ってハマっちゃってさ、あはははっ!」

月城くんの照れどころも、倫理観も、笑いのツボも全くわからなかったけど、
市販の血?より、緋美くんの血が美味しかったことだけはわかった。

「……それからは、緋美くんの血をずっと飲んでるんだ。」

「そう、でも今日、緋美の血より美味しそうな血に出会ったってワケ。」

「つまりそれがその……俺の血、だと……。」

「はい!御名答です♡」

月城くんは色白の肌をほんのりピンクに染め、照れ隠しをするようにおどけて両手の人差し指を立てた。

やっぱり照れどころはわからない…。

月城くんのその笑顔の奥で、尖った牙が、きらりと光っている。


え……?
あれで俺、噛まれて…、
血、吸われちゃうの……?