月城くんの偏食事情。

「ひみぃ、30秒も顔つけてられなかったよ!雑魚すぎるぜ〜」

「うるせ!昔は10分いけてたんだよ!しばらく潜ってなかったから、勘が鈍っただけだし!」

「次はベイブレードで勝負だ!」

「はん!それ俺が得意なヤツだわ。やったことはないけど、絶対勝つ!」

緋美たちはまた弟の部屋へと消えていった。


こんな短時間で意気投合することある?
まあでも変なことは考えてなさそうだし、放置しておこう。


「じゃあこーくん、僕たちもお風呂いただこうか。お先にすみません、入ってきますね!」

「はーいどうぞ!」

すごいな…そんな軽いテンションで…。
でも大浴場にだって普通に一緒に入ったんだし、裸だからって何かあると思う方がおかしいよな。
ただの風呂、ただの風呂……。


───浴室──

「はい、静夢。このタオル使って──。」

振り返ると、静夢は頬を真っ赤に染めて俯いていた。

「えっ!何!?静夢!照れてるの?!」

「好きな人とお風呂入るのに、照れない人いるの…?」

「だってさっき、『はーい!』って感じだったじゃん!」

「そう言うしかないでしょ、一緒はちょっと…って言えないよ〜!」

「そ、そっか。静夢、先に入っていいよ。俺待っとくから。」

「ううん、一緒に入ろ。ちょっと照れただけ。大丈夫。」

「そんなに照れられたら、俺が大丈夫じゃないよ。前みたいになっちゃうかもだから…。」

「なってもいいよ、もう泣いたりしないし。」

「ただ……、」

「何?」

「これ、一人じゃ脱げなくて…」

「脱がしてくれますか…?」

ええっ!そんなイベント聞いてない…!!
真っ赤な顔で丁寧にお願いすな!
血圧上がって風呂に入る前に死にそう…!!!

「わ、わかったよ。どこから脱がすの?」

「まず、エプロンの紐ほどいて。風ちゃん固結びしてるはず。」

俺はエプロンのリボンの端をゆっくりと引いた。


しゅる……


ただエプロンの紐をほどくだけなのに、自分が脱がしていると思うと、心臓が胸の中で暴れるみたいに、鼓動がどんどん速くなる。
リボンはすぐに解けたけれど、その下の固結びがなかなか解けなくて、気持ちばかりが焦ってしまう。

まるで早く裸にしたくて頑張っているみたいじゃないか……!

手が震え、時間がかかってしまったけれど、なんとかエプロンを脱がすことに成功した。

「ふぅ…。次は、メイド服か…。」

「あれっ、後にファスナーないよ?」

「うん。ワンピースはガバって脱ぐしかないと思う。でも生地が伸びないからさ、僕バンザイしてるから、下から捲り上げて脱がせてくれる?」

下から捲り上げる?!スカートを??
なんてハードルの高い服なんだ!!

でもそうしないと脱げないなら……。

俺は意を決してフリルのスカートに手をかけた。
悪いことしてる気分……謎の背徳感があるな…。

静夢の必死で隠していたパンツが顕になり、

お腹…胸…脇…首…そして、
真っ赤に頬を染めた顔。

捲り上げた服のせいで、殺人級に可愛いおでこまで見えている。

後は腕を抜くだけだけど……
何このポーズ!拘束されてるみたい……!


「恥ずかしいってば…腕早く抜いて…。」

「ご、ごめん!今やる!」

慌てて片腕ずつ袖を抜くと、ようやくワンピースが外れた。

「ふぅ〜……。」

静夢は大きく息を吐くと、脱いだ服を抱えて俺を睨んだ。

「絶対途中でわざと止まったでしょ。」

「……ちょっとだけ。」

「もう!」


月城くんはぷくっと頬を膨らませ、そのまま逃げるように浴室へ向かった。


……ただの風呂。

ただの風呂だからな。

俺はもう一度、自分にそう言い聞かせてから、そのあとを追った。