月城くんの偏食事情。

───次の日曜日。

日が暮れる頃、俺は静夢と緋美を迎えに、最寄駅まで歩いた。

とりあえず両親には、静夢と緋美のことを『友達とその弟』としか話してない。
「転校早々、泊まり合えるような友達ができるなんて…!」と、両親はとても喜んでいた。

恋人って知ったら、ビックリするかな…。
恥ずかしいな……どのタイミングで言えばいいのかな……。


そんなことを考えているうちに、駅に到着した。
そろそろ二人の乗った電車が着く頃だ。

程なくして、静夢と緋美が改札から出てきた……

……んだけど、

静夢は、ふりふりの襟がついたシャツにダブルボタンのベスト。その上から、襟の大きな長い上着まで羽織っていて………俺は一瞬、言葉を失った。


「……えっ、静夢!貴族みたいじゃん!」

「御両親に初めてお目にかかるワケだし、正装がいいかなって!」


これ正装なの?何界隈の正装??
Tシャツにスウェット姿の緋美との差が凄い…!


「カジュアルで良かったのに、でもオシャレしてきてくれてありがとう。じゃあ、行こっか。」


最寄駅から家までは、歩いて10分もかからない。

なのに、ハロウィン先取り貴族と、大柄な寝巻き男と、地味シャツの俺が並んで住宅街を歩いていると思うと、物凄く家が遠く感じた。


家に着いて、二人を見た両親も、やっぱり目を丸くして言葉を失っていた。

「……いらっしゃい!静夢くんと、緋美くんね。自分の家だと思って、ゆっくりしていってね。」

絞り出すように母さんがそう言うと、父さんも慌てて続いた。

「ど、どうぞどうぞ、狭いところですが…。」


「お父さま!お母さま!初めまして!月城静夢です。こーくんとお付き合いさせてもらってます!どうぞよろしくお願いします!」


うわっ、普通に言った!!


「えっ!お友達付き合いじゃなくて??」

「はいっ!お友達でもありますが、恋人です!」


父・母「ええ〜!」

「光が恋人を連れてくるなんて…初めてよ!ビックリだわ〜」

「そうか〜、光。お前も隅に置けないなぁ〜」


いきなり知られてしまって、恥ずかしさで顔から火が出そうになったけれど、意外と両親がすんなりと受け止めてくれたので、少しホッとした。


「これ、僕が作ったマフィンです。お口に合うかどうかわかりませんが…。」

血の味しかわかんないもんね。
お口に合うかわかるわけがなさ過ぎてジワる…!


「まあ、ありがとう!キレイに出来てるわね〜!お菓子はよく作るの?」

「はい、自分はあの…アレルギーが多くて、食べられる物が殆ど無いんですけど、作るのは大好きで!よく作ります!」

「そうなの、アレルギー、大変よね…。」

「あ、でももう直ぐ治るので!治す方法見つかったので!」

「ねっ、こーくん♡」


あああああ…治す方法考えちゃうからヤメテ…


「緋美くんも仲良くしてくれてありがとうね。賑やかで嬉しいわ〜」


「全然仲良くな…、いえ、とっても仲良しっす。光先輩は俺を、弟のように可愛がってくれていて…。」

「あの、弟さんは?」


あれっ?こいつの方が弟襲おうとしてない?
静夢を抱けないからって、弟狙ってそうで怖いんだけど…


ドタドタ……!


弟「こーにぃ、お友達来たの??」

妹「わあ、ハロウィンしてる!」

月「ハロウィン?どこ?」

妹「ねえあっちでハロウィンごっこしよ!」

静夢は妹に腕を引っ張られ、連れて行かれてしまった。


弟「お兄ちゃん、遊ぼ!」

緋「お兄ちゃん?俺、弟だよ?」

弟「どっちでもいいよ!トランプしようぜ!」

緋「俺、手加減するタイプじゃないけど、いいの?」

弟「いいよ!俺が勝つから!」


緋美も弟に連れられて行ってしまった。


良かった、すぐに家族に馴染んでくれて。
こうやって、お互いの家族が仲良くなっていくのは嬉しいな。


「良かったわね〜あんな可愛い恋人ができて。服装にビックリしちゃったけど、とっても素直な良い子だってわかるわ。大切にしなさいよ。」


「…うん……。」


親とこういう話をするのは、生まれて初めてだ。
気恥ずかしいけれど、どこか誇らしくもある。

うまく言葉にはできない、くすぐったいような温かさが、胸の奥にじんわりと広がっていった。