月城くんの偏食事情。

──コンコン!


「緋美?俺。入れて。」

ガチャッ!

声をかけた途端、待ち構えていたかのようにドアが開いた。

「ついに、俺の出番っすか?!」

「いや、お前の出番、ないどころか…」

「静夢、もう抱き合って血を飲んだり、体洗ったり、しないって。」

「ご愁傷様。」

「はっ…!?」

「バレたんすか!?俺の……!」

「うーん、ちょっと、部屋入れて。」


───バタン。

緋美の部屋にも静夢のと同じベッド、
本棚、机と椅子があり、レイアウトは殆ど同じだった。

ただ、枕元のゴミ箱だけは静夢の部屋の三倍ほどもあり、その中には丸められたティッシュが、今にも溢れそうなほどぎっしりと詰め込まれていた。

「ええ何このティッシュの山……。」

「悪いんすか。花粉症なんですよ。」

「お前が鼻かんでるとこ見たことないし、何よりめちゃくちゃ青臭い…。」

「わかってて聞かないでくださいよ!!」

「風呂から慌てて出ていったから、そういうことだとは思ったけど、予想以上だわ……。」

「まあそれはいいとして。」

「静夢は、お前の教え込んだ儀式や作法が、性的だと気付いたらしい。」

「うわっ!マジすか……!終わった………。」

「……軽蔑してましたか……?」

「いや、それが、『緋美は性的知識がないから、単に甘えたかったんだろうな』って。」

「ええっ…さすが天使……!」

緋美は口を両手でおさえ、瞳をキラキラと輝かせた。

「……でも、なんで気づいたんすかね…?
しーちゃん、性的な知識が皆無だったから、全く疑われてなかったんすけど……。」

「……えっ、ウソでしょ?」

「……先輩……?」


「いや、静夢が俺の体を洗ってて、股間のあたりまで下がった時に、疑問に思ったみたいなんだ。」

「照れながら、『ここを僕が、洗っていいの?』…って。」

「うわっ!」

「だから、洗っても良いけど、触ると形が変わるって、教えて……」


「興味を煽って触らせたんすか?!この変態おじさん!!」

「違う違う!俺が自分で扱いて……。変態おじさんには変わりないかも…。
静夢、硬くなるって知らなくて、ビックリしてた。童貞も、やっぱり女の子と性行為しなきゃ、捨てられないと思ってて」

「そして、実は目合いって、性行為のことなんだってことも、話した。」


「言ったんだ…!」


「で、男同士でも、これを硬くして、お尻に入れれば、できるんだよって話したら……」

「話したら??」

「入れたいって……」

「エッ!」

「その、」

「入れられる方は…?」

「嫌だって。お尻に入れるなんて。」

「エッ!」

「抱けないじゃないっすか!」

「いや、お前はどっちみち抱けないけど、」

「挿れたい男が3人……」

「あんな猫みたいな顔して、バリタチっすか…。」

「ちょっとショック…。」

「抱き潰すことばっかり考えてて…。」

「まあ、そういうことだから、嫌われないうちに大人しく、欲望まみれの儀式は辞めて、静夢を抱くことも、諦めてよ。」

「てかさ、挿れる挿れないの前に、静夢は俺の彼氏だから。俺たちは二人で話し合いながら、進んでいくから。」

「……へえ、凄い自信ですね。」

「BLサンド、満更でもなさそうだったのに。なんかありましたね?血を吸わせた時……。」

「な、ないよ!!」

「きょどってません?」

「俺、鼻が効くんすけど…」

「俺のじゃない青臭さが……」

「それも、二種類……」

「えっ!凄い!!この青臭さ充満してる部屋でも、わかるもんなの?!」

「えっ!!」

「かまかけたんすけど……マジすか……」


緋美は膝から崩れ落ちた。