月城くんの偏食事情。

「起きたよ、もう大丈夫…」

そう言って俺たちが部屋を出ると、
緋美が阿修羅のような形相で俺を睨んできた。

こわっ…!


「良かったわ、気がついて。日向野くん、大丈夫?疲れちゃったのかしらね。何か飲み物いれてくるわ。リビングでゆっくりしていてね!」

「僕も手伝うよ〜。」

そう言って二人がキッチンに行った隙に、
ここぞとばかりに緋美が話しかけてきた。


「先輩!!」

「やってないっすよね?!」

「うん。さっき意識が戻ったばっかりだし、血はあげてないよ。」

「いや、そっちじゃなくて!」

「……ッはぁっ!?」

「つ、付き合ったからって、いきなりそんなことにはならないよ俺は!お前じゃあるまいし!!」

「てかさぁ!静夢のチャッピーR15仕様にしたのお前だろ??自分の欲望貫き通すために、静夢にそういう知識つけないようにしやがって!」

「知識がない分、無意識に爆弾投下してくるし、純粋な目で見つめてくるし、命がいくつあっても足りないよ!!」

「だって、知識つけちゃったら…。」

「きっと作法や儀式も嘘だってバレるし、吸われてる時の俺の態度も…キモがられるはず……。」
「ずっと、何も知らずに、俺の血だけ飲んでればいいのに……。」

「でもでも、しーちゃんが望むなら、太陽に強くなることも応援したいし、食べ物の味、知って欲しい気持ちもあるんです!!」

「本当に!!本当ですよ!?」


いや、まだ疑ってもないのに、
今ので逆に怪しく感じちゃったよ…。


「それで俺、いいこと考えました!」

「先輩も、バリバリの童貞だし、しーちゃんに教えられることは何もないじゃないですか。知識もメンタルも、雑魚じゃないですか。」

「まあそうだけど?!言い方腹立つな!!」

「そこで、セクソロジーの造詣だけはマリアナ海溝なみに深い俺が、レクチャーするってのは、どうですかね……。」

は……?

「……つまり?」

「つまり、」

「……3人で───。」


ガタッ!!

俺は椅子から崩れ落ちた。

緋美は床の俺を見下ろし、真面目な顔で手を差し伸べながら、

「先輩は、上と下、どっちがいいですか?」

「それとも………」


「やめろおおおおおおおお!!!」

「正夢にするな!!!」

「えっ?」

「…いやっ、」

「…3人は、おかしいだろ……!」

「……でも……ちょっ…と聞きたいんだけど、俺真ん中になったとして、」

「お前どこなの?」


何を聞いてるんだ俺は!!
でも好奇心が……

「俺は、一番下っすね」

「下から順番に、俺、先輩、しーちゃん。」

「月城ブラザーズで、先輩を挟んであげますよ。」

「俺の下なの!?お前はそれでいいの??」

「いいんです。まずは、参加することに意義がありますからね!」

「順繰り前に送っていけばとは、思ってますけど…。」

「トランプみたいに言うなよ!!!」

「でも、悪い話じゃないでしょ?」

「先輩ひとりじゃ、一瞬で気絶して、すぐふられますよ?」

そんなことない!!!
……って、言いたかったけど、
悲しいかな、あり得ない話じゃない…。

だからって、弟と3人でって、おかしくない?!

でももはや、何がおかしくて、何が正しいかなんて、俺にはわからなくなってきていた。


「お待たせ〜!こーくんはミルクココアにしたよ〜。緋美はお砂糖とミルクたっぷりのカフェオレだよ!」

「クッキーもあるよ!」

「昨日、お母さまと一緒に生地作ったんだぁ。冷凍しとくとね、食べたい時に焼きたて食べられるの!美味しくできてるといいなぁ〜。」


静夢はフリルのついた白いエプロン姿で、
焼きたてのクッキーを振る舞ってくれた。

あああ…静夢はやっぱり天使だよ……。


「しーちゃんのクッキー、めちゃくちゃ美味いよ!お店出せるよ!!」

「そう?えへへ!」

「ね、先輩!」

「あ、うん。本当に、サクサクして美味しいよ。」

「しーちゃんも、早くこの味知りたいよねえ〜!」

「方法もわかったし、せんぱ〜い、頑張りましょうねえ〜!」


緋美め……!!!!!