月城くんの偏食事情。

「こーくんの血は、青い童貞臭と芳醇な恋の香りが混ざり合ってて、一口啜れば、サッパリとした『童貞味』とこってりした『だーい好きの味』が同時になだれこみ、ラストはしっかり『童貞拗らせてます!』って主張してくるの。ほんっとうに美味しい……。」


ここまで味の一切わからない食レポってある?
てか童貞三回も出てきて泣けるんだけど…


「ああ…思い出したら、飲みたくなっちゃったな…。でもこーくん、体調万全じゃないし、今度にしなきゃね……。」

切なそうにそう言うと、静夢は俺の目をジッと見つめてきた。

その熱のこもった視線に、俺は反射的に目を逸らしてしまった。

「こーくん、なんで目を逸らすの?血はダメでも、目線を合わせるのはいいでしょ?」

「こっち見て……。」

静夢は俺の顔を覗きこむと、ひんやりとした両手で頬を包み、無理やり視線を合わせようとしてきた。


あああああ…!この距離でアレを言われたら、今度こそ死ぬ…!


「しっ、静夢…!待って…!!」

「ご存じのとおり、俺はキングオブ童貞。恋人と視線を合わせるのさえ、意識するし緊張もするんだ!」

「しかも、古文書にあった“目をたくさん合わせる”っていう、あの言葉には、実は別の意味があって……。」


「あの言葉?『目合い』のこと?」


爆弾投下を予想していた俺は、
「わわわわわわ!」と声を上げながら両耳を塞ぎ、手のひらで高速ポンポンして迎撃した。


「…そう…実はあれは、破壊の呪文なんだ!視線を合わせながら聞いたら、俺の俺自身が…爆発するっていうか……」

「ええっ、そんなヤバい呪文なの??」

静夢は目を丸くして両手で口を塞いだ。


「うん…拗らせ童貞にしか効かないんだけど、とにかくあの言葉は……心にしまっておいてくれないか…俺には強すぎる……!」

そう言うと俺は、ポムじいさんさながらに、片手で目を隠し顔を逸らした。

こんな、ラピュタ丸パクリの設定で納得するだろうか…。


「そうなんだ…!だからこーくん、具合悪くなっちゃったんだね…。そんな強い言葉だったなんて……。」


納得してるー!さすが静夢!天使!!


「…じゃあ、あの言葉を言わなければいい?」
「目を合わせるのは、大丈夫?」

「それは、うん、単純に照れるけど、大丈夫だよ。」

「良かったぁ〜」

「僕は早く、自分が目玉焼き何派なのか知りたいな!」
「マヨネーズかければ、ホントになんでも美味しいのかも!」


うえーん なんて純粋な……。
俺だって早くその味を教えてあげたいよ…。

でも、それには……、


───こーくん、どっちがいい?

     上?下?それとも…────


「ぶぁああああああ!!!!!」

俺は妄想を掻き消すように両手を激しく振り回した。

「こーくん!どうしたの??」

「ご、ごめん…!ちょっと後遺症が……」

「ええっ!?」

「いや、もうもう、大丈夫。ごめん、俺の修行が足りないんだ。緋美と滝行に行こうかな…。」


「……緋美と2人で出かけるの?」

「いやだよ……」

静夢は頬を膨らませ、俺の服の端を指先でキュッと掴んだ。


「緋美って、こーくんのこと好きだよね?書斎から連れ出して、こーくんに迫ってたし、さっきも、僕と二人きりにしたくないって喚いてたし…。」

「こーくんも、迫られて嬉しそうだった…」


それは本当の本当に勘違いだけど、
こんなストレートに嫉妬してくれるなんて…!
付き合ってるから??
不機嫌な顔が眩しくて目が開けられない…!


「いやいや、緋美は俺のことなんて好きじゃないよ、本当に。俺たちは同担拒否だから、いがみあってばかりだけど、結局は同じ穴の狢っていうか……分かり合える部分も多いっていうか……」

何言ってるかわかんないよな……。


「何言ってるかわかんない……。」


ですよね〜。



「ねえ…」

「…何?」


「……キスして……。」