月城くんの偏食事情。

───土曜の夕方

約束通り俺は月城くんの家に向かった。


森の入り口に着くと、2人が待ってくれていた。

月「こーくん、今日はありがとうね!森は暗くて危ないから、迎えに来たよ。」

緋「しーちゃんはフクロウ並みに夜目がきくんで、暗闇では頼りになるんっすよ!」

緋美が得意げに自慢する。

俺がフッと笑うと、月城くんは無言で少しだけ照れた顔をして、目を逸らした。


月城くんを先頭に、森に入った。

光「家に着くまでにさ、静夢のこと教えてよ。どんな生活してきたのか、何が苦手かとか。」

月「そうだね、僕のこと知っておいた方が、文献と照らし合わせた時に理解がしやすいかも。」

緋「しーちゃんは小さい頃から天使のように可愛かったっすよ!」

光「そういうのはいいから…」

月「子どもの頃からね、普通の子が日中にやってることを夜にやってた感じだよ。
学校も野外での授業は免除してくれて、レポートで単位くれるから、不便だけど困ることはあんまり無かったかなぁ。」

光「人付き合いとか困ったんじゃない?」

月「そうだね、友達と遊びに行くことは殆ど無かった。でも緋美がいたから、寂しいと思ったことも無かったよ。」

光「…それじゃあ、彼女とかも…?」

月「えっ、いないいない!何こーくん、そんなこと聞きたかったの?僕も君と同じだって!言ったじゃない〜。」

緋「そうっすよ!しーちゃんにはずっと俺だけなんっすよ。童貞はもちろん、キスすらしたこともない、純真無垢なピュアピュアボーイなんすから!」


月「…………あるよ。」

緋「はっ?」

月「キスは…………。」

緋「えっ……?」

緋「く、唇と唇の……?」

月「…………ん。」

緋「……えっ?」

 「……えっ?」

 「……えっ?」

正直に話さなくていいのに!
ショックで緋美が壊れたよ!!

光「へ、へぇ〜、そうなんだ。相手、どんな人なんだろ〜?」

バレたら緋美に殺されそうだから、俺は必死で惚けてみせた。

月「太陽みたいにキラキラした子だよ。緊張してギュッて目をつぶってたから、可愛くて、ついつい唇を奪っちゃった。あははっ!」


緋「…しーちゃん……その女…ここに呼んでよ…。」

月「ああ〜それは出来ないよ。無理無理。」


そうだね、女じゃないし……。


緋「……嘘だろ…いつの間にかしーちゃんが、大人になってたなんて…グスッ、グスッ……。」

月「大袈裟だな〜緋美は、キスくらいで。また目が腫れるよ〜。」

あの時顔を真っ赤にして照れて俯いていた癖に、キスくらいなんてよく言うよ。
でも本当にちょっと大人になったこと、弟に自慢したかったのかも知れないな。

自慢じゃなくて地雷になってるけど…。

光「えーっと、苦手なものは、何かあるの?日光以外だと。」

俺は急いで話題を変えた。

月「そうだなぁ、銀製品はアレルギーあって触れない。十字架を見ると気分が悪くなったりする。あと、ニンニクは近くにあるだけでヤダ。」

月「こんなこと言ったらまたこーくんに、吸血鬼みたいって思われちゃうかな!ははっ」

はい、思ってます。
条件揃い過ぎでしょ…
むしろ吸血鬼以外のなんなのよ?

光「…まあ、古文書読んだらその辺りもハッキリするだろうし、頑張って読み解こう!」

そんな話をしているうちに、月城くんの家に到着した。