月城くんの偏食事情。

───土曜の夕方

約束通り俺は月城くんの家に向かった。


森の入り口に着くと、2人が待ってくれていた。

「こーくん、今日はありがとうね!森は暗くて危ないから、迎えに来たよ。」

「しーちゃんはフクロウ並みに夜目がきくんで、暗闇では頼りになるんっすよ!」

緋美が得意げに自慢する。


俺がフッと笑うと、月城くんは無言で少しだけ照れた顔をして、目を逸らした。


「家に着くまでにさ、静夢のこと教えてよ。どんな生活してきたのか、何が苦手かとか。」

「そうだね、僕のこと知っておいた方が、文献と照らし合わせた時に理解がしやすいかも。」

「しーちゃんは小さい頃から天使のように可愛かったっすよ!」

「そういうのはいいから…」


「子どもの頃からね、普通の子が日中にやってることを夜にやってた感じだよ。
学校も野外での授業は免除してくれて、レポートで単位くれるから、不便だけど困ることはあんまり無かったかなぁ。」

「人付き合いとか困ったんじゃない?」

「そうだね、友達と遊びに行くことは殆ど無かった。でも緋美がいたから、寂しいと思ったこと無かったよ。」

「…それじゃあ、彼女とかも…?」

「えっ、いないいない!何こーくん、そんなこと聞きたかったの?僕も君と同じだって!言ったじゃない〜。」

「そうっすよ!しーちゃんにはずっと俺だけなんっすよ。童貞はもちろん、キスすらしたこともない、純真無垢なピュアピュアボーイなんすから!」


「…………あるよ。」


「はっ?」

「キスは…………。」

「えっ……?」

「く、唇と唇の……?」

「…………ん。」


「……えっ?」

「……えっ?」

「……えっ?」

正直に話さなくていいのに!
ショックで緋美が壊れたよ!!


「へ、へぇ〜、そうなんだ。相手、どんな人なんだろ〜?」

バレたら緋美に殺されそうだから、俺は必死で惚けてみせた。

「太陽みたいにキラキラした子だよ。緊張してギュッて目をつぶってたから、可愛くて、ついつい唇を奪っちゃった。あははっ!」


「…しーちゃん……その女…ここに呼んでよ…。」

「ああ〜それは出来ないよ。無理無理。」


そうだね、女じゃないし……。


「……嘘だろ…いつの間にかしーちゃんが、大人になってたなんて…グスッ、グスッ……。」

「大袈裟だな〜緋美は、キスくらいで。また目が腫れるよ〜。」


あの時顔を真っ赤にして照れて俯いていた癖に、キスくらいなんてよく言うよ。
でも本当にちょっと大人になったこと、弟に自慢したかったのかも知れないな。

自慢じゃなくて地雷になってるけど…。

「えーっと、苦手なものは、何かあるの?日光以外だと。」

俺は急いで話題を変えた。


「そうだなぁ、銀製品はアレルギーあって触れない。十字架を見ると気分が悪くなったりする。あと、ニンニクは近くにあるだけでヤダ。」

「…って、こんなこと言ったらまたこーくんに、吸血鬼みたいって思われちゃうかな!ははっ」


はい、思ってます。
条件揃い過ぎでしょ…
むしろ吸血鬼以外のなんなのよ?


「…まあ、古文書読んだらその辺りもハッキリするだろうし、頑張って読み解こう!」


そんな話をしているうちに、月城くんの家に到着した。