月城くんの偏食事情。

「先輩!!」

「やったんすか!?」

「えっ!やっ!?ちょっと!ないない!!」

「じゃあ、その絆創膏は??」

「あっ、血をあげたかってこと??
 それはその…一口だけ……」

「でも、儀式とかしてないから!俺はお前みたいになってないから!」

「カプッと噛んで、チューッと吸っただけだし!!」

「ああああああ!!その擬音ムカつく!!!」

「いやいや、ただの食事じゃん。」

「………本当にそれだけですか?」

「えっ」


手も繋いだし唇と唇でキスしたし抱き合って寝た。
…なんて言ったら緋美、息の根止まるだろうな。

あー…思い出したらまたドキドキして来た…!!


俺が顔を真っ赤にして黙ってしまったので、

「あああああ!!!ぜえったいいああああ!!!なんかあったああああああ!!!!!」

絶叫と共に慟哭し、緋美の目は更に腫れた。


「楽しく過ごしただけだよ。それより緋美、僕は帰ったら自分のルーツや、体質について調べよと思ってるんだ。日中にもっと、活動できるようになりたいから。」

「書斎に文献や古文書があるって言ってたよね?
どれだか教えてくれる?」


緋美はピタリと泣き止んで、
みるみる真っ青になっていく。

「……古書は解読が難しいよ、しーちゃんが読んで…わかるかなぁ…。あ、それに書斎は埃っぽいし、カビ臭いし、しーちゃん耐えられないんじゃないかなあ。」

「マスクしていくから大丈夫。解読難しかったらその場で緋美が教えてよ。」


ふっ…詰んだな……
俺は緋美を生温かい目で見つめた。


「こーくんも協力してくれるよね?」

緋美に仕返しできるチャンスだし、吸血一族の書斎なんて、めっちゃ楽しそう!

「もちろん!俺は静夢にとって世界一血の美味しい童貞男。吸血の作法や儀式についてもちゃんと知っておきたいし、喜んで協力するよ!」

「こーくん…!」

月城くんは胸元で両手をぎゅっと握り合わせ、頬を桜色に染め、潤んだ瞳で俺を見上げた。

一方の緋美は、顔面蒼白で、死んだ魚のような目をしていた。

「なんすかその伊達男みたいな言い方…ただの非モテ男子のくせに、俺はしーちゃんのために純潔守ってるんすからね!」

「告白されても断ってるし!!」

「あ、そう言えば俺もラブレター的なものもらった。返事する前に振られたけど(笑)」

「あははっ!僕と抱き合って寝てたの見られちゃったからね!」

「ちょっ…!静夢…!!」

「ッはあぁぁぁぁぁぁぁぁあああああ???!!!!!」

「一回捕食されたくらいで、もう第一食料気取りっすか?!?!」


第一食料?第一夫人的な??


「…いいっすよ…こうなったら…俺も……」

「書斎に行って、しーちゃんのこと調べます。」

「先輩も絶対に来てくださいね!!」


俺が来た方が都合悪いだろうに、なんか怖いな……


「わかった、じゃあ明日土曜日だから、夕方から行くよ。朝までかかってもいいように。」

「臨むところっす!!」

何この気合い。
果たし合いでもする気か??


──嫉妬に狂った緋美の捨て身の計画を
この時の俺はまだ知らなかった──