月城くんの偏食事情。

「血も飲めたし、少しは眠れるんじゃない?部屋に戻ろう。」

「はーい!こーくんと一緒に寝る!」

「一緒に?!」

「眠れるかな…」

「眠れなくても、寝たい。」

「僕、帰ったら自分のこと、ちゃんと調べてみようと思う。」

「子どもの頃から、周りの子達と同じようにできないことが多過ぎて、考えるのも面倒くさくなっちゃってたけど…困ったら緋美が助けてくれるし。」


助ける?欲望押しつけてるだけだが?


「もっと一緒に過ごせる方法見つけたい。」

「君と……」

「うわ!森の中、真っ暗だね。何も見えないや。こーくん、どこ〜?」

「ここだよ、すぐ後ろにいるよ。」

「うそ〜見えないよぉ。」

「危ないから、手繋いで!」


「えっ」

「うん…。」


俺はそっと月城くんの手を握った。
細くてヒンヤリとした指に、俺の体温が移っていく。
胸の高鳴る音まで伝わってしまいそうで、
余計に心臓がうるさく鳴った。

月城くんの家に向かう道も似たような森だし、
月城くんは夜目が効くことも知っている。

それでも俺たちは

森を抜け、月に照らされても

手を繋いだまま

歩いた。



宿舎に着く頃には、空が白んできていた。


「起床時間6時だから、あんまり時間ないけど、少しでも寝ないと。」

「うん!今なら眠れそう♪寝よう寝よう!」

月城くんは当たり前のように俺の布団に入って来た。

「ちょっと!寝れないって!」

「大丈夫大丈夫!」

「お腹いっぱいだから、すぐ寝れるよ!」

「そっちはそうかもだけど…。」

「抱き枕にしてくれていいから♪」

「お腹空いたら噛みついてくる抱き枕でしょ!やだよ!」

「ふふ!こーくん面白い!」

「じゃ、僕がこーくんを抱き枕にする♡」


月城くんは俺の胸元に顔を埋めるように、ギュッと抱きついてきた。


「…あれっ、こーくん、すっごくドキドキしてるね。」

「そ、そりゃ、心臓に耳くっつけてたら、音もよく聞こえるよ…。」

「なんかこの音、落ち着くなぁ…。」


スゥ……


月城くんはそのまますぐに寝てしまった。

月城くんの体温が心地よく、俺もいつの間にか寝落ちしていた。


アラームをかけていなかったので、俺たちは盛大に寝坊した。


起こしに来たクラスメイトに、一つの布団で抱き合って寝ているところを見られてしまい、
「将軍と嫁が一つになっていた!」とまた変な噂が広まった。

他のクラスにも広まったせいか、その後手紙をくれた吉田さんが話しかけてくることは無かった。

2日目の活動もなんとか黒マントで乗り切った月城くんは、帰りのバスでも終始爆睡だった。

学校に着きバスを降りると、

瞼をパンパンに腫らした男が駆け寄ってきた。


「しーちゃぁぁぁぁん!!!!!」


「えっ、緋美だよね??どーしたの!?その目…。」

「止めたかったのに…血吸われ過ぎて追いかけることもできなくて…心配で心配で…寂しくて…グスッ……!」

「泣き腫らしたんだね。大丈夫だよ、こーくんのおかげで僕は元気だよ!」


緋美が俺に、まさかという顔で目を向けた。


俺は咄嗟に首元の絆創膏を隠したけれど、その動き自体で血を飲ませたことがバレてしまった。


「ギィヤァアアアアア!!!!!」