月城くんの偏食事情。

驚いて目を開けると、

月城くんは真っ赤な顔で俯いていた。

月「あのっ!…ご、ごめん…!やっちゃった…!」

光「えっ…と…」

光「普通にキスした…よね?」

月「……そだね…。」

光「な…なにゆえ…?」

月「なんでだろうね……。」

光「儀式的なものは、無しでって…」

月「儀式ではないので…。」

月「ギュッて目つぶって、
  僕を待ってるこーくんの顔見てたら…」
月「吸い寄せられたっていうか……」

月「ごめぇん…」

光「ええ……」

光「儀式でも作法でもない?緋美にしたこともないの?」

月「ないない!というか…」

月「僕の、ファーストキス、です……。」

月城くんは消え入りそうな声でそう言った。

光「俺だって、初めてだよ!」

月「だろうね。」

光「なんだよ!ビックリして死ぬかと思ったし!」

光「なんなら今からでも死ねそうなくらい恥ずかしいな!!」

光「んあああああ!!」

月「こーくん、ごめん」

月「大切にとっておいたファーストキス、僕が奪っちゃって…。」

月「なんか僕、また変になってるね……。
  月に惑わされてるのかな……。」

光「大切にとっておいてない!」

光「相手がいなかっただけ!」

光「こんなこと、言わせるなよぉ……」


月城くんと…キスしたなんて……
首筋にされたことはあるけど、
あれとは意味が違いすぎるだろ……


あれっ、俺のピュアッピュアメーター、
どうなるの??

光「今ので、血が不味くなったんじゃない??」

月「えっ?」

光「ほら、俺、一つ上の男になっちゃったから…」

月「ぷっ、あははっ!」

月「大丈夫!その思考こそピュアッピュアの証だから!」


月「…でも、味見しなきゃわかんないね!」

月「今度こそ、カプッ、チューチューにするからね…」

月城くんは再び俺の顔を両手で包むと、
ゆっくりと首元に唇を寄せた。

息のかかる距離で動きが止まったので、
月城くんに目を向けると、
俺を見上げる月城くんと視線が重なった。

月「…舐めてもいい?」

うわっ!
おいっ!!!
言い方!!!!

月「血が止まらなくなると困るから…。」

光「あー!そういう仕組みだよね。うん、それは端折れないね。でも軽めでお願い!!」

動揺で声が裏返る。


月「ん…」

月城くんはとても優しく、首元を舐め始めた。
あーーーー耐えろ耐えろ…
これは血を止めるため……


月「…こーくん、いただきます…」

ついに月城くんが、俺の首元に歯を立てた。


……ッ!


痛いと思ったのは一瞬で、

血を吸われるたびに、心も体もふわっと軽くなっていくような、幸福感に包まれた。

ジュッ……

ジュッ………

月「はぁっ…こーくん…」

月「すごい、前より美味しくなってる…!」

月「あっ、こーくん…すごい…イイ…!はぁっ。…!すごい…!!」


俺は急いで月城くんを引き離した。


光「……ちょっ…と、無理…もう今日は、終了……」

月「あっ、そうだったね!一口って言ったのに、美味しすぎて結構飲んじゃったかも。大丈夫??」

光「大丈夫だけど、耳元でそれは…ヤバいって…」

月「エッ、僕なんか言ってた??夢中で覚えてないんだけど??」

光「うん…漏れてたよ、感謝とリスペクトが……」

光「俺の時は、出来るだけ無言で飲んでくれない?次からは…」

月「えっ!次まで考えてくれてるの??」

光「あ、えっと、毎日は無理だけど、」

光「たまになら……」

月「こーくん!嬉しい!!」


月城くんは俺に抱きつくと、
首元の傷にキスをして、
俺の差し出した絆創膏を、
丁寧に貼ってくれた。


月「こーくん、ごちそうさま…!」

月「今日は僕たち、初めてのことだらけだったね…。」

月「がんばって合宿来てよかった!」

月城くんの顔が、花が綻ぶようにぱっと明るくなった。

ああ…やっとこの笑顔が見られた…。