月城くんの偏食事情。

驚いて目を開けると、
月城くんは真っ赤な顔で俯いていた。


「あのっ!…ご、ごめん…!やっちゃった…!」

「えっ…と……普通にキス…した…よね?」

「……そだね…。」

「な…なにゆえ…?」

「なんでだろうね……。」

「儀式的なものは、無しでって……。」

「儀式ではないので…。」
「ギュッて目つぶって、 僕を待ってるこーくんの顔見てたら……吸い寄せられたっていうか……。」

「ごめぇん…。」


「ええ……。儀式でも作法でもない?緋美にしたこともないの?」


「ないない!というか……」

「僕の『ファーストキス』です……。」

月城くんは消え入りそうな声で呟いた。


「俺だって、初めてだよ!!」

「だろうね。」

「なんだよ!ビックリして死ぬかと思ったし! なんなら今からでも死ねそうなくらい恥ずかしいな!!!」

「 んあああああ!!!!!」

「こーくん、ほんとごめん!大切にとっておいたファーストキス、僕が奪っちゃって…。」

「なんか僕、また変になってるね……。月に惑わされてるのかな……。」

「大切にとっておいてない!相手がいなかっただけ!!」

「こんなこと、言わせるなよぉ……。」


月城くんと…キスしたなんて……!
首筋にされたことはあるけど、
あれとは意味が違いすぎるだろ……!!


「あれっ、俺のピュアッピュアメーター、どうなるの??今ので、血が不味くなったんじゃない??」

「えっ?」

「ほら、俺、一つ上の男になっちゃったから…。」

「ぷっ、あははっ!大丈夫!」

「その思考こそ、ピュアッピュアの証だから!」

「……でも、味見しなきゃわかんないね!」

「今度こそ、カプッ、チューチューするからね…。」


月城くんは再び俺の顔を両手で包むと、
ゆっくりと首元に唇を寄せた。

息のかかる距離で動きが止まったので、
月城くんに目を向けると、
俺を見上げる月城くんと視線が重なった。


「…舐めてもいい?」


うわっ!
おいっ!!!
言い方!!!!


「血が止まらなくなると困るから…。」


「あー!!もう!そういう仕組みだよね。うん、それは端折れないね。でも軽めでお願い!!」

動揺で裏返った声も気にせず、
月城くんは俺の首元を優しく舐めはじめた。

あ~~~~耐えろ耐えろ……。
これは血を止めるため……。


「…じゃあ、こーくん、いただきます…。」

月城くんも緊張しているのか、
ハァッ…と小さく呼吸を整えて、
ついに、俺の首元に歯を立てた。


……ッ!


痛いと思ったのは一瞬で、

血を吸われるたびに、心も体もふわっと軽くなっていくような、幸福感に包まれていく。


ジュッ……

ジュッ………


「ああ…!こーくん……。
すごい、前より美味しくなってる…!
あっ、こーくん…すごい…イイッ…!
はぁっ…!すごいよ…!!」


@@@@@@@

俺は慌てて月城くんを引き離した。


「…ちょっ…と、無理…。もう今日は、終了……。」

「あっ、そうだったね!一口って言ったのに、美味しすぎて結構飲んじゃったかも。大丈夫??」

「大丈夫だけど、耳元でそれは…ヤバいって……。」

「エッ、僕なんか言ってた??夢中で覚えてないんだけど??」

「うん…漏れてたよ、感謝とリスペクトが……。」

「俺の時は、出来るだけ無言で飲んでくれない?次からは…。」

「えっ!次まで考えてくれてるの??」

「あ、えっと、毎日は無理だけど、」

「たまになら……。」

「こーくん!嬉しい!!」


月城くんは俺に抱きつくと、
首元の傷にキスをして、
俺の差し出した絆創膏を、
丁寧に貼ってくれた。


「こーくん、ごちそうさま…!今日は僕たち、初めてのことだらけだったね…。」

「がんばって合宿来てよかった~!」


月城くんの顔が、花が綻ぶようにぱっと明るくなった。

ああ…やっとこの笑顔が見られたな……!