月城くんの偏食事情。

月城くんは一瞬目をまん丸にしたものの、すぐ訝しげに眉を寄せた。


「なんで?無理しなくていいんだよ?」

「あ、彼女できるかも知れないから?血が美味しく無くなる前に、飲ませてあげようってこと?」

「はぁ?!彼女なんて出来ないし…あ、彼女出来て血が不味くなったら嫌だなって思ったから、不機嫌だったの??」


「そんなこと…!」

「僕は……」


月城くんの大きな瞳の縁には、今にも零れ落ちそうな涙が揺れている。


「女の子に呼ばれて、君がいなくなったら…」

「ここが、痛くて……」


月城くんは俺の手を取り、自分の左胸にあてた。

手のひらから大きく脈打つ鼓動を感じる。


「血のことなんて、少しも思い浮かばなかった。」

「でもなんでこんなに苦しいのか、自分でもよくわからないんだ……。
こーくんが笑顔になると、いつもは僕も嬉しくなるのに、今日はなんだか悲しくて…。」

「ずっと悲しくて、こーくんは何も悪く無いのに、それがなぜだか、こーくんのせいみたいに感じて……。」

「拗ねちゃってたかも知れない。ごめんね。」


「静夢……。」

「俺こそ、ごめん。俺は静夢にとってただの食料なんじゃないかって、誤解してた。」

「俺自身のことも、見てくれてたんだね。」


「当然でしょ。僕はこーくんのこと、大好きなんだから!」

「ふっ、その好きは、信用できないけど。」

「えっ?」

「でも俺も、他の誰かの血を吸って欲しくないって思うくらい、静夢のこと、好きだよ。」


「こーくん…!」


「他の人のなんて吸わないよ。僕はずっと、こーくんの心の準備が出来るまで、何年でも待つつもりだったんだから。」

「僕が拗ねてたから、無理してない?」


俺は首を左右に振った。


「……静夢に吸われたい。」

「静夢に、俺の血で元気になってもらいたい。」


「こーくん…嬉しい……!」


「あっでも、儀式とか作法とか、俺はよくわかんないから!カプッ、チュウチュウ、みたいな感じだと助かるって言うか……」


「ふふっ!わかったよ。初めてだし、軽く、一口だけね。」

「あ、でも今アレ持ってないや」

「後からつけないと…」


「エッ!!ごめん、なんの話??」


「えーと、絆創膏。」

「あ、絆創膏か、ビックリした!俺待ってるよ。」

「さすが〜本当に、吸われる気満々で来てくれたんだね?」


「嬉しいよ……」

そう言うと月城くんは、俺の顔を両手で包んだ。


「こーくん、ありがとう。いただきます…!」


ああ、ついに……!

噛まれる時は、やっぱり怖いな……。

俺が恐怖でギュッ!と目をつぶって待っていると、


『チュッ!』


えっ!?


なんでキスした??


唇に………!