月城くんの偏食事情。

──翌朝


通学に慣れていないせいで、今日はずいぶん早く学校に着いてしまった。

まだ日も昇りきっていない。

さすがに、一番のりだろうな。

そう思いながら教室に入ると、
俺の隣の席には既に、机に突っ伏した生徒がいる。

このサラサラの銀髪は…

月城くん…?


「お、おはよう!登校早いんだね、俺、かなり早く着いちゃったんだけど、もっと早い人がいるなんて….。」

「………。」

「…月城くん…?」

えっ、もしかして俺、無視されてる?

興味ないのは仕方ないとして、無視はさすがに泣くよ?

そう思いながら、恐る恐る、机に伏せた顔を覗き込むと、

「……スー…… スー……。」

月城くんは気持ちよさそうに、小さな寝息を立てていた。

「……寝てたのか。よかった。」

「てかこんなに早く来て寝るくらいなら、
 家で寝ればいいのに。」

それにしても…

綺麗な寝顔だな……

サラサラの銀髪、白くて華奢な腕、ふさふさで長いまつ毛。
白い肌のせいだろうか、薄い唇が妙に紅く見えて、

なんか…ドキドキする……。


…えっ!いや!最後のは何だ!?

人の寝顔勝手に見つめて、ドキドキしてちゃダメだろ!!

今の無し無し無し…!!!

失礼な感想をかき消すように頭の上で両手を振っていると、


ガラッ!


「おはよ〜!」
「おはよう!」

二人きりだった教室に、ぽつぽつとクラスメイトが集まりはじめた。

「あ、日向野くん、おはよう!早いね!」

「お、おはよう…!まだ慣れなくて、早く着いちゃった。」

「でも、月城くんの方が早く来てて、ずっと寝てるんだけど…。」

「あはは!毎日そうなのよ、月城くんって。めちゃくちゃ早く来て、朝礼ギリギリまで爆睡なの。」

「そうなんだ、毎日…。」

「机の寝心地が良いんじゃない?知らないけど!」

本当に月城くんは朝礼まで寝ていて、
それなのに授業中もずっと眠そうで、
ぼんやりと窓を見ていることが多かった。


給食の時間になると、パックの牛乳を一気に飲み干し、休み時間になれば、やっぱり机に突っ伏して眠っている。

本当に、机の寝心地が良いのかな…

仲良くなれたらいいなと思っていたけれど、

話しかけるきっかけもないまま、


数日が過ぎていった。