月城くんの偏食事情。

緋「先輩、麦茶…」

緋「うわっ!何してんすか!!」

緋美は慌てて麦茶を置いて、俺と月城くんを引き離した。

月「緋美ぃ〜、違うよ、こーくんが血を飲ませてくれるって言うから、その前にお風呂で洗ってあげようとしてたんだよ〜」

緋「エッ!」

光「いやいや!!そんなつもり無いから!まだ無理だって!なんか月城くんが勘違いしちゃって…」

光「聞いて月城くん、俺は、学校で寝ちゃった月城くんを、緋美がおんぶしてたから、代わりに日傘をさして、送ってきただけなんだ。まだ血を吸われる心の準備は出来てないよ。」

俺がそう言うと月城くんは、やっと理解した様子で

月「ええ〜な〜んだぁ〜、残念…。」

と、不機嫌そうに眉を八の字にひそめた。


光「ところで緋美、食材を洗うのも、吸血の作法?」

緋「…そっすね…なんかの文献にそう書いてましたね…。」

緋美は消え入るような声でそう答えた。

こいつマジで…月城くんが天然なのをいいことに、
好き放題やってんな!!

俺が軽蔑の視線を緋美に向けていると、

緋「先輩、俺は特殊な体質でもないし、極々普通の一般ピーポーですけど、今、テレパシー受け取ってます…ごめんなさい……。」

緋「でもですよ!!俺も後悔してるんです!洗われるのってめちゃくちゃ大変っす!本っ当に!ヤバいんですって!毎回滝行くらい精神統一してんすよ?!」

わかる…わかるよ……
俺だって耐えられる自信ない……

緋「しかも、それを先輩と……うっ、ぐっ、スンッ…スンッ……」

泣くなよ…
お前は身から出たサビだろ…!


月「ええ…食材として洗われるのって、そんなに精神にくるの?大変なんだね…。」

月「緋美、いつもありがとう。そして、こーくん。本当に、激しくしないから。優しく撫でるように洗うからね。辛い時は言ってね!」


うん、激しくて優しくても、無理。
想像しただけでもう辛い。


月「ところで、」

月「緋美、こーくんと更に仲良くなってて、ずるい!」

緋「えっ?どこが??」

月「呼び捨てで呼んでるし、テレパシー使ってるし、こーくんに辛い儀式させたくないって泣いたり…。」

いやいや、
むしろ仲悪くてそうなってます。


月「こーくん、僕のことも、下の名前で呼んで?」

光「下の名前??」

月「うん、静夢……って、呼んで欲しいな。」

何でだろう…
軽蔑してる緋美のことは平気で呼び捨て出来るのに、
月城くんを「静夢」って呼ぶのは、


ドキドキするな………


光「し…、静夢……。」

照れながら俺がそう呼ぶと、

月「あっ、はーい、こーくん♡」

月城くんはふいに顔を逸らし、耳の前で俺に向けてハートを作ったが、隙間から僅かに見えたその頬は、暗がりでもピンク色に染まっているのがわかった。

呼んでって言ったのに、呼ばれて照れてる…!
可愛過ぎるって!!

俺のピュアッピュアメーターが上がれば上がるほど、血が美味しくなると思っているのかも知れないけれど、

心の準備メーターは下がっている。

自分で自分の首絞めてばっかりの兄弟だな……