月城くんの偏食事情。

苦痛と快楽の入り混じった声で兄の名前を叫び続ける緋美くんを、俺は直視することができなかった。

食材側が一番興奮してない?
気のせい?

俺こんな風に叫ばないといけないの?
それとも自然と叫んじゃうの?

どっちにしても、耐えられない……


「…あの!…もう、いいよ…。よくわかったから…。」

月城くんはハッとして俺を一瞥すると、
パッと首元から口を離し、

「ごちそうさま!緋美、いつもありがとう!」

そう言うと、緋美くんをギュッと抱きしめて、

チュッ
チュッ

首に軽く2回、キスをした。

「そっ……!!その締めはなんなの?!」

「締め?ごちそうさまの後は、感謝とリスペクトのハグ。」
「そして傷口にキスすると、早く血が止まるから…」

「…って、緋美くんが?」

「そうそう!緋美は僕のために色々調べてくれてて、造詣が深いんだ。」

緋美くんは片手で両目を覆い、顎を天井に向けて脱力していたが、口元にはうっすらと笑みを浮かべていた。

……余韻楽しんでない?

「で、こーくん!心の準備できた?僕たちの初めてはいつにする?僕も心の準備をしとくから、いつでも大丈夫だよ!」

月城くんはハンカチで口を拭きながらニコリと目を細め、俺に問いかけた。


「…あの……俺……もう少し…考えさせて……」

「ええ〜っ、なんで??」

「…その……」

「……怖くて………。」

「ハッ!やっぱり!しーちゃんの荘厳さに怖気付いたんだな!!

「ダサいっすね〜〜〜先輩!!」

「いや、怖いの月城くんじゃなくて…。」

「緋美くんみたいになること。」

「は?」

「凄かったじゃん、声も、反応も。」

「しーちゃん!しーちゃん!…って」

「あんな理性飛ばして喘いでる自分想像したら、めちゃくちゃ怖いよ……。」

「いちいち儀式も…欲望まみれだし……。」

「欲望?」

月城くんが不思議そうに反応すると、

「せーーーーんぱい、ちょっと黙りましょうか。」

「2人で話がしたいです。」

真っ赤になった緋美くんが、俺の腕を掴み、言葉を遮った。

「なになに??話って」

「あーっと、ほら、俺、この食事法について詳しいから、先輩に色々アドバイスしてあげたくて。」

「吸われる側の心構えっていうか?食事になることのメリットとか?」

「いつもならしーちゃん寝てる時間だし、お腹いっぱいで眠いでしょ?今日はここまでにして、先輩にもっと安心してもらえるように、俺が話しながら送ってくるよ!」

「……緋美ぃ…本当に優しい弟!」

「ありがとう、こーくんをよろしくね!」

「じゃね、こーくん!今日はありがとう!気をつけて帰ってね。また明日…ふわぁ…。」

本当に眠そうだな。
てかいつも寝てる時間なんだ。
まだ日も暮れてないのに…。

「じゃあ先輩、行きましょっか!」

緋美くんはそう言うと,俺の腕を掴んだまま、慌てた様子で屋敷の外へと連れ出した。


──バタン


「…………。」

「…………。」

気まずい空気の中、
緋美くんがポツリと話をし始めた。