17歳、未定。

放課後、俺とひかりは、いつものように一緒に帰った。
「結局、夢見つからなかったね」
ひかりが言った。

「うん」
「残念?」
「ちょっとだけ」
「私もだよ」
「ひかりも?」
「うん。ちょっとだけ」

二人で歩く。
しばらく、何も話さなかった。
でも、ひかりはふっと顔を上げた。

「まあ、いっか」
「だな」
「これから見つかるかもしれないし」
「そうだな」
「全然違うことやりたくなるかもしれないし」
「……それもありそうだな」
「十年後とか、全然違う人生になってるかもね」
「それ、ちょっと楽しみだな」

ひかりがこちらを見る。
俺もひかりを見る。
そのまま、二人で少しだけ笑った。
駅へ向かう道。
見慣れた景色。
いつもの帰り道。

何も特別なことは起きない。
それでも、俺の中では何かが変わっていた。
夢が見つかったわけじゃない。
将来のことが全部分かったわけでもない。
ただ、分からないことを怖がらなくなった。

俺は17歳だ。
まだ、17年しか生きていない。
これまで歩いてきた道よりも、これから歩く道の方がずっと長い。
それだったら。
今、全部決められなくても当然じゃないか。

迷って、悩んで、間違えて。
また考えて。
その繰り返しでいい。
俺は空を見上げた。
冬の空は、どこまでも続いているように見えた。

きっと俺の未来も同じだ。
どこへ行くのかは、まだ分からない。
何になるのかも、分からない。
それでも、俺は歩いていく。
いつか何かを見つけるかもしれない。
見つからないかもしれない。
途中で違うと思うかもしれない。

それでもいい。
だって俺は、まだ17歳だから。
夢がないことを、恥ずかしいと思わなくなった。
何者でもないことを、怖いと思わなくなった。
未来が決まっていないことを、少しだけ楽しみに思えるようになった。
俺はまだ17歳。

だから──
これから、たくさん考えて、たくさん間違えることにした。
そう思ったら、不思議と足取りが軽くなった。
俺たちの前には、まだ何も決まっていない。

だからこそ、これから何にだってなれる。
そう思いながら、俺はひかりと並んで歩いていった。
まだ名前のない未来へ。
〈完〉