俺を落とす計画、完璧すぎるだろ!~完璧な優等生の『恋愛心理ハック』に抗えそうにない~

とうとう恋人同士になってしまった俺たち。

深山の絶妙に際どいボディタッチに散々悪戦苦闘しながら、なんとか部屋へ戻ってくると、そこに浩也の姿はなかった。

部屋のシャワーを浴び、寝支度を済ませるものの、浩也が一向に戻ってくる気配はない。

早くあいつが帰ってきてくれないと、ベッドを目の前にして、この深山と二人きりのシチュエーションに耐えられる気がしなかった。

「浩也の奴、遅いな……」

俺はベッドの上で荷物の整理をしながら、早く戻れと心の中で必死に祈る。

風呂から上がってきた深山が、濡れた髪をタオルで拭いながらゆっくりと近づいてきた。

そしておもむろに背後からそっと抱き寄せられ、俺の心臓は跳ね上がる。

──その時だった。

ピーンポーン……。

部屋にチャイムの音が響いた。

誰だ……? 浩也ならルームキーで勝手に入ってくるはずだが。

首をかしげながらドアへ向かおうとした瞬間、深山の腕に強く拘束された。

再び鳴るチャイム。

続いて、ドアを叩く音。

扉の向こうから、微かに「開けてくれー」という浩也の声が聞こえた気がした。

まさか……あいつ、カードキーを忘れたのか!?

見れば、机の上にポツンと持ち主不明のカードキーが残されていた。

「深山、開けてやらないと……っ」

「……浩也なら大丈夫だよ。他の奴の部屋にでも泊まればいい」

「いや、さすがにそんなわけには──」

行こうとする俺の腰を、深山の腕がさらに強くホールドして引き戻す。

「侑人。浩也を入れて、本当にいいの? 俺はもう、遠慮しないよ?」

「……は!? な、なななに言ってんだ、お前は……ッ!?」

「浩也にはもう俺たちの関係がバレてるんだ。今更隠す必要なんてないだろ?」

深山はそう言って拘束を強め、不敵に口元を吊り上げた。

まさか……浩也がいようがいまいが、問答無用で俺とイチャつく気満々なのか!?

浩也というファイアウォールが、完全に無効化されている……!

「あいつなら大丈夫。どこでも寝られる奴だし、誰かの部屋に転がり込むよ」

「……そ、そうかもしれない、けど……」

俺が逡巡している間に、ドアの向こうの音がピタリと止んだ。

どうやら浩也は諦めたらしい。

「気を利かせてくれたみたいだね」

事実上あいつを排除しておいて、勝手に都合のいい解釈をのたまう深山の強かさにあきれ、俺は諦めのため息をついた。

……って、諦めている場合じゃない!

完全に二人きりの夜が確定してしまったのだ。

この状況で、深山が何もしてこないはずがない。

前のように俺を焦らす必要もなくなった以上、こいつが躊躇する理由など1ビットも存在しないのだから。

背後から密着してくる体温が、次第に熱を帯びて俺に絡みつき、荒い吐息が首筋をくすぐる。

「ち、ちょっと待て! ルールを決めよう!」

咄嗟に出た提案に、深山の動きがピタリと止まった。

「ルール? どんな? 前みたいに『指一本触れるな』とか、そういうやつ?」

「あ、いや……指一本くらいなら、まあ……いいけどさ……」

かつて深山の家で散々焦らされ、脳に叩き込まれた「飢餓感の恐怖」のせいで、俺はつい初期防御を弱めてしまった。

すると深山は、意地悪な笑みを浮かべて耳元で囁く。

「指一本でいいの? 余計に辛くなると思うけど」

わざと身体を離し、指先たった一本で俺の背中をすっと撫で上げてくる。

触れられたところから甘いシビれが電撃のように全身へ駆け巡り、俺は「くぅ……っ」と情けない声を漏らした。

あまりにも酷いお預け攻撃に身体が跳ね、理性が音を立てて崩壊していくのを止められない。

指一本でも、二本でも、三本でも足りない……!

こんな風に焦らされたら、降参するしかないじゃないか!

「……あー、もう、ずるいだろッ!」

涙目になりながら深山を睨みつける。

「それで、どうするの?」と言わんばかりの余裕の視線を向けられるのが悔しくてたまらない。

ぐるぐると迷った挙句、やっと絞り出せた言葉はあまりにも稚拙で、単純なものだった。

「……ちょっと、だけだからな」

「……『ちょっと』、ね。わかったよ」

そう答えた深山の顔には、これまでの冷徹な仮面など微塵もなく、俺への愛しさに満ち溢れた蕩けるような甘い笑みが浮かんでいた。

その破壊力抜群の笑顔に射抜かれ、俺は反論の言葉すら失ったまま、がっしりと抱きすくめられてベッドへと押し倒された。

そして、俺の思う「ちょっと」と、深山の思う「ちょっと」のキャパシティが絶望的に違うことに恐怖しながら、俺たちの甘く熱い夜が過ぎていく。

この先、俺が深山に完全勝利する日は訪れるのだろうか──。

俺の肌を灼く深山の唇の感触に狂わされながら、底知れない男の絶対的な執着に、俺はただただ甘い戦慄を覚えるのだった。

【フェーズ20:排他的二人きり空間の完全攻略と永久ループの確立】
・外部ノイズ(浩也)の完全排除に成功。
・ターゲット(侑人)の防御システム(ルール設定)を解体し、完全降伏および「ちょっと」の独占権を獲得。
・……もう二度と、この腕の中から解放してあげないからね、侑人。