関西最大のテーマパークに到着した俺たちは、入場ゲートを通過して間もなく、他の班の生徒たちに深山を連れ去られるハメになった。
あっという間に深山の周囲には写真をせがむ生徒の群れが形成されている。
男子も女子も、ここぞとばかりにスペックフル解放状態の深山を囲み、シャッターを切りまくっていた。
俺も、あいつと一緒に写真が撮りたい……。
「俺も、あいつと一緒に撮りてぇな」
俺の心の声に重なるように、浩也が隣でぽつりと呟く。
浩也と深山のツーショット──想像しただけで、胸の奥からドス黒い嫉妬心が湧き上がった。
「なあ侑人、俺のスマホで深山とのツーショットを──」
「断る」
喰い気味に即答していた。
深山だって、そんな負の遺産(黒歴史)をデータとして残したいはずがない。
唇を尖らせる浩也の目は、完全に獲物を狙う捕食者のそれだった。
深山を、この飢えた獣から何としても守らなければならない。
浩也の「告白宣言」が、ただの言葉だけで終わるわけがないのだ。
以前、科学室で迫られた時のトラウマが脳裏をよぎる。
あの時、俺は付き合う云々の前に強行採決(キス)されかけたのだ。
そんな前科持ちの行動力を考えれば、一秒足りとも油断は許されない。
深山を絶対に浩也と二人きりにさせない。
それが、俺の告白以前に課せられた最低限の防衛ノルマだった。
俺が人知れず胸の中で闘志を燃やしていると、いつの間にか人集りを割って、深山が俺の目の前に滑り込んできた。
「侑人、一緒に撮ろう」
「……あ、……え?」
あまりに唐突かつダイレクトなアクセスに俺が狼狽えている隙に、深山は迷いない手つきで自分のスマホを浩也の手元へ押し付けた。
そして俺の手首を掴むと、強引かつスマートに浩也からの物理距離を広げてみせる。
その有無を言わせぬ早業と圧巻の密室構築ムーブに、浩也は思考を追いつかせる暇もなく「あぁ……」と流されるままカメラを構えた。
どさくさに紛れてピタリと俺の身体に密着し、顔を寄せてくる深山。
予期せぬ至近距離の熱量に完全にフリーズした俺は、ポーズを取ることも忘れて棒立ちになったまま、無情にもシャッターが切られた。
「ありがとう。いい写真が撮れたよ」
深山は満足げに息を吐くと、浩也に向けて冷酷なまでに美しい笑顔を浮かべた。
……完全にマウントを取っている。
深山は浩也に対し、「侑人は俺のものだ」と誇示するように強烈な独占欲の炎を燃やしているのだ。
だが──そんな不敵な挑発を向けられたはずの浩也の様子が、明らかに異常だった。
なぜか嬉しそうに、鼻の下を伸ばして口元を緩めているのだ。
まさか……。
俺はその気持ち悪い笑みの真意を察し、猛烈な眩暈を覚えた。
浩也のポンコツ受信感度を通すと、深山のあの冷血な威圧の視線すら「自分への熱烈なアピール」へと歪曲変換されるのだ!
「可愛いやつだな……俺とのツーショットが恥ずかしすぎて、咄嗟に侑人をダミーに使ったのか」
こっそりそんな壊滅的なピンク色の誤解を呟いている浩也を、今すぐ宇宙の果てまで蹴り飛ばしてやりたかった。
マジで、こいつはどうしようもない無敵の勘違い野郎だ……。
もはや俺がどれだけ論理的に訂正しようと、こいつのバグりきった脳内変換機能を修復することは不可能である。
深山本人から「お前じゃねぇよ、失せろ」と氷点下の言葉で叩き潰されない限り、こいつの脳内では無限にピンク色のパラレルワールドが生成され続けるのだろう。
ポンコツ勘違い野郎と、俺への嫉妬で狂っている深山。
この二人と一緒に、今夜からホテルで2泊も同じ部屋で過ごさなければならないのだ。
想像しただけで、強烈な頭痛とともに意識が遠のきそうになる。
こんなカオスすぎる環境で、俺に深山へ告白するチャンスなど巡ってくるのだろうか……。
もはや不安と恐怖しか残されていなかった。
【フェーズ16:競合オブジェクト(浩也)の撮影者(権限剥奪)化と独占データの記録(完了)】
・ターゲット(侑人)の撮影欲求をスキャン。サードパーティ(有象無象)を離脱し、ダイレクト・エンカウントを実行。
・障害オブジェクト(浩也)に撮影権限(カメラ)を強制付与することで、フレーム外へと排除完了。
・密着状態でのツーショットデータ獲得に成功。……ターゲットの動揺(棒立ち)を確認。これより宿泊領域における「排他的二人きり空間」の獲得フェーズへ移行する。
あっという間に深山の周囲には写真をせがむ生徒の群れが形成されている。
男子も女子も、ここぞとばかりにスペックフル解放状態の深山を囲み、シャッターを切りまくっていた。
俺も、あいつと一緒に写真が撮りたい……。
「俺も、あいつと一緒に撮りてぇな」
俺の心の声に重なるように、浩也が隣でぽつりと呟く。
浩也と深山のツーショット──想像しただけで、胸の奥からドス黒い嫉妬心が湧き上がった。
「なあ侑人、俺のスマホで深山とのツーショットを──」
「断る」
喰い気味に即答していた。
深山だって、そんな負の遺産(黒歴史)をデータとして残したいはずがない。
唇を尖らせる浩也の目は、完全に獲物を狙う捕食者のそれだった。
深山を、この飢えた獣から何としても守らなければならない。
浩也の「告白宣言」が、ただの言葉だけで終わるわけがないのだ。
以前、科学室で迫られた時のトラウマが脳裏をよぎる。
あの時、俺は付き合う云々の前に強行採決(キス)されかけたのだ。
そんな前科持ちの行動力を考えれば、一秒足りとも油断は許されない。
深山を絶対に浩也と二人きりにさせない。
それが、俺の告白以前に課せられた最低限の防衛ノルマだった。
俺が人知れず胸の中で闘志を燃やしていると、いつの間にか人集りを割って、深山が俺の目の前に滑り込んできた。
「侑人、一緒に撮ろう」
「……あ、……え?」
あまりに唐突かつダイレクトなアクセスに俺が狼狽えている隙に、深山は迷いない手つきで自分のスマホを浩也の手元へ押し付けた。
そして俺の手首を掴むと、強引かつスマートに浩也からの物理距離を広げてみせる。
その有無を言わせぬ早業と圧巻の密室構築ムーブに、浩也は思考を追いつかせる暇もなく「あぁ……」と流されるままカメラを構えた。
どさくさに紛れてピタリと俺の身体に密着し、顔を寄せてくる深山。
予期せぬ至近距離の熱量に完全にフリーズした俺は、ポーズを取ることも忘れて棒立ちになったまま、無情にもシャッターが切られた。
「ありがとう。いい写真が撮れたよ」
深山は満足げに息を吐くと、浩也に向けて冷酷なまでに美しい笑顔を浮かべた。
……完全にマウントを取っている。
深山は浩也に対し、「侑人は俺のものだ」と誇示するように強烈な独占欲の炎を燃やしているのだ。
だが──そんな不敵な挑発を向けられたはずの浩也の様子が、明らかに異常だった。
なぜか嬉しそうに、鼻の下を伸ばして口元を緩めているのだ。
まさか……。
俺はその気持ち悪い笑みの真意を察し、猛烈な眩暈を覚えた。
浩也のポンコツ受信感度を通すと、深山のあの冷血な威圧の視線すら「自分への熱烈なアピール」へと歪曲変換されるのだ!
「可愛いやつだな……俺とのツーショットが恥ずかしすぎて、咄嗟に侑人をダミーに使ったのか」
こっそりそんな壊滅的なピンク色の誤解を呟いている浩也を、今すぐ宇宙の果てまで蹴り飛ばしてやりたかった。
マジで、こいつはどうしようもない無敵の勘違い野郎だ……。
もはや俺がどれだけ論理的に訂正しようと、こいつのバグりきった脳内変換機能を修復することは不可能である。
深山本人から「お前じゃねぇよ、失せろ」と氷点下の言葉で叩き潰されない限り、こいつの脳内では無限にピンク色のパラレルワールドが生成され続けるのだろう。
ポンコツ勘違い野郎と、俺への嫉妬で狂っている深山。
この二人と一緒に、今夜からホテルで2泊も同じ部屋で過ごさなければならないのだ。
想像しただけで、強烈な頭痛とともに意識が遠のきそうになる。
こんなカオスすぎる環境で、俺に深山へ告白するチャンスなど巡ってくるのだろうか……。
もはや不安と恐怖しか残されていなかった。
【フェーズ16:競合オブジェクト(浩也)の撮影者(権限剥奪)化と独占データの記録(完了)】
・ターゲット(侑人)の撮影欲求をスキャン。サードパーティ(有象無象)を離脱し、ダイレクト・エンカウントを実行。
・障害オブジェクト(浩也)に撮影権限(カメラ)を強制付与することで、フレーム外へと排除完了。
・密着状態でのツーショットデータ獲得に成功。……ターゲットの動揺(棒立ち)を確認。これより宿泊領域における「排他的二人きり空間」の獲得フェーズへ移行する。
