顔面国宝と噂されてるイケメンが、普段はサカバンバスピスみたいな顔してた件


「――は?」


再び僕の顔が引きつった。

あの間抜けた顔が、なんで一瞬でこんなイケメンになるんだよ……!?

全力でツッコミを入れたいけれど、真っ白になった頭と固まった体のせいでそれすらもできない。


「ごめん、こんなの急に見せられても困るよね」


男子生徒は困ったようにへらりと笑う。

彼の穏やかな声を聞いたことで、ようやくハッとしたように僕の思考が戻り始めた。

咄嗟に思い浮かんだ言葉を口にする。


「あ……いえ、その……マジックとか、ですか?」


「いや、これはそういうのでもなくて……俺はこういう“体質”なんだ」


「体質?」


「うん。俺さ――」


彼がそう言いかけたとき、辺りに強い風が吹き抜けていった。

それと同時に「くしゅんっ!!」と大きなクシャミが聞こえて、僕は目をパチパチと瞬かせた。


「ご、ごめんね!驚かせちゃって……」


いや、その顔の変化よりだいぶマシでしたけど。

そう思いつつ、彼の震える体に視線を向ける。

4月といえど、まだ暖かい気温とはいえない。

そんな中、ずっと水着姿で上半身裸なんだ。

今しがた水もかぶったし、そりゃ寒いだろうな。

僕は肩にかけていたスクールバッグから未使用のタオルを取り出す。

それを彼の頭にふわりと乗せて水気を拭いてあげる。

突然の雨に降られたとき用のタオルが、こんな形で役に立つとは思わなかった。

やっぱり、日頃から災難に備えておいて損はないな。


「えっ?……えっと――」


顔面国宝が驚いたように身じろぐ。

ただでさえ身長差があるのに、やりづらいな。

僕は彼の髪の毛をタオルで優しく拭きながら、こてんと首を傾げてその顔を見上げた。


「あの、拭きづらいんで少ししゃがんでもらえますか?ちゃんと拭かないと風邪ひいちゃいますから」


「あ……は、はい……」


背中を丸め、拭きやすくなった頭の水気を丁寧に拭き取っていく。

そのまま流れるように自然な手つきで、顔の水気も拭い去って……気づいた。


「あれ……?パーツが古代魚に戻ってる……?」


「…………」


気まずそうに顔を逸らす元・顔面国宝。

僕はしばし熟考したあと、一つの仮説に辿り着いた。


「もしかして……顔が水に濡れてる間だけイケメンになって、逆に水気がなくなると古代魚――いや、この顔になっちゃうんですか?」


僕の推理が当たっていたのか、彼はしゅんと肩を落とした。

僕は人差し指を自分の口元に添える。

彼の発言に、少しだけ気になるものがあった。