顔面国宝と噂されてるイケメンが、普段はサカバンバスピスみたいな顔してた件


その後は初めての授業を受け、打ち解けてきたクラスメイト数人と昼食を取って時を過ごす。


「なぁ、恵流はどこの部活に入るか決めた?」


僕の隣の席で真っ先に仲良くなった佐藤が、唐揚げを頬張りながら問いかけた。


「入るかはともかく、水泳部に顔を出そうかなって考えてるよ」


「へぇ、水泳に興味あるの?それとも知り合いがいるとか?」


「知り合いっていうか……気になる人がいて」


「あ、もしかしてあのイケメン?インパクトあったよなぁ~、うちのクラスの女子たちもほぼ全員が見に行くらしいぜ」


まあ、そうだろうね。

そう思いながらも口では「へえ、そうなんだ?」と驚いたふりをする。

語尾に「?」マークをつけて疑問文で終わるのがポイントだ。

こうすることで相手は、僕より情報を持っているという事実に優越感を感じて会話を続けてくれやすい。

容姿が良いほど、その見た目だけで性格も勝手に決めつけられるものだ。

“嫌なやつ”と思われてしまわないように、会話まで気を遣う。

それは僕が長年気をつけていることでもあった。

狙い通り佐藤たちの話題は水泳部のパフォーマンスへと移る。

入学前から噂に聞いていたイケメン。

その性格の予想。

恋人の有無。

まあ、有力かはともかく……ある程度の情報収集が終わると同時にお昼の終わりを告げるチャイムが鳴り響いた。

それから最後の授業を受けて、放課後。

向かったプールサイドには、バーゲンセールさながらの人混みがあった。

きゃあきゃあと黄色い声があちこちから聞こえ、耳がキンキンする。


“うちのクラスの女子たちもほぼ全員が見に行くらしいぜ”……。


佐藤の言葉が脳裏によぎる。

ならば恐らくここにいるのは一年生の女子生徒たちだろう。

みんな面食い過ぎやしないか。


「困ったな……これじゃ水泳部に近づけない」


女子だらけのあの空間だ。

無理矢理に入り込んで、万が一にも彼女たちの体に触れてしまったりしたら……想像しただけでゾッとする。

そんなのスマートではない。

それに押しのけた拍子にケガをさせてしまう恐れもあって、僕は遠くから水泳部を眺めるだけだった。

ちらりと女子たちの並んだ頭の隙間から、あの部長らしき男子生徒が見えた。

あの“優彗”と呼ばれていた顔面国宝イケメンも、そこにいるんだろうか。


「……裏口とかから近づけないかな?」


僕は一旦プールサイドから離れ、近くの校舎裏から直接彼らの部室を目指した。

あともう少しで部室の裏に着く……その途中で、ふと足を止める。

運動部などが使うのだろう手洗い場に、一人の男子生徒がうずくまっていた。

面倒事かと思いその場を離れようとしたが、その生徒もあの水着を着用していて水泳部だということが分かった。

これは、うまくいけばあの顔面国宝の情報を掴むチャンスかもしれない……!

僕は彼に近づき、心配を装って声をかけた。


「あの、大丈夫ですか?気分が悪いなら保健室までご一緒しますよ?」


声をかけられ、ビクッと跳ねる背中。

顔を上げた男子生徒と、僕の目が合った。


「……は……?」


瞬間――僕の顔が引きつる。