顔面国宝と噂されてるイケメンが、普段はサカバンバスピスみたいな顔してた件

翌日。

昨日に引き続き、体育館。

新しい部員を増やそうと意気込む上級生たちの、静かな熱気に包まれたその場で代表生徒たちによる部活紹介が行われていた。

各々が部活に興味を持ってもらうための思考を凝らした紹介をする中で、遂に待ちかねていた水泳部の出番。

現れた二人組は上半身裸で、下には学校指定の水着を履いている。

片手に霧吹きを持った部長らしき男子生徒に手を引っ張られ、うつむき加減に壇上に上がった一人の男子生徒。

彼の登場に、場にいた一年生全員が息をのむのが分かった。


「――っ!」


トクンと大きく胸の奥が高鳴り、僕の瞳が輝く。

健康的に鍛えられた体。

長時間水にさらされているだろうに、痛みなんて感じさせないサラサラと流れるツヤツヤとした黒髪。

180センチはゆうに越えているであろう高身長。

明らかに他の生徒とは一線を画している、恵まれた容姿に……コイツが“顔面国宝のイケメン”だと直感した。


「ほら、優彗(ゆうせい)!ここまで来たんだから観念しろって」


中々顔を上げない顔面国宝に痺れを切らしたのか、男子生徒が背中をパチンと叩いた。

それに意を決したように……もしくは諦めたかのように、その顔が上げられた――その瞬間。

すかさず男子生徒が持っていた霧吹きで、彼の顔面を濡らした。

水滴で濡れた顔から、雫が流れて首筋から鎖骨へと彼の肌を伝っていく。

目の前には、彫刻のような……美しい顔つきの男が立っていた。

その姿は、まさしく顔面国宝。

彼の整いすぎている顔から一時も目が離せない自分が悔しくて、強く拳を握る。

一年生たちがざわつく中、男子生徒が顔面国宝の肩をポンポンと叩きながらニカッと笑った。


「水も滴るいい男!ってことで、放課後このイケメンと過ごしたいやつはプールサイドまで!可愛いマネージャー候補のお越しを待ってまーす!」


大きく手を振る男子生徒の隣、ぺこりとお辞儀をした顔面国宝が壇上から下りていく。

その背中が垂れ幕の向こう側に消えていくまで、目を逸らすことすらできなかった。

それほどまでに、僕は彼に見とれていた。

昔の面影を僅かに残したやつは、成長して更に美しく目をひく容姿になっていて……キュッと結んだ唇を噛み締める。

いや――落ち着け、恵流。

僕の方こそ、美しい。

今日のために……いや、やつと会って負かすために、幼いころから自分を磨いてきたんだ。

ならば今度はあの顔面国宝に、僕の魅力を見せつける番だろう。

放課後のプールサイド。

やつを見てますます火がついた僕の頭に、他の部活紹介はもう入ってこなかった。