「頑張れー!」
「応援してるよ~!」
「おにいちゃんたち、がんばってー!」
自由遊泳エリアのプールから聞こえるのどかな声援を浴びて、僕たちは順番を待つ。
今回の市民プール水泳大会にエントリーしているのは近隣から4校、そして特別枠の僕たち涼蘭高校で合計5校だ。
特別枠は“話題性”を重視された、いわゆる賑やかし枠のため実力はさほど期待されていない。
だから参加資格は二人までだったけど、直に招集された他の高校の水泳部は違う。
一つの高校につき4人まで認められた精鋭たちが揃い踏みで、その人数は僕と先輩も含めて合計すると18人となる。
市民プールの25メートルプールは8レーンまでなので、大会が始まるなり抽選が始まった。
ズラリと並ぶ僕たちの前に、数人の運営委員のスタッフさんが現れ、一人が青い箱を持って中央に立つ。
「この箱の中に、番号の書かれたボールが16個あります!1番から8番が先行で競うAチーム、9番から16番が後攻で競うBチームです」
「競技は3回行われ……まずAチームの対決、次にBチームが対決して、それぞれ上位の2名が決勝でシード権を持った2名と決勝を泳いでいただきます」
「距離は50メートル!シード権も、公平にこの場で選ばせていただきます!数字が書かれていない白いボールを掴んだ方がシードとなります!」
箱を持ったスタッフさんがランダムに選手一人ずつに声をかけてボールを取らせていく。
これも平等に、ということだろう。
6番目にボールを取った僕は8番でAチームだった。
12番目にボールを取った先輩は9番で……Bチーム。
残念ながらお互いシード権とはならなかったけど、周りの実力を確かめるという意味ではこちらの方がいいのかも知れない。
最後に残った18人目、残り物のボールを掴んだのは兄さんだった。
普通に考えれば残り物だなんて幸先が悪いと思うだろうけど……さすがと言うべきか、やはり僕の兄さんは――“持っている”。
「おっと、シード枠か……運がいいのか悪いのかってところだなぁ」
たった二枠しかないシード枠を運で引き寄せた兄さんは、戦わずして決勝戦を待つこととなった。
「それではAチームの選手の皆さん。ご自分の番号が書いてある箱の中にロッカーのカギを預けて、同じく番号順にレーンに並んでくださいね」
『はい』
さぁ、僕の出番だ。
手首に付けていたカギ付きのゴムを外して8番の箱に収める。
他の選手と同じようにレーンに移動をしていると、プールサイドの奥にある壁で見守る先輩と目が合った。
まだ水気を含んだ顔面国宝たる整った顔が、破壊的な眩しい笑顔で力強く頷く。
その顔の良さに軽く目が眩みながらも、僕はニコッと笑って歩みを進めた。
8番レーンに立つ。
これから公式の大会を経験してきた水泳部の猛者たちと競うというのに、緊張は不思議としていなかった。
マイクを通したスタッフさんの声が辺りに反響する。
『位置について……よーい……!』
――ピィーーーッ!!
笛の音が響き渡り、僕は水面に飛び込んだ。
静かだ。
水中では何も聞こえない。
潜った勢いで数メートル進み、息をするため顔を上げたとき、ようやく声が重なって聞こえた。
『頑張れ!恵流(くん)!!』
間違いない、兄さんと――優彗先輩の声。
それに後押しされるように、僕は泳ぐ。
選手がザブザブと水をかき分ける音と声援だけが響く中、兄さんと先輩の声だけがやけに大きく僕の鼓膜を叩いていた。
25メートルのプール壁を蹴って折り返し、そしてゴールのプール壁に手をつく。
順位は――?
荒い呼吸のまま隣のレーンを見た。



