顔面国宝と噂されてるイケメンが、普段はサカバンバスピスみたいな顔してた件


新しい学校、新しい教室。

まだ慣れない匂いと空気感の中……生徒たちの視線はただ一人、僕だけに向けられていた。


「あの子カッコいい!」


「やべー、可愛すぎて女かと思った……」



それを鬱陶(うっとう)しく思ったことは人生で一度もない。

注目を集めるということは、すなわち僕という人間に感心をもたれているということだ。

よく分かる。

誰でも皆……美しいものや可愛いもの、カッコいいものにはみとれてしまうものだから。

どうやらこの学校でも、僕の魅力は充分に伝わっているらしい。

広い体育館で行われる入学式。

つつがなく進む段取り通りの内容の中、そろそろ自分の出番がくるぞと背を伸ばした。


「続きまして、新入生代表……宝条 恵流くんの代表宣誓です」


名前を呼ばれて「はい」とイスから立ち上がり、用意していた宣誓の言葉を述べる。

カンニングペーパーなどは必要ない。

頭に叩き込んだ言葉を、堂々とした態度で口にするだけだ。

ふと、高い壇上の上から離れた位置にある家族席が見える。

その中に自分の両親と、今朝会ったばかりの兄の顔が見えて僅かに口角が上がるのを感じた。

緊急の用事で来られないかもと話していたのに、こうして入学式に出席してくれるのだから……本当に僕は愛されている。

それなら――なおさら無様な姿は見せられない。

僕は小さく息を吸い込んで、凛とした口調で挨拶を始めた。



***



式が終わり、教室に戻るなりホームルームが開かれる。

先生とクラスメイトの簡単な自己紹介から始まり、教科書などの支給、そして明日の日程が語られた。


「明日から優しい先輩たちによる部活勧誘が始まります!一階職員室の横にある掲示板で、どんな部活があるか事前にポスターを確認しておいてね」


それでは、楽しい1年にしましょうね。

そう言って笑う先生に生徒たちの拍手が降り注ぐ。

優しそうな女性教師に、悪くないクラスの雰囲気。

この調子なら学校生活は問題なく快適に過ごせそうだ。

あとは……噂の“顔面国宝”にうまく近づけるかどうかだけど。

確か……水泳部なんだっけ?

入部するつもりはないけれど、先生の言葉通りにポスターだけは確認しておこうかな。

入学式が終わり、ぞろぞろと教室を出て行くクラスメイトたちに紛れて一階へと続く階段を下りていく。

半分くらいの生徒がそのまま靴箱に向かう中、僕はまばらな生徒たちの間をすり抜けて掲示板へと足を進めた。


「えーと……水泳部の勧誘ポスターは……」