なんだこの人たち……。
まさか僕のことを女性だと思ってるのか?
まぁこの美貌だから、間違えられることも少なくないけれどね。
また自分の美しさが証明されたという紛れもない事実に僕はふっと笑う。
そしてなるべく男だと分かるような低い声色で、彼らに勘違いだと伝えるためにと口を開いた。
「すみません……僕、男なんですよ。なので一緒にはいけません」
しかし、それを聞いても男たちは食い下がらない。
「え~嘘!こんな可愛いのに?ほら、すぐそこに海の見えるカフェがあるから行こうよ!」
「そうそう!オレらが奢るからさー」
「えっと……」
信じたくないのか、ナンパを成功させたいのか分からないけれど……こういうのって迷惑だ。
僕の魅力が心を惑わしたことは非を認めよう。
しかしこちらはハッキリと断っているんだから、しつこく誘うのは男としてどうかと思う。
「いーじゃん!ちょっとくらい……ほら!」
不意に肩に手を置かれてブワッと鳥肌が立つ。
ろくにネイルケアもしていないカサついた手で、僕の許可なく触らないでもらいたい。
それに……これが本当に女性だったら怖くて声も出せずに連れて行かれることだってあるだろう。
そういう意味で、声をかけられたのが僕で良かった。
パチンッと無作法な男の手を払いのけ、キッと二人の男たちを睨む。
「知り合いでもない人が、いきなり他人の体に馴れ馴れしく触れるなんて……スマートじゃないですね」
「痛っ……なにすんだよ!」
「こっちのセリフです。……まぁ口説き文句もお粗末で強引にことを進めるしか脳がないあなた方にこんなこと言っても、無意味でしょうけどね?」
「っ!この野郎――!」
男の一人が腕を振り上げた。
言い返せなくて殴ろうだなんて、短気な人だ。
かわして無防備な足元を払いのけるのがいいかな。
余裕しゃくしゃくの僕がニヤリと笑う。
そして男の腕が僕に振り落とされる――その瞬間。
僕の後ろから声が響いた。
「この子になにかご用ですか?」
優彗先輩の声だ。
それが合図かのようにピタリと男たちの動きが止まる。
その顔はまさに顔面蒼白。
まるで化け物でもみたかのような――まさか。
僕は慌てて振り返る。
背後霊かのように真後ろに立っていた先輩は、サングラスとマスクを取った姿でそこにいた。
つまり。
簡単パーツの古代魚モード、さらけ出し状態。
『ぎゃあぁぁぁッ!!化け物ッ!!』
可哀想なくらいビビり散らかして転びながら去って行く男たちを見て、僕は“ざまぁみろ”と舌を出した。
そして先輩へと笑顔で向き直る。
「ナイスタイミングです優彗先輩!初めて役にたちましたね、そっちの顔面!」
「ビックリしたよ、もう!来たら恵流くんが口論してて、あげくに殴られそうになってるし……でも無事で良かった」
――一人にしちゃって、ごめんね。
先輩の言葉に首を横に振る。
火種は僕の美しさのせいで、助けてくれた先輩に非なんて一切ない。
僕はすっかり見慣れた古代魚顔を見つめた。
「……初めてじゃないですか?先輩が自分の意思で、隠してた顔をさらけ出すの」
「そうかも……この顔が体質じゃなくて呪いだって分かってから、なんだか少しだけ気持ちが軽くなってるんだ」
「そうなんですか?」
「うん、体質なら改善しないこともあるけど……呪いは解ければ治るって思ったからかな?でも周りの人には刺激が強いみたいだね」
先輩はそう言って、再び顔にサングラスとマスクを着けた。
そっちの方がまだ落ち着くらしい。
「あっ……そうだ、恵流くん!これあげる!」
ふと、先輩がバッグからなにかを取り出して僕に手渡した。



