顔面国宝と噂されてるイケメンが、普段はサカバンバスピスみたいな顔してた件


サカバンバスピスの呪いってなんだ。

そんなものとは無縁の人生……いや魚生を送ってきたような平和な顔してるくせに。

っていうか呪うなら別の方法で呪えばいいだろ。

何なんだ、呪った結果が顔をサカバンバスピスに変えるって。

溢れる文句をノドにつっかえさせながらも僕は表面上の笑顔を繕って話を進める。


「その……壊れた化石って今はどこに?」


「この水族館から歩いて10分圏内の水湖呼(みずこ)神社という場所で保管していただいております……そうだ、良ければ出向いてみては?」


「そうさせていただきます、その……水湖呼神社の詳しい場所を教えていただけますか?」


「ええ、もちろんです」


ショルダーバッグからメモとボールペンを取り出してスタッフさんに手渡す。

そしてサラサラと書いてくれた住所と手描きの地図を受け取った。

うん……これを見る限り、そう複雑な場所にあるわけではなさそうだな。

次の目的地が決まったのなら、すぐにそちらへ移動するべきだろう。


「ありがとうございます、行ってみますね」


僕はスタッフさんにお礼を告げて、呆然としていた先輩の腕をグイッと引っ張った。


「ほら、行きますよ先輩!」


「あ、うんっ……」


去って行く僕らの背中を見つめていたスタッフさんは、「お気をつけて」と心配そうに手を振っていた。

再びエスカレーターで1階へと戻り、出口へと足を向ける。


「あっ……恵流くん、俺ちょっとトイレに行ってきてもいいかな?」


「どうぞ、僕は出口で待ってますね」


「うん、分かった……すぐ行くから!」


足早に駆けていく先輩の足音が遠ざかり、次第に姿が見えなくなる。

僕は出口と書かれたゲートをくぐり抜けて外へ歩を進めた。

冷房で冷やされた体は、この蒸し暑さの中でもまだ僅かに涼しい。

少しでも影になる場所を探して、出口の近くにあった大きな木の下に立つ。

さてと……僕はそう呟いてショルダーバッグのチャックを開いた。

取り出したスマホで教えてもらった神社を検索する。

すると、口コミサイトのみが数件ヒットした。


「ふーん……けっこう歴史ある神社なんだ……」


平均レビューで星4つ。

口コミには“丁寧なお祓いをしてくれた”や“お参りしてから地域の水害が解消された”などといった感謝の言葉が溢れている。

そして水湖呼神社はその名の通り“水”に関する邪気を払う神社らしい。

それなら海の生き物だったサカバンバスピスの化石をそこへ持っていったのも納得だった。

一通りの情報を頭に入れて、僕は一息つく。

そして水族館の出口へ視線を向けた。


「先輩、遅いなぁ」


一日に何度も水を浴びていたからお腹でも冷やしたのだろうか。

そう考えを巡らせていると、後ろからポンと肩を叩かれた。

振り向くと、そこには二人の男性。


「……なにかご用ですか?」


僅かな警戒心を働かせながら、ニコリと得意の営業スマイルで尋ねる。


「ね、キミ可愛いね!今って一人?」


「お友達とかいたりする?別に一人でもいいんだけどさ、オレらと一緒に遊ばない?」


その不躾な言葉に、僕の整った眉がピクリと上下した。