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それから日が経ち、数日後。
僕と先輩の姿は水泳部の部室にあった。
奥に設置されたホワイトボードの横に立つ僕。
その真向かいにある横長の青いベンチの上に腰かけた古代魚モードの優彗先輩と、困惑した様子の4人の先輩たちがこちらに視線を向けていた。
佐藤は事前に手回しをして、一足先に水着に着替えさせてプールに行ってもらったから優彗先輩の顔を見られる心配はない。
僕はバンッとボードを叩き、高らかに宣言をする。
「ただいまより、優彗先輩の体質改善についての話し合いを始めます!」
「は、はい!」
ピンと背筋を伸ばす優彗先輩の後ろで、水泳部の部長が声を上げた。
「え、うちの部室で?」
「はい、他にゆっくり話し合いできそうな場所がないので強制的にお借りしました」
「ちょっと待って、選択肢は他になかった?え、本当にうちの部室で?勝手に?部長であるオレの意見は?――っていうか一体キミは誰!」
やっぱりこんな理由で、すんなり“部室使っていいよ~”とはならないか……チッ……面倒だな。
質問攻めの部長に、僕は全力で猫を被る。
萌え袖気味の制服から白い指先をのぞかせ、唇に沿わせて小首を傾げた。
そのまま部長に向かって上目遣いに瞳を潤ませて呟く。
「……だめ、ですか……?」
「仕方ないな、今回だけだぞ少年。オレたちは今日トイレで着替えるから、部室は好きに使ってくれ……あ、戸締まりだけよろしくな~」
『部長が誘惑に負けた!』
鮮やかに手のひらを返した部長に、他3人の先輩たちのツッコミが飛ぶ。
彼らはぎゃあぎゃあと言い合いをしながらも部長と共に部室を去ってくれた。
その場に残された僕と優彗先輩。
人数の減った部室は静かで、扉の向こうのプールの涼やかな水音が遠くで聞こえるほどだった。
ふふん、やっぱり僕の容姿は男女どちらにも万能だな。
内心でほくそ笑みながら、相変わらずなにを考えているか分からない顔をした優彗先輩へと向き直った。
「さて、本題ですけど……顔に水を浴びたら元のイケメンに戻り、逆に顔から水気がなくなれば古代魚顔になる……これは確定ですよね?」
「う、うん。そうだね……それで間違いないよ」
「ならば、先輩のその体質は……肌の水分量に関係して変化したものではないでしょうか」
「肌の……水分量?」
僕は腕を組んでゆっくりと頷く。
顔というパーツはダメージを受けやすい。
疲れやストレスによる疲労感で目の下にクマが、太陽から降り注ぐ紫外線でシミやそばかすができるように、顔はデリケートな体の一部だ。
保湿が足りていないなどの理由で、肌を乾燥から守るために自己防衛が過剰に働いた結果がサカバンバスピスに見えるパーツを作ったのでは?
生き物が環境によって体の構造を変えていくように、先輩も潤った美しい顔を常にキープするため過剰に体質を変化させたのでは?
僕はそういった仮説を立てていた。
「と、いうことで今日から肌のケアをしましょう」
僕は持ってきていたスクールバッグから、あるものを大量に取り出した。



