次の日。
少しずつ慣れてきた教室での授業を全て終え、そそくさと帰り支度を済ませる。
僕は再び優彗先輩に会いにいくため、放課後に2年生の教室へと足を向けた。
目当ての場所に辿り着き、ギョッとする。
まだ新品の制服。
学年ごとに変わるリボンの赤色から察するに、どうやら同じ1年らしい女子生徒たちが列をなして訪問していたのだ。
「ごめん、ごめん!優彗ならもう帰っちゃったんだよ~、せっかく来てくれたのに本当にごめん!」
先輩のクラスメイトだろうか。
2年1組の教室と廊下の境目付近に立った男子生徒が申し訳なさそうに顔の前で両手を合わせて謝っていた。
肩を落とし、残念そうに帰っていく女子たちの背中を見届けながら僕はその場で思案する。
水泳部に入部を決めたらしいクラスメイトの佐藤が言うには、今日から仮入部が始まるとのことだった。
ということは……水泳部の部活動自体は行われているはず。
「部活を休んだ……?体調不良……あるいはサボりが許されてる?」
どちらにせよ優彗先輩が教室にいないなら、僕もこれ以上ここにいる理由がない。
踵を返し、昇降口へと歩みを進めたとき、後ろからさっきの男子生徒の声が聞こえた。
「よし……女子生徒は追い払ったぞ、優彗」
僕の足がピタリと止まる。
“女子生徒は追い払ったぞ、優彗”――?
再びターンをして2年1組の教室へ向かう。
すると、そこから一人の男子生徒が出てきた。
漫画などでしか見たことない、分厚い瓶底メガネと白いマスクで覆い隠された顔。
背中を丸めうつむき加減に歩いてきたその生徒に僕は“あり得ない”と顔を強張らせた。
ダサい。
そして不審者感が凄まじい。
こんな姿で学校生活してる人間がこの世にいるのか……!?
美意識の高い僕には到底理解すらできないアイテムの二重使いだが……よほど顔を隠したい理由があるんだろう。
それならば何も言うべきじゃない。
誰にだって嫌なことが一つや二つはあるように、この人は素顔を見せるのが嫌だったのだろう。
それは尊重してあげるべきことであり、第三者である僕が否定するなんておこがましいことだ。
廊下の隅に寄り、彼の道を開けてあげる。
すれ違いざま、僅かに顔を上げた彼とメガネ越しに視線が合った。
その瞬間、聞き覚えのある声が耳に届く。
「えっ……宝条くん!?」
この声は――もしかして。
僕は思いついた名前を口にした。
「……優彗、先輩……?」
……本当にこの人に関わると調子が狂うな。
コクコクと上下に頷く目当ての人物を見て、僕は早々に目眩を覚えた。
***
少しずつ慣れてきた教室での授業を全て終え、そそくさと帰り支度を済ませる。
僕は再び優彗先輩に会いにいくため、放課後に2年生の教室へと足を向けた。
目当ての場所に辿り着き、ギョッとする。
まだ新品の制服。
学年ごとに変わるリボンの赤色から察するに、どうやら同じ1年らしい女子生徒たちが列をなして訪問していたのだ。
「ごめん、ごめん!優彗ならもう帰っちゃったんだよ~、せっかく来てくれたのに本当にごめん!」
先輩のクラスメイトだろうか。
2年1組の教室と廊下の境目付近に立った男子生徒が申し訳なさそうに顔の前で両手を合わせて謝っていた。
肩を落とし、残念そうに帰っていく女子たちの背中を見届けながら僕はその場で思案する。
水泳部に入部を決めたらしいクラスメイトの佐藤が言うには、今日から仮入部が始まるとのことだった。
ということは……水泳部の部活動自体は行われているはず。
「部活を休んだ……?体調不良……あるいはサボりが許されてる?」
どちらにせよ優彗先輩が教室にいないなら、僕もこれ以上ここにいる理由がない。
踵を返し、昇降口へと歩みを進めたとき、後ろからさっきの男子生徒の声が聞こえた。
「よし……女子生徒は追い払ったぞ、優彗」
僕の足がピタリと止まる。
“女子生徒は追い払ったぞ、優彗”――?
再びターンをして2年1組の教室へ向かう。
すると、そこから一人の男子生徒が出てきた。
漫画などでしか見たことない、分厚い瓶底メガネと白いマスクで覆い隠された顔。
背中を丸めうつむき加減に歩いてきたその生徒に僕は“あり得ない”と顔を強張らせた。
ダサい。
そして不審者感が凄まじい。
こんな姿で学校生活してる人間がこの世にいるのか……!?
美意識の高い僕には到底理解すらできないアイテムの二重使いだが……よほど顔を隠したい理由があるんだろう。
それならば何も言うべきじゃない。
誰にだって嫌なことが一つや二つはあるように、この人は素顔を見せるのが嫌だったのだろう。
それは尊重してあげるべきことであり、第三者である僕が否定するなんておこがましいことだ。
廊下の隅に寄り、彼の道を開けてあげる。
すれ違いざま、僅かに顔を上げた彼とメガネ越しに視線が合った。
その瞬間、聞き覚えのある声が耳に届く。
「えっ……宝条くん!?」
この声は――もしかして。
僕は思いついた名前を口にした。
「……優彗、先輩……?」
……本当にこの人に関わると調子が狂うな。
コクコクと上下に頷く目当ての人物を見て、僕は早々に目眩を覚えた。
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