顔面国宝と噂されてるイケメンが、普段はサカバンバスピスみたいな顔してた件

その日、僕は絶句した。

この世に、こんな奇跡的なアホ面を晒している生き物があの古代魚以外にいるという現実に。




***


自分の容姿が恵まれているということは、幼いころから自覚していた。


恵流(めぐる)くん、今日も可愛いわねぇー」


「本当、目の保養だわ~」


宝条(ほうじょう)さんのところはご家族が皆揃って美形だもの!羨ましいわぁ」


ご近所のおばさま達の賞賛の声に、僕は笑顔を振り撒く。

テレビの向こうの美男美女はいつもそうやってファンを魅了していたから、そのマネをしていた。

そうすれば、見返りが貰えることもある。


「あれ、おつかいかな?よーし、このお刺身をプレゼントだ!頑張ってな!」


「恵流くん、このクッキー貰いものだけど良かったら持って帰って!いいのよお礼なんて~、恵流くんが喜んでくれるならおばちゃん嬉しいから!」


「あれ?お兄ちゃんと遊びに来たのかい?よーし!今日は暑いからな、おっちゃんがジュースおごってあげよう!遠慮するな遠慮するな!」


貰えることが当たり前……とは思わない。

だから、あくまでも謙虚に一度だけ断る。

“そんなの悪いです、お母さんに怒られちゃうから”って。

その上で相手方がどうしてもって言うなら、その時は素直に受け取りお礼を言って頭を下げる。

そうしたら、ますます“礼儀正しい可愛い子”ってご近所で有名になった。


「恵流はママに似て美人だな~、お兄ちゃんもカッコいいし……パパはこんなカッコよくて可愛い二人のパパになれて鼻が高いよ」


「恵流くんはパパそっくりでパッチリしたお目目だから、将来はきっとイケメンさんに育つわ~、ママはあなたとお兄ちゃんの将来が楽しみよ」


「恵流は俺の自慢の弟だよ!次はなにで遊ぶ?兄ちゃん恵流の好きなこと、好きなだけ付き合うよ!」


家族のことはもちろん好きだ。

僕を心から愛してくれているから。

だから僕は、当然。

僕自身(・・・)のことも大好きだ。

誰からも好かれて、誰よりも美しくて可愛い僕。

そう自負するくらいには、蝶よ花よと愛でられ育ってきた自信がある。

僕以上の美形は早々いない。

そう、思っていた。

――あの“噂”を聞くまでは。