「博盟。言いたくないならいいんだけど。前の恋人って、マジでお前に何したの?」
午後の授業は体育で、ソフトボールだった。試合前に二人一組でキャッチボールをすることになり、博盟に軽くボールを投げる。
彼はグローブで受け止めると、小さなため息をついた。
「何かされたわけじゃないよ。そもそも、俺が勝手に怒ってるだけ」
ほほう!
それは朗報だ。ちょっと希望が見えたぞ。
「気持ちの問題ってやつだな。じゃあ後は時間が解決してくれるよ!」
何十年も経ってるけど!
心の中で付け足し、博盟が投げたボールを受け止める。
「きっと前世の恋人さんも反省してる! だから再会したら恨みっこなしで、一番に抱き締めてやんな!」
個人的願望を多分に込めてボールを返すと、案の定鋭い視線が返ってきた。
「水継は俺の恋人の味方なんだな」
「ななな何言ってんだよ。お前の絶対的味方だって言ってんだろ」
動揺からどもりまくり、最後は目をそらしてしまった。
やっぱ恋人の話はタブーかもしれない。ガチトーンが怖すぎる。
「それかさ! もういっそ忘れんのもありだよ。そこまで苦しいなら」
これは迷ったけど、砂を踵で蹴って向き返る。俺の存在が彼を苦しめてるだけなら。それはもう、愛でも絆でもない。
ただの呪縛だ。俺は彼の枷になるぐらいなら、消える覚悟がある。
けどこれは下手したら地雷を踏み抜くこと。だからどきどきしながらボールを待った。博盟はボールを手にしたまま、可笑しそうに吹き出した。
「そうだな。それができたらどんなにいいか」
強い風が吹き荒ぶ。それは俺達の間に砂嵐を巻き起こした。
( 寂しそうな顔してるな )
俺だって寂しいわ、と思いつつ、申し訳なくて土下座したくなる。
どうするのが正解なんだろう。俺も彼も、互いに繋がりたい。
でも繋がるのを恐れてる。俺も、どんな目に遭うのかわかんなくて怖いし。
でも……。
「……わかった。そこまで想ってんなら、捜し続けよう。俺もどこまでも付き合うから」
怖くても、怒っていても、離れられない。俺と彼はそういう関係だ。博盟は目を見開き、俺のことを不思議そうに見つめた。
「お前ってほんと……いや、何でもない」
彼はゆっくり踏み出すと、俺の方に歩いてきた。まだキャッチボールしてるクラスメイト達を横目に、俺の手を引いて外倉庫の方へ歩いていく。
「ん? おい、博盟?」
「ちょっとサボろう」
「ふえ!」
博盟は倉庫裏に俺を押し込んだ。木々に囲まれ涼しいから、サボるには絶好の場所だ。
でも、真面目な彼がこんなことをするのは意外だ。ひんやりしたコンクリートの壁に背中を預け、博盟を見守る。
「疲れたろ。座んな」
「ちょいちょい! いいって」
博盟は自分のジャージを脱いで草原の上に敷いた。しかもそこに座れと言われたから、全力でお断りする。
「お前の上着汚れちゃうだろ」
「大丈夫。どうせ洗うから」
手を引かれたが、油断してたせいでバランスを崩した。
「うわわ!」
「っと……」
またしても転倒し、博盟の胸の中に抱き込まれる。
「水継、怪我してない?」
「ありがと。大丈夫だけど、博盟は?」
「俺も大丈夫。……でも、お前軽いな。ちゃんと食ってるか?」
腰に手を添えられ、腕を掴まれる。じっと見つめられてることに改めてドキドキした。
意識してることがバレないよう、怒ってるふりをする。頬を膨らまし、彼から顔を背けた。
「三食食べてるよ」
「そっか。……良かった」
彼は心底安心したように目を細めた。
何で。ただの友人を、何でそんな愛おしそうな目で見るんだ。
「博盟の恋人は」
「ん?」
「幸せだったろうな」
パニクった末、彼に抱きついたまま話した。まずどけ! と思うのに体が動かない。でも沈黙が気まずくて、何でもいいから会話を繋げなきゃいけない気がしていた。
「博盟って優しいし、絶対良い恋人だっただろうからさ。イチャイチャしまくってたろ」
「はは! 買い被り過ぎかな。喧嘩ばっかしてたし、俺もいっぱい悪いところはあるよ」
頬を指の腹で撫でられる。大切なものに触れるような手つきで、妙にどきどきした。
もっと堂々と触れてもいいのに。こっちが言うわけにもいかず、もどかしい。
「お互いの悪いところを受け入れないとやってけない。……わかってるんだけど、恋人を許さないのは、自分に対する戒めでもある」
「……?」
やっぱり、彼の心の内はわからない。それでもひとつだけ確信したことがあった。
博盟は、前世の恋人。俺に対して、宇宙レベルのでかい感情を抱えていると。
「何か難しい話みたいだけど……いつか話してよ」
せめてもの足掻きで、彼の方に寄りかかり、肩を乗せた。
「俺、お前に幸せになってほしいんだ。……お前のこと好きだから」
「恋愛感情で?」
「友人として!!」
半ギレで答えるも、博盟の押し殺したような笑い声が鼓膜に響く。時々おどけてくるけど、それがまたいじらしい。そのまま眠ってしまいたいぐらい、心地良い時間だった。
はぁ。つら。
憎しみだけなら、むしろもっと冷静でいられたかもしれない。でも好きだから苦しい。
「水継。これ食べな」
「わ。美味そうなどら焼き」
「お前甘いの好きだろ。やるよ」
何でもない学校生活が宝物に変わる。昔はスマホなんてなかったし、お菓子も食べ物も豊富じゃなかった。あれはあれで楽しかったけど、俺の毎日はまるで違う色になってしまった。
「んまい」
「はは。またあったら買ってくるよ」
リスのように頬張ってると、博盟は嬉しそうに頬杖をついた。
「駅で会った時も、両手にクレープ持ってて面白かったな」
「おい、それ他の奴に言うなよ。俺は隠れスイーツ男子なんだ」
「別に隠さなくてもいいだろ。お前、どっちかって言うと可愛い系でモテてるし」
初耳だ。腑に落ちず、眉間にしわを寄せる。すると、近くにいた織辺という男子がニヤニヤしながら隣にやってきた。
「叶本の言う通りだな。唐谷って見た目はギャル男だけど、中身はオトメだもん」
さらに聞き捨てならない台詞。全力で抗議したかったけど、残念ながらまだどら焼きが口の中に入ってるから必死で咀嚼した。
「それに唐谷、お前叶本の前だと何かやけに人畜無害じゃね?」
「俺は元から人畜無害だよ!」
「まーそうだけど。やたらピュアで、良い子になってる気がする」
織辺が首を傾げると、正面に座る博盟も不思議そうに呟いた。
「俺は、水継は真面目だと思ってたよ。だから学級委員も進んでやってると」
「あー、叶本は転校してきたから知らないのか。こいつは全員参加のジャンケンで負けたから学級委員なんだよ。好きでやってるわけじゃない」
「あ、そういうこと?」
織辺の言葉を聞き、博盟はスンとしていた。俺は聞こえないふりをし、どら焼きの袋を綺麗に畳んだ。
「博盟。誤解しないでほしいんたけど、今俺がお前といるのは義務感とかじゃなくて、マジでその……好っ」
「好?」
好きだから。って言いかけたが、傍に織辺がいるからぐっと堪える。
「す。素敵だな、って思ったんだ。その時計」
彼の腕にあるスマートウォッチを指さし、微笑む。苦し紛れの台詞だったが、実際博盟が着けていたのはハイスペの時計だったから誤魔化せた。織辺もウンウン頷き、自分の席に戻って行った。
「水継。これも欲しいならやるよ」
「何言ってんですか。物は大事にしなさい」
「それはそうだけど。……俺は、お前になら何でもやれるから」
博盟は瞼を伏せ、椅子に深く腰かけた。
やっぱおかしいって。何で、ただの友人にそんなことを言うんだ。
何でもやるなんて言わないだろ。彼は、俺に甘過ぎる。
「欲しいものがあったら言って」
「ありがと。気持ちだけで充分だよっ」
友人として話してると、重すぎて反応に困る。
それに妬いてしまう。何でそこまで俺を特別扱いするのかわからなくて。
俺が欲しいものはお前だし。言いたいけど言えないから、鞄からお菓子を取り出してヤケ食いした。
そりゃもう、完全無欠という言葉が相応しい。
くわえて、俺の前世の恋人はひとを惹きつける魅力がある。
「あ〜、この問題全然わかんね〜」
「よかったら一緒に見るよ」
「マジでっ? サンキュー、叶本」
授業内容で困ってる生徒がいると、躊躇いなく声をかけ、助ける。中身も男前だから、クラスで人気になるのに時間はかからなかった。
「やっとわかった! 叶本、マジで感謝!」
「良かった。他にもわからないところあったら、いつでも言って」
博盟が微笑むと、マイナスイオンが発生する。男女問わず、彼のオーラに魅了されてしまう。
「やー、やっぱ叶本ってやばいな。何でもできるし、チートだよ。実は人生二回目なんじゃないの」
「あはは。初めて言われた」
おお。博盟は笑ってるけど、クラスメイトの指摘は怖いぐらい的を射てる。
博盟は一周目も完璧だった。だから二周目で他者を虜にしてしまうのも、個人的には納得。
俺? 俺は一周目もパッとしませんでした。だから今世はスローライフとして送ってる。
それはさておき、博盟が誇らしいけど複雑だ。離れた位置で悶々としてると、放課後彼は俺のところにやってきた。
「水継。このあとって暇?」
「うん」
「じゃあちょっとブラブラしないか? 俺横浜初めてだから……よかったら遊ぶところとか教えてもらえないかな、って思って」
「行こう」
条件反射で鞄を取り、彼の腕を掴んだ。博盟は切り替わりの速さに驚いていたけど、嬉しそうに笑った。
こういう笑顔が一々可愛いから困るんだ。
電車を乗り継ぎ、港沿いの観光地へ向かった。この辺りは大型のショッピング施設が集まり、夜はカップルのデートスポットに変わる。
ジェラートやドーナツを食べ歩きして、俺も気分は完全にデートだった。正体は隠してるけど、彼と歩くと全部新鮮に感じる。見たことあるものも、彼と見るとまったく別の印象になった。
「やっぱり店がたくさんあって良いな。俺が前住んでたところはコンビニも遠かった」
聞けば、博盟が住んでいたのは群馬県の山奥。何にもないと言っていたけど温泉街らしく、逆に羨ましかった。
「良いなあ。毎日温泉入れるじゃん」
「ていうか、家の風呂に温泉が通ってる。温泉地は結構多いよ」
「わ〜! それマジで憧れる! 箱根も温泉地だけど、そんなしょっちゅう行けないからさ」
ショッピングモールに入り、適当なセレクトショップを見て回る。博盟も楽しそうに雑貨や鞄を見ていた。
「温泉が好きとか渋いな。水継も案外、人生二周目なのかもしれないぞ」
「うっ。いやいや、俺はお前みたいに前世の記憶ないから」
一瞬ドキッとしたけど、平静を保ち陳列されたアクセサリーを眺める。
博盟も同じように見つめていたが、俺の左手を取り、シルバーリングをはめた。しかも何故か薬指。
「おい、何でここなんだよ」
「いつかはするだろ? 予行練習だよ」
彼はにこやかに答えたが、意味不明だ。ため息をつくと、複雑そうな顔をしていることに気付いた。
( そういえば、リング…… )
霞んだ記憶がチラつく。かつて彼の為に用意したリングを思い出し、再び博盟を一瞥した。
きっと、博盟も俺と同じで行き場のない後悔が燻ってるんだ。
わかりやすいのはお互いさまらしい。リングを外し、彼の額を指で押した。
「お前もな! いつか絶対つけるんだから、そんな顔すんなよ」
「そんな顔?」
「辛そうな顔してる」
リングを戻し、不思議そうに見つめる彼を正面から捉えた。博盟はハッとして口元を覆ったが、気まずそうにしている。
「ごめんな。せっかく楽しく見てたのに」
「それはいいんだよ。それよりお前が辛そうな顔してることが、俺としては……辛い」
ようやく会えたのに、本当の意味で力になれない。それがどうしても苦しい。
俺は彼の一番の味方だけど、証明ができない。こんなにも想ってるのに、抱き締められない。
気付けば、ずっと押し殺していた想いを打ち明けていた。
「何かさ。お前にそんな顔をさせる、前世の恋人が……憎いよ」
……って。何言ってんだ、俺。
( 自分のことじゃないですか!!!! )
心の中でセルフツッコミし、咳払いする。
博盟が俺の何に怒ってんのかわからない。もしかしたら俺には全然非がないかもしれない。だから罪悪感に押し潰されるのも違う気がする。
でも……それでもやっぱり、大事な奴が辛そうにしてるのは耐えられないんだ。彼の手を引き、店から出て振り返る。
過去の自分の株を落とし、今の自分の株を上げる。俺は救いようのない人間だ。
「断言する。お前の恋人は酷い奴だよ」
「ハハッ。……ありがとな、水継」
何に対してのお礼なのか。わからないけど、博盟は涙でぬれた目元をぬぐった。
笑ってるから、ひとまず元気が出たみたいだ。ホッとして、つられて微笑む。
一緒にいられるだけで幸せ。胸が熱くて、視界が鮮やかになる。
「そういや、お前の前世の恋人ってなんて名前なの?」
その後は回る寿司をいっぱい食べて、夜景を眺めながら駅まで戻った。海沿いの道だから潮の香りがして、懐かしさに揺れた。
「……藤正」
博盟の髪が揺れる。俺も、思わず体が傾きそうになった。
今世で初めて聞く、自身の名前。それを“あいつ”が声にしてくれるなんて。一週間前なら夢にも思わなかった。
「へー。良い名前じゃん」
「あぁ。でも小さな島で暮らしてたから藤は見たことなくて……いつか見に行こうって話してたんだ」
もちろん知っている。博盟は懐かしそうに、嬉しそうに話した。
胸の奥がぎゅっとなった。押し殺していた思い出は、彼の中で確かに生きている。
( 俺はもう幸せじゃん )
電車に乗り込み、彼とドア付近に佇む。帰宅ラッシュに直撃し、電車は満員だった。押し潰されないよう必死につま先に力を入れ、ドアのガラス部分に手をつく。
「っ」
カーブに差し掛かり、ガクッと揺れてバランスが崩れる。危うく倒れかけたが、瞬間、優しく抱き留められた。
「大丈夫?」
「お、おう」
「掴まるところないもんな。俺に掴まってていいよ」
「マジ? さんきゅー」
踏ん張りながら片手を上げる。でもどこを掴んだらいいのかわからず、ひとりパントマイムを披露した。
「何してんだ、お前」
「いやっ……どこ掴んでいいのかわからなくて」
息が当たりそうな距離で見上げると、彼は心底可笑しそうに吹き出した。
「腕掴めばいいだろ。どこで迷ってんだ」
うう。確かにその通り。
我ながらアホ過ぎて悲しくなる。彼の腕を掴み、早く目的の 駅に着くよう心の中で祈っていた。
それでも顔は真っ赤なままらしく、博盟はにやにやし始めた。
「水継は、よく今まで無事でいられたな」
「どういう意味?」
「気をつけろってこと。自分じゃ気付いてないみたいだけど、お前の照れ顔、軽く理性崩壊させる威力あんぞ」
「何だよそれ!」
その台詞が恥ずかしくて、また赤面する。無限ループだ。
博盟は俺の抗議を聞きつつ、周りの人達から隠すように囲った。耳にかかった俺の髪を指で持ち上げ、静かにこぼす。
「怒んなって。俺からしたら、最強ってことだよ」
彼は微笑み、子どもみたいに無邪気な顔で肩を揺らした。
「素直で明るいってのは最大の長所。嫌味とかじゃなくて、本気でそう思う」
「……前世の恋人は、そうじゃなかったんだもんな?」
ようやく次の駅に到着し、車両のドアが開く。主要駅で一気にひとが降りた為、俺達の周りは誰もいなくなった。
「そうだな。だから俺が守らないと、って思った」
博盟は懐かしそうに長椅子に座る。彼が隣の座面をポンポンと叩くから、そこに座った。
「でも、今はいないから。お前を一番に守るって約束する」
「博盟……」
頭を撫でられ、心臓が跳ねる。悔しいことに、俺の頭の中はもう全部バラしたいという気持ちが渦巻いていた。
彼が見ているのは前世の俺で、唐谷水継じゃない。それがこんなにもやきもきするとは思わなかった。
もう、何が何でも今の俺に惚れさせたい。とか思ってしまってる。
「俺も……何でかわからないけど。お前には笑っててほしいんだ」
周りに聞かれたら恥ずかし過ぎるから、消え入りそうな声で呟いた。
「生まれ変わりって……勇気出して言っても、信じてもらえない。笑われるどころか、頭おかしい奴扱いをされることもある。辛いことの方が多かっただろ」
自分もそうだったからわかる。博盟は淡々としてるけど、幼い頃から目には見えない、小さな傷を負ってるはずだ。
それを、今からでも癒せるだろうか。
「もう大丈夫だよ。俺は、何があっても博盟の傍にいる」
もっとたくさん笑わせて。今この瞬間を楽しい、と思ってほしい。
「……っ」
震える声で告げると、博盟は石のように固まった。目を見開き、言葉を失っている。
やっぱり台詞が気障過ぎたか。後悔のあまり泣きそうになってると、ぐしゃぐしゃと頭を撫でられた。
「心強い」
「え。あ、ほんと?」
「あぁ。超元気出た」
そう言う博盟は、いつも通り無表情だ。耳は少し赤く染まってる気がするけど、スンとしている。
俺の方が泣きそうになってるし、かっこ悪い。軽く頬を掻き、また俯いた。
正体を明かせないのは、傷つくのが怖いからだ。でもこうして博盟を騙すのも、彼を傷つけることを意味する。
罪悪感で死ねる。扉のガラス窓に目をやると、腰に博盟の手が回った。
「揺れると危ないから。ちゃんと掴まってな」
「お、おう」
相変わらずのフォロー。……優しさが、この日はどうしようもなく心にきた。
「水継」
結局、好きで好きで仕方ないんだ。
「すごく今さらだけど、お前に会えてよかった」
前髪を撫でられる。目的の駅に停まり、乗客が一斉に降りていった。
「また明日。気をつけてな」
「うん。また明日」
片手を上げると、博盟は目を細めた。翻り、人混みに紛れる。俺は彼の後ろ姿が見えなくなるまでその場に突っ立っていた。
「うわあぁあぁ……」
そして、再び押し寄せる罪悪感。
好きの感情が爆発する度、脳内にアラートが流れる。
まだ隠し通さないといけないのに、抱き締めたい願望が抑えられない。
( いやこらえろ。まだ駄目! )
博盟の怒りの理由が判明するまでは大人しくするんだ。
深呼吸を繰り返し、降りる駅に着くまで胸のあたりを強く押さえていた。

