Witch of battlefield《戦場の魔女》DRESSY《ドレシー》
戦場の死神。
戦場跡地に立つひとりの少女、その少女は世界の平和を夢見る死神と呼ばれる魔法使いだった。
そこは戦が続く世界、いつからか何のために戦っているかも、忘却してしまう狂気の世界…
「「「うおー!カキンッ!カキンッ!グサッ!」」」(((カキンッ!カキンッ!カキンッ!カキンッ!)))―――
―――(((カキンッ!カキンッ!カキンッ!)))((うおー!))―――
―――((カキンッ!カキンッ!))―――
―――(カキンッ!)―――。
―――静寂―――。
主を失くしたはためく旗…。
静まり帰った戦場の後には、数多の屍だけが取り残されて…
(バサッバサッ、カァー!カァ―!)屍の山の上にひとりの少女が。
『死神の大鎌』『鎮魂曲』(シュッザン!)
その身には不釣り合いな大鎌を振るう魔女がいた。その姿は多くの者を戦慄させた。魔女が去った後には、数多の蝶が怪しげな、いや、美しく儚げに淡く光り、舞っていたという。いつしか戦場の死神とその姿を目撃した者はそう呼ぶようになった。
Witch of battlefield DRESSY
(カァー!カァ―!)「にゃー!」(カァー!カァ―!)「にゃー!」何を遊んでるのかしら?…本能って奴なのね。
「ねえねえ、いつまでこんな事を続けるんだい?シャー!」(シュッザン!)「戦が無くなるまでよ」「戦は無くならないと思うな僕は、争わない生き物なんてこの世にはいないんだから」そんな事は解ってる。(シュッザン!)でも…「いつから戦は続いているの?」(シュッザン!)「さあ、僕が知る限りずうっとだよ」…。(シュッザン!)「さあ、今夜の宿を探すわよ」「ああ、待ってよ!」
(ヒュールヒュール)血生臭い風がふたりをあざけ笑う様に吹いていた。
「人けの無い街だね?」建物はあるが確かに人けはない「巻き込まれたくはないからじゃない」「よう!姉ちゃん…ヒック、付き合えよ~…いいじゃねえか、なあ、ヒック」(シュッザン!)「ああ、あ」わたしに触れようとするからよ。
(ギィー!カランカランカランッ)「部屋は空いてるかしら?」「いらっしゃい、あら、可愛い猫ね、一泊、食事付きで5銀貨だよ!」(ざわざわがやがや)「ああ、西の谷でまた戦があったらしいわ、この街も巻き込まれないと良いんだけどねえ。食事は後で部屋に持っていくよ」「ありがとう」「部屋は二階の一番奥だよ」
(カチャ、ギー、コツコツコツ、バタン!)「服ぐらい綺麗にしてからベットに寝ろよ」「いいじゃない疲れてんだから…なんなら洗ってあげようかチャチャ」「…は、早く食事来ないかにゃ~」
「いただきまーす!」「頂きます」「にゃんにゃんにゃん、あのお金、屍から取ってきたやつだろ、追剥だな」「嫌なら食べなくても良いよ!」「にゃんにゃんにゃん」タダ働きはしない、痛み、悲しみ、苦しみ、恐怖、憎しみ…天に誘う鎮魂なのだから。
****
「さあ、行くよチャチャ」「もう少しゆっくりしても…。」未練を残した魂が…憎悪に染まるから。「ギィー!カランカランカランッ」
「「「うおー!カキンッ!カキンッ!グサッ!」」」(((カキンッ!カキンッ!カキンッ!カキンッ!)))―――
―――(((カキンッ!カキンッ!カキンッ!)))((うおー!))―――
―――((カキンッ!カキンッ!))―――
―――(カキンッ!)―――。
―――静寂―――。(バサッバサッ、カァー!カァ―!)
『死神の大鎌』『鎮魂曲』(シュッザン!)(シュッザン!)(シュッザン!)「ねぇ、ドレシー!この人まだ息してるよ?」(シュッザン!)「えっー!ドレシー!」「殺してないよ」憎しみは断ち切ってしまわないと…。「ほっといて良いの?」「良いよ」殺し合いをする様な人、望んで戦地に赴くかはわからないけど、別に人助けの為にわたしは動いてる訳ではないのだ。「さあ、行くよ」「待ってよ!」
(ざわざわざわざわ)「此の街は人が多いね」「都が近いんでしょ」(ざわざわざわざわ)「アイツだ!死神だ!黒猫を肩に乗っけたアイツが戦場の死神だ!」((ざわざわざわざわ))「ひぃー!街から出ていけ!」(((ざわざわざわざわ)))『鉄壁の盾』(コツンッ!)「「出ていけ!」」(コツンッ!)「「出ていけ!」」「チャチャローブの中に」「なんなんだよ、あいつら」「しょうがないよ」ひとは未知なるものに畏怖を抱き自分と違うものを敵視する。(コツンッ!)「ドレシー痛くないの?」「痛くないよ、魔法で弾かれているから」でも、…。
「ふう、なんて奴らだ!あんな奴ら死んじまえば良いにゃん!」「…。今日は森で野宿だよ」「にゃんっ」
「昨夜のベットが恋しいにゃん…、(きゅるるるる)お腹減ったにゃん」「今朝のパンを幾つか分けて貰ったから、今日はこれで我慢して」「…。」
(ガサガサ、ガサガサ)
「…、」どうやら先客がいるようだ。
「うっ…はあーはあーはあー」わたしは男の頬に手を添えた『すごい熱』「この男、昼間の?ドレシー?何処に行くの?」「薬草を取りに、チャチャはこのひとを見ていて」…
(ギーコギーコ)「臭いにゃ」(ギーコギーコ)「魔法で治せないの?」「治せるよ、でもぴんぴんして此のひとが帰ったらおかしいでしょ?」「助けてもどうせ戦場で命を落とすんじゃ」そうかもしれない、此処で見捨てても…、「目覚めが悪いからね」この傷は…、仕方ない。「はあー」
『聖なる癒し』ドレシーが翳した手のひらから淡い光が…そして其の光は蝶に姿を変えて飛び立ったのである。
「さあ行くよ」「行くよって何処にさ」
ドレシーの腕を掴む若者、「め、女神さ…ま…。」朦朧としている男「女神様だって、にゃはははは!」コツンッ!「痛って!酷いよう…にゃはははは死神の間違え」コツンッ!「痛って!」「さあ行くよ」「此処に?置いてくの?獣の餌になるだけだよ」「うっ!…。」仕方ないこの男が目を覚ますまで。―――。
****
(チチッチチチッ)此処は…、傷の手当が…、「起きたわね」「…。し、死神!」『にゃはははは!』コツンッ!「にゃっ!」「さあ、チャチャ行くよ」「まっ、待ってくれ!君が僕を…」「…。」「ありがとう、わたしは…」
この若い男は、この国の王様なのだそうだ。先代、先々代は父親と兄で、ふたり共、戦死したそうだ。「あなたは戦場で何をしているんですか?」「戦場跡地ね」「跡地で」はあー。「未練を断ち切っているの」未練を…。「あなたは魔女様?」「そうね、最近は戦場の死神って言われてるみたいだけど」『にゃはははは!』コツンッ!「にゃっ!」忘れていた!「はい」手を差し出すわたし、手を添える男「…?」「違う!お金よ!お金!わたしはタダ働きはしないの」「そうかそうだよね!…えーとっ、すまん、今は持ち合わせが…城に行けば、君は恩人だし…。」「…仕方ないあなた歩ける?」「ああ、君のおかげだ」「そう、じゃあさっさと行くわよ!」『死神じゃなく鬼だにゃ』コツンッ!「にゃっ!」
****
(わいわいがやがや)(わいわいがやがや)「陛下がお戻りになったぞ!伝令伝令!」(わいわいがやがや)『何か騒がしくなったわね』『しょうがないさ、王様なんだろこいつ』
「陛下!ご無事で!」「ああ、わたしの他に戻った者は?」俯き首を横に振る男「…。」「そうか、残った遺族に褒賞を」「御意!」戦バカ!だけって言うわけではないらしい。他者を思いやる事が出来るのに、「陛下、その者はもしや…」「ああ、戦場の死神だ」「なっ!」(ガシャガシャガシャ)「まっ!待て!大丈夫だ!わたしにとっては、戦場の女神だからな。決して失礼がないように」「御意!」(わいわいがやがや)「宰相、戦況はどうなっている?」「現在は我が国からは撤退した模様、しかしいつ襲ってくるか」「先行はついているのか?」「はい」「わかった」
(パッカポッカパッカポッカ…)街道を馬車に揺られて進む(わいわいがやがや)(わいわいがやがや)「王様!王様!」随分、国民に慕われているのね「にゃは、みんな手を振ってるにゃ」城まで馬車に乗せて貰って良かった…罵声、浴びなくて済むし。「魔女様、其方の黒猫は?」「チャチャ」「言葉を話されるんですね、チャチャ殿」「苦しゅうにゃい」
「橋を降ろせ!」(ガチャガチャガチャ、ドーン)「デカいニャー」「はは、城ですからチャチャ殿」
「お帰りなさいませ」「ああ、心配をかけた」「此方が」「魔女様とチャチャ殿だ、失礼のないように」「はい、執事のジェフと申します。何なりとお申し付けください。」「苦しゅうにゃいにゃ~」『チャチャ!』『良いじゃないか、いつも罵声を浴びてるにゃ、たまには』『…。』
****
「ささやかではあるが晩餐だ、好きなだけ食べてくれ」食べてくれって、わたしはお金さえ貰えれば用はないんだけど。「ご馳走にゃん!にゃんにゃんにゃん」「王様?」「失礼、名乗りがまだだった、わたしの名はジーク・ラルドフ・ジュニア、この国ラドロフの王だ」名前なんてどうでもいいんだよ!「なにかお忘れでは?」「…?」手を差し出すわたし…。
「銀貨8枚…、銀貨8枚だけか?わたしの価値は銀貨8枚…。」うなだれる王様…。『ドレシー白金貨100枚も貰って置けば』『良いんだよ王であろうがなかろうが銀貨8枚、それ以上は貰わない』「魔女様、これではご恩に釣り合わない!」「…じゃあ貸しで。」「貸しですか」「そう、大きな貸ね。行くよチャチャ」「魔女様、何処へ行く?」「戦場跡へ」「今日はもう遅い、泊って行けば良い」「…。」『僕も野宿はやだにゃん』
わたしたちは来賓室に通された「わー!凄い部屋だにゃん」「お茶が入りました、此方にどうぞ。御用の際はお呼びくださいませ。」メイドさんに淹れてもらったお茶を一口「…美味しい」「そうだろ我が国自慢のお茶だからな」来賓室だよね?王よ、なぜおまえもお茶をしている?暇なのか?「はあ~美味しい」暇なようだ!
「王様?あなたはなぜ戦をする」「…、敵が攻めてくるから」「攻めてこなかったら」「平和で良いよな、わたしは此の国を、此の国の民を護らなければならない」「撃っては出ないのか?」「…、彼方にも民がいるからな…。魔女様は跡地で何をしているんだ?」「苦しみ、怒り、悲しみ、憎しみを断ち切ってる」「残された者の憎しみは?」「…、それは…。王様の仕事でしょ」「あはははは、そうかわたしの仕事か、そなたの言う通りだ」(チリンチリンチリン)「お呼びでしょうか」「ええ、王様のお帰りよ」「魔女様~!」
「ドレシー、あの王様は戦が好きじゃないようだにゃん」「そうね」「此の国の平和を望んでたにゃん」「そうだね」「…。」「チャチャなにが言いたいの?」「ドレシーが手助けすれば、此の国の人達は平和に暮らせるニャン」そうかも知れない、だけど世界は広い…。「此の国の平和を護る事から、始めたら良いにゃん」此の国の平和を「此の国が平和になれば、戦が嫌いな人が此の国に集まって来るにゃん、ドレシーの願いも叶う事になるにゃん」「チャチャは野宿が嫌なだけなんじゃないの?」「だけじゃないにゃん、飯も旨いにゃん」ははっ。
****
「おはよう!魔女様、よく眠れたかい」「ええ、王様」「なんだい?」「わたし暫く此の国に滞在しようと思ってます。」「本当かい!暫くと言わず、ずーっと居てくれて良いんだよ」「なので宿を…」「ここが在るじゃないか!」そ、そうではお言葉に甘えて。
わたしが出来る事、先ずは王様と話し合いだ「王様?」「魔女様、私めの事はジークとお呼びください」「じゃあジークわたしの事もドレシーとお呼びくださいませ」「ド、ド、ドレシー、なんでしょうか?」ドドドって「ジークは戦を好まないのよね」「そりゃ勿論」「他国に攻め込まないのよね」「当然」お人好しなのか、馬鹿なのか「それが如何致しましたか?」(にこにこ)両方ね。「わたしがあなたの願いを叶えましょう」「わたしの願いを!おう!我妻ドレシー」やっぱり馬鹿ね!
それから国の地図、内政、内需を聞き、此の国は岩山を背に裾野が広がるように国が出来ていた。海も在る。敵は西から攻めてくるのよね?「外壁はどうなっているの?」「むろん国を囲う様に建てられているが、敵も攻め入る時は外壁を壊して襲ってくる。今も西の外壁は修繕中だ」
わたしはジークを引き連れて修繕中の外壁へ。強化魔法『鉄壁な壁』を外壁に施した。「ジーク、兵に外壁を壊すよう命じて」「ド、ド、ドレシー!壊すのか!」「ええ、壊せるものならね。ラドロフ兵の実力はどうかしらね?」「むむ、エルノフ近衛師団長!総力を挙げて外壁を破壊しろ!」「はっ!」
「せーの!ドドーン!せーの!ドドーン!せーの!ドドーン!」…。轟音が響くだけで変化は起こらない「せーの!ドドーン!せーの!ドドーン!せーの!ドドーン!」時間ばかりが過ぎていく「はあ、はあ、へ、陛下!びくともしません」「…、凄いな!」「この時間に外壁の上から攻撃されたら?」「…、全滅だな…。」
其れからわたしは1週間掛けて、国の外壁に強化魔法を施した『鉄壁な壁』『鉄壁な壁』そして外壁の上に国の旗と、わたしを形どった旗を設置した。『ふう、これで最後ね鉄壁な壁』『そんなに毎日毎日やらなくても良かったんじゃないにゃん』『こうしてる間にも戦はどこかで起きてるから』『全ては救えない、ドレシーは欲張りにゃん』『…。』外壁の上には、戦場の死神を大鎌と一緒に描いた旗だ!この旗を見て戦意をなくしてくれれば…。あとは此の国の人次第だ。
「チャチャじゃあ行こうか」「此の国を出るのかい?」「不満?」「ちょっと勿体ないなって」「此処にいると太るわよ」「其れはやだにゃん」―――。
城下街を歩いていると路地裏から…、「ほら、立てよ!」(ドンッ!)「あらよっと」(ドンッ!)「なんだ?その眼は」(パンッ!パンッ!)「ははは、なんとか言えよ!」(ドンッ!)…
『チャチャちょっと』『いじめだにゃん、どうするんだ?』『死神の大鎌』
「うっわー!死神だー!」ちりじりに逃げ出す子供達『…?』「あなたは逃げないの?」「わたしを迎えに来たの死神さん」「…。」死神が迎えに…、「だとしたら?」「…、やっと終わる…」それまで感情の無い眼をした少女の頬に一筋の涙と笑みが…。「あなた家族は?」首を横に振る少女「ひとりなの?」頷く少女「お名前は?」「…ニーナ」怒りで感情が、震えが止まらない!「死神さん行こ…」わたしは震える手でニーナを抱きしめた『聖なる癒し』『鉄壁の盾』「じゃあ行きましょう」頷くニーナの手を取り歩き出す『何処へ行くんだよドレシー』『バカ王の所よ』『にゃはは』
(ひゅ~、パタパタパタ)
城のてっぺんにはためくのは『死神の旗?』ラドロフの旗はどうしたのよ。
「死神さん此処はお城だよ」「そうね、ニーナわたしの事はドレシーと呼んで」「ドレシー…」
「魔女様のお帰りだ!橋を降ろせ!」(ガチャガチャガチャ、ドーン)『やたらと豪華絢爛な馬車がいっぱいあるわね』『外壁に魔法を掛けてるときに、遠目で見ていたおっさん達じゃにゃい』ああ、あの領主達ね。
「王様は何処?」「はっ!会議室に居られるかと」「そう」あー!腸が煮えくり返る!「王様はいる?」「はっ!ただいま」「いいわ」『天を揺らがす風』「「「ビュ―――!!!バッバ―――!!!」」」壁諸共、会議室のドアが吹き飛んだ(パラパラパラ…。)『あららにゃん何時ものように鎌で切れば良かったにゃん』『それじゃ!わたしの気が収まらなかったのよ』(ブルブルブル)『恐ろしいにゃん』「ゴホッゴホッ、ゴホッゴホッ」「何事だ!」「ゴホッゴホッ、ゴホッゴホッ」
****
【少し時は遡り】
(ヒッヒーン!パッカポッカパッカポッカ)「橋を降ろせ!」(ヒッヒーン!)(ヒッヒーン!パッカポッカパッカポッカ)「いったい何事なんだ…領主達がこんなにも…」「知るか、取り敢えず宰相に伝達だ」
「何事です?」「宰相!陛下に謁見を」これみんなですか…、わかりました。皆様、会議室の方へ」
「皆の者、どうした?」(ざわざわ、ざわざわ)「恐れながら陛下にお尋ねします。」「なんだ」「わが国は”戦場の死神”の軍門に落ちたのですか?」「…、いや…だが私は”戦場の死神”殿に此の国を任せたいと思っている」(ざわざわ、ざわざわ)(がやがやがや)「何をバカな事を!」「そうだそうだ!」(がやがやがや)「血迷いなされましたか!陛下!」(ざわざわ、がやがや)「わたしは反対ですぞ!」「わたしもだ!」「わたしも!」(ざわざわ、がやがや)「静まりなさい!陛下どうぞ」「うむ、丁度良い機会だ、皆の決を採ろうではないか、宰相」「畏まりました。此の国を”戦場の死神”に預ける事に賛成の…「「「ビュ―――!!!バッバ―――!!!」」」(パラパラパラ…。)「ゴホッゴホッ、ゴホッゴホッ」「何事だ!」「ゴホッゴホッ、ゴホッゴホッ」
「ゴホッゴホッ、ゴホッゴホッ…陛下御無事ですか!」「ああ、ゴホッゴホッ」「なに奴!衛兵!衛兵!」『はあ~スッキリした!』「にゃはは」砂埃が晴れていく…「ド、ドレシー?…剣を収めろ!」「ジークどう言う事?」「?、あっ!あれかい、大きな旗だっただろ、我が国はこれより”聖国ドレシー”そして”聖都ラドロフ”『ねぇチャチャ、何を言ってるの?このバカは?』『バカの言う事を僕に聞かれても…。』「反対の者は居るか!」―――静寂―――「では、賛成の者!」…、「賛成…、」「賛成、」「わたしも賛成しますぞ!」(((わ―――!!!パチパチパチ!!!)))「死神様!ばんざーい!ばんざーい!」なに…これ?「と、言う事だ!ドレシー!」「…。」
「ジーク、この子を見てどう思う」「…、孤児かな?」「沢山の子供がいたわ」「戦が続き多くの親も亡くなった」「孤児がいて当然と?」「…。」国の民を護るんじゃ…、「聖国ドレシーでしたっけ?では私が女王で良いのかしら?」「勿論そのつもりだ」「そのつもり?」「いえ、女王陛下ドレシー様」「ジークに命じます、子供達に暖かい住まいと食べ物を、そして教育を」「はっ!」「さらに、子供達をないがしろにした大人たちには二度と子供が産れない罰を」「はっ!」『聖なる指の音』パッチン!「ジーク、そこの揺れてる三人、犯罪者です。領地を調べなさい」えっ!(ざわざわざわ)「…?直ぐに掛かりなさい!」(わいわい、がやがや)「大変な事になったぞ」「直ぐに領地に」(わいわい、がやがや)
『良かったのかドレシー』仕方ないチマチマ鎮魂していても変わらないのだから…、「死に神さ…、ドレシー?」「なーに?」「わたし…生きていて…良いの?」わたしはニーナをぎゅっと抱きしめた「ええ、これからはわたしがあなたのお母さんね」「お母さん…」ニーナがわたしをぎゅっとして激しく泣いた。そう、泣きたい時には泣いて、そして笑いたい時には笑う、わたしと共に…。
「ドレシー?」「なーに、ニーナ?」「さっき猫さんが笑ってた」「そうね、チャチャは喋れるのよ」ぎゅっとチャチャを抱きしめるニーナ『く、苦しい…』「良かったわね、こんなに可愛いわたしの娘に抱きしめられて」「にゃっ!」
****
(わいわいがやがや)(わいわいがやがや)慌ただしい城を横目に、わたし達は城の中庭に魔法で家を建てた『安らぎの家』『ドレシーこんな魔法も出来たのか!…野宿しなくても良かったにゃん!』旅だったし、ふたりの時は野宿でも…。今はニーナに何時でも帰れる家を…。
「わあー!凄い!ドレシー!」えへへ。木々に囲まれた小さな家だ『嬉しそうだな、ドレシー』コツンッ!「にゃっ!」「さあ、わたし達の家よ、入りましょう」「ドレシー…わたし…汚い」「ジェフ」「はっ!此方に」流石優秀な執事ね「綺麗なお洋服もいっぱいあるし、三人でお風呂にはいりましょう」「…お風呂?」そうか…、「暖かい水が沢山あるから身体を洗いましょ」「わかった」ふふっ良い子ね「僕は部屋でまってるよ」…ぎゅっ!「チャチャも一緒」そうよねニーナ「僕は」ぎゅっ!「にゃっ!」
****
寝静まった夜、わたしはひとり一冊の本を読んでいる「ドレシー様、お茶が入りました」「ありがとうジェフ。ジェフはわたしの執事になったの?」「はい、よろしくお願いします。」「此方こそよろしくね」「随分と読み馴染んだ本のようですが」そうなのだ、ママが残してくれた手書きの魔導書…。「ええ、わたしのママが…」「さようでしたか」「遅くまでありがとうね、下がっておやすみになって下さい。」「ありがとうございます。それでは失礼いたします、ドレシー様。」
(コンコン)こんな夜更けに「ジーク、どうしたの?」「此れからの事を少し良いだろうか?」そうね「どうぞ」「失礼する。ニーナとチャチャは寝たのか?」「ええ、今日は色々あったから…」「国の運営は今まで通りジークに任せたいのだけど」わたしには分からないしね「それは構わないが…相談もなくすまなかった」あら、ふふっ誠実なんだ「わたしは構わないけどジークはそれでよかったの?」「…ああ、私ではいずれ敵国に落ちるか内乱で国が亡ぶかしかなかった。それと例の三人、…人身売買をしていたようだ…。」「そう、国の護りはわたしに任せて、子供達のことありがとう」「いや、わたしが至らなかったせいだ。ドレシーには感謝している」ふふっ「聖都の主ジーク頑張ってね」「ああ、じゃあまた明日、おやすみ」「お休みなさい」人身売買ねえ…。
深い森の中わたしは目をさました…ママ!ねえママ!どこ!…返事はない…誰も居ない…なぜ?(ガサガサガサ)怖い!怖いよ!(ガサガサガサ)わたしは身を丸めて息をひそめる事しか出来なかった。何時間そうしていたのだろう、途方もなく永い時間だった。このまま獣に食べられてしまうんだ、わたしは。不思議と涙は出なかった。(ガサガサガサ)(ガサガサガサ)「そこの小さなお嬢さん」(ビクッ!)優し気な声がした「なにを丸まっているんだい?」恐る恐る顔をあげると…デカいおっさんが笑っていた…「ぎゃー!化け物ー!」「誰が化け物じゃ!」コツンッ!げんこつされた…。
その日からわたしはデカい化け物…もとい、おっさんと暮らし始めた。おっさんは色んなこと教えてくれた。生きるすべを、その中でも魔法を一から教えてくれた。「ほら、便利でしょ、あなたもわたしの様に華麗に華を咲かせなさい」鏡を見た事が無いのかと心の中で呟いた…コツンッ!げんこつされた。いつしかおっさんをママと呼ぶように…強制された!
少しづつ魔法が使えるようになったころ、おっさん…もとい、ママが一匹の黒猫を抱えて帰ってきた。綺麗な青い瞳をした黒猫…たべるのか?食べるんだろうな、コツン!「痛っ!」「ドレシーが名前を付けなさい」猫の名前か…?うーん…。「ほら、ちゃっちゃとつけなさい!」「じゃあ、チャチャ!」「にゃー!ありがとう僕の名前はチャチャ」喋った!猫が喋ったよ!うーん、雌だと思うんだけど僕か…おっさんが連れて来たからね。コツンッ!「痛っ!」そうして三人の暮らしが始まった…。
(((ゴォ―――!!!ゴォ―――!!!)))(((ゴォ―――!!!ゴォ―――!!!)))荒れ狂う炎(((ギシギシギシッ!ズド―――ン!!!)))倒れる大木。轟音と共に燃え盛る森、静まる事の無い炎『『『ママ!ママ―――!!!』』』『『『ドレシーお逃げなさい、あなたはまだ生きなくちゃいけない』』』『ママ!ママ!ママも一緒!』『わたしはこの森で長く行き過ぎた、わたしはここまで、ありがとうねドレシー、わたしの可愛い子。チャチャお願い!』『にゃ!』『『『ママ!ママ―――!!!』』』(((ゴォ―――!!!ゴォ―――!!!)))(((ゴォ―――!!!ゴォ―――!!!)))(((ギシギシギシッ!ズド―――ン!!!)))
…いつの間にか寝ていたのね、あれ?わたし泣いてた…、静かな夜だ。「ドレシー」ニーナ?「起きちゃったの?」目を擦りながらニーナが呟く「ぎゅっとして」わたしはニーナを優しく抱き寄せ”ぎゅっと”した「さあ、一緒に寝ましょうね」「うん…。」腕と足でわたしに抱き着きながら眠るニーナを連れて寝室に(ブルブルブル、うーん、シャシャシャ、くるりん)「お休みにゃん」ふふっ「お休み」
わたしにも娘ができたよママ。そう、わたしの育ての親、魔女マングロード、600年生きたと言う魔女…本当は男なんだけどね。久しぶりに見た夢…どうせ夢に出てくるなら笑って出て来てよ!ママ!
****
戦場の魔女ドレシーの旅は始まったばかり、此れから沢山の物を見て、沢山の人と出会い、沢山幸せになってほしい、世界は混沌としているけれど、わたしの愛するドレシー。
戦場の死神。
戦場跡地に立つひとりの少女、その少女は世界の平和を夢見る死神と呼ばれる魔法使いだった。
そこは戦が続く世界、いつからか何のために戦っているかも、忘却してしまう狂気の世界…
「「「うおー!カキンッ!カキンッ!グサッ!」」」(((カキンッ!カキンッ!カキンッ!カキンッ!)))―――
―――(((カキンッ!カキンッ!カキンッ!)))((うおー!))―――
―――((カキンッ!カキンッ!))―――
―――(カキンッ!)―――。
―――静寂―――。
主を失くしたはためく旗…。
静まり帰った戦場の後には、数多の屍だけが取り残されて…
(バサッバサッ、カァー!カァ―!)屍の山の上にひとりの少女が。
『死神の大鎌』『鎮魂曲』(シュッザン!)
その身には不釣り合いな大鎌を振るう魔女がいた。その姿は多くの者を戦慄させた。魔女が去った後には、数多の蝶が怪しげな、いや、美しく儚げに淡く光り、舞っていたという。いつしか戦場の死神とその姿を目撃した者はそう呼ぶようになった。
Witch of battlefield DRESSY
(カァー!カァ―!)「にゃー!」(カァー!カァ―!)「にゃー!」何を遊んでるのかしら?…本能って奴なのね。
「ねえねえ、いつまでこんな事を続けるんだい?シャー!」(シュッザン!)「戦が無くなるまでよ」「戦は無くならないと思うな僕は、争わない生き物なんてこの世にはいないんだから」そんな事は解ってる。(シュッザン!)でも…「いつから戦は続いているの?」(シュッザン!)「さあ、僕が知る限りずうっとだよ」…。(シュッザン!)「さあ、今夜の宿を探すわよ」「ああ、待ってよ!」
(ヒュールヒュール)血生臭い風がふたりをあざけ笑う様に吹いていた。
「人けの無い街だね?」建物はあるが確かに人けはない「巻き込まれたくはないからじゃない」「よう!姉ちゃん…ヒック、付き合えよ~…いいじゃねえか、なあ、ヒック」(シュッザン!)「ああ、あ」わたしに触れようとするからよ。
(ギィー!カランカランカランッ)「部屋は空いてるかしら?」「いらっしゃい、あら、可愛い猫ね、一泊、食事付きで5銀貨だよ!」(ざわざわがやがや)「ああ、西の谷でまた戦があったらしいわ、この街も巻き込まれないと良いんだけどねえ。食事は後で部屋に持っていくよ」「ありがとう」「部屋は二階の一番奥だよ」
(カチャ、ギー、コツコツコツ、バタン!)「服ぐらい綺麗にしてからベットに寝ろよ」「いいじゃない疲れてんだから…なんなら洗ってあげようかチャチャ」「…は、早く食事来ないかにゃ~」
「いただきまーす!」「頂きます」「にゃんにゃんにゃん、あのお金、屍から取ってきたやつだろ、追剥だな」「嫌なら食べなくても良いよ!」「にゃんにゃんにゃん」タダ働きはしない、痛み、悲しみ、苦しみ、恐怖、憎しみ…天に誘う鎮魂なのだから。
****
「さあ、行くよチャチャ」「もう少しゆっくりしても…。」未練を残した魂が…憎悪に染まるから。「ギィー!カランカランカランッ」
「「「うおー!カキンッ!カキンッ!グサッ!」」」(((カキンッ!カキンッ!カキンッ!カキンッ!)))―――
―――(((カキンッ!カキンッ!カキンッ!)))((うおー!))―――
―――((カキンッ!カキンッ!))―――
―――(カキンッ!)―――。
―――静寂―――。(バサッバサッ、カァー!カァ―!)
『死神の大鎌』『鎮魂曲』(シュッザン!)(シュッザン!)(シュッザン!)「ねぇ、ドレシー!この人まだ息してるよ?」(シュッザン!)「えっー!ドレシー!」「殺してないよ」憎しみは断ち切ってしまわないと…。「ほっといて良いの?」「良いよ」殺し合いをする様な人、望んで戦地に赴くかはわからないけど、別に人助けの為にわたしは動いてる訳ではないのだ。「さあ、行くよ」「待ってよ!」
(ざわざわざわざわ)「此の街は人が多いね」「都が近いんでしょ」(ざわざわざわざわ)「アイツだ!死神だ!黒猫を肩に乗っけたアイツが戦場の死神だ!」((ざわざわざわざわ))「ひぃー!街から出ていけ!」(((ざわざわざわざわ)))『鉄壁の盾』(コツンッ!)「「出ていけ!」」(コツンッ!)「「出ていけ!」」「チャチャローブの中に」「なんなんだよ、あいつら」「しょうがないよ」ひとは未知なるものに畏怖を抱き自分と違うものを敵視する。(コツンッ!)「ドレシー痛くないの?」「痛くないよ、魔法で弾かれているから」でも、…。
「ふう、なんて奴らだ!あんな奴ら死んじまえば良いにゃん!」「…。今日は森で野宿だよ」「にゃんっ」
「昨夜のベットが恋しいにゃん…、(きゅるるるる)お腹減ったにゃん」「今朝のパンを幾つか分けて貰ったから、今日はこれで我慢して」「…。」
(ガサガサ、ガサガサ)
「…、」どうやら先客がいるようだ。
「うっ…はあーはあーはあー」わたしは男の頬に手を添えた『すごい熱』「この男、昼間の?ドレシー?何処に行くの?」「薬草を取りに、チャチャはこのひとを見ていて」…
(ギーコギーコ)「臭いにゃ」(ギーコギーコ)「魔法で治せないの?」「治せるよ、でもぴんぴんして此のひとが帰ったらおかしいでしょ?」「助けてもどうせ戦場で命を落とすんじゃ」そうかもしれない、此処で見捨てても…、「目覚めが悪いからね」この傷は…、仕方ない。「はあー」
『聖なる癒し』ドレシーが翳した手のひらから淡い光が…そして其の光は蝶に姿を変えて飛び立ったのである。
「さあ行くよ」「行くよって何処にさ」
ドレシーの腕を掴む若者、「め、女神さ…ま…。」朦朧としている男「女神様だって、にゃはははは!」コツンッ!「痛って!酷いよう…にゃはははは死神の間違え」コツンッ!「痛って!」「さあ行くよ」「此処に?置いてくの?獣の餌になるだけだよ」「うっ!…。」仕方ないこの男が目を覚ますまで。―――。
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(チチッチチチッ)此処は…、傷の手当が…、「起きたわね」「…。し、死神!」『にゃはははは!』コツンッ!「にゃっ!」「さあ、チャチャ行くよ」「まっ、待ってくれ!君が僕を…」「…。」「ありがとう、わたしは…」
この若い男は、この国の王様なのだそうだ。先代、先々代は父親と兄で、ふたり共、戦死したそうだ。「あなたは戦場で何をしているんですか?」「戦場跡地ね」「跡地で」はあー。「未練を断ち切っているの」未練を…。「あなたは魔女様?」「そうね、最近は戦場の死神って言われてるみたいだけど」『にゃはははは!』コツンッ!「にゃっ!」忘れていた!「はい」手を差し出すわたし、手を添える男「…?」「違う!お金よ!お金!わたしはタダ働きはしないの」「そうかそうだよね!…えーとっ、すまん、今は持ち合わせが…城に行けば、君は恩人だし…。」「…仕方ないあなた歩ける?」「ああ、君のおかげだ」「そう、じゃあさっさと行くわよ!」『死神じゃなく鬼だにゃ』コツンッ!「にゃっ!」
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(わいわいがやがや)(わいわいがやがや)「陛下がお戻りになったぞ!伝令伝令!」(わいわいがやがや)『何か騒がしくなったわね』『しょうがないさ、王様なんだろこいつ』
「陛下!ご無事で!」「ああ、わたしの他に戻った者は?」俯き首を横に振る男「…。」「そうか、残った遺族に褒賞を」「御意!」戦バカ!だけって言うわけではないらしい。他者を思いやる事が出来るのに、「陛下、その者はもしや…」「ああ、戦場の死神だ」「なっ!」(ガシャガシャガシャ)「まっ!待て!大丈夫だ!わたしにとっては、戦場の女神だからな。決して失礼がないように」「御意!」(わいわいがやがや)「宰相、戦況はどうなっている?」「現在は我が国からは撤退した模様、しかしいつ襲ってくるか」「先行はついているのか?」「はい」「わかった」
(パッカポッカパッカポッカ…)街道を馬車に揺られて進む(わいわいがやがや)(わいわいがやがや)「王様!王様!」随分、国民に慕われているのね「にゃは、みんな手を振ってるにゃ」城まで馬車に乗せて貰って良かった…罵声、浴びなくて済むし。「魔女様、其方の黒猫は?」「チャチャ」「言葉を話されるんですね、チャチャ殿」「苦しゅうにゃい」
「橋を降ろせ!」(ガチャガチャガチャ、ドーン)「デカいニャー」「はは、城ですからチャチャ殿」
「お帰りなさいませ」「ああ、心配をかけた」「此方が」「魔女様とチャチャ殿だ、失礼のないように」「はい、執事のジェフと申します。何なりとお申し付けください。」「苦しゅうにゃいにゃ~」『チャチャ!』『良いじゃないか、いつも罵声を浴びてるにゃ、たまには』『…。』
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「ささやかではあるが晩餐だ、好きなだけ食べてくれ」食べてくれって、わたしはお金さえ貰えれば用はないんだけど。「ご馳走にゃん!にゃんにゃんにゃん」「王様?」「失礼、名乗りがまだだった、わたしの名はジーク・ラルドフ・ジュニア、この国ラドロフの王だ」名前なんてどうでもいいんだよ!「なにかお忘れでは?」「…?」手を差し出すわたし…。
「銀貨8枚…、銀貨8枚だけか?わたしの価値は銀貨8枚…。」うなだれる王様…。『ドレシー白金貨100枚も貰って置けば』『良いんだよ王であろうがなかろうが銀貨8枚、それ以上は貰わない』「魔女様、これではご恩に釣り合わない!」「…じゃあ貸しで。」「貸しですか」「そう、大きな貸ね。行くよチャチャ」「魔女様、何処へ行く?」「戦場跡へ」「今日はもう遅い、泊って行けば良い」「…。」『僕も野宿はやだにゃん』
わたしたちは来賓室に通された「わー!凄い部屋だにゃん」「お茶が入りました、此方にどうぞ。御用の際はお呼びくださいませ。」メイドさんに淹れてもらったお茶を一口「…美味しい」「そうだろ我が国自慢のお茶だからな」来賓室だよね?王よ、なぜおまえもお茶をしている?暇なのか?「はあ~美味しい」暇なようだ!
「王様?あなたはなぜ戦をする」「…、敵が攻めてくるから」「攻めてこなかったら」「平和で良いよな、わたしは此の国を、此の国の民を護らなければならない」「撃っては出ないのか?」「…、彼方にも民がいるからな…。魔女様は跡地で何をしているんだ?」「苦しみ、怒り、悲しみ、憎しみを断ち切ってる」「残された者の憎しみは?」「…、それは…。王様の仕事でしょ」「あはははは、そうかわたしの仕事か、そなたの言う通りだ」(チリンチリンチリン)「お呼びでしょうか」「ええ、王様のお帰りよ」「魔女様~!」
「ドレシー、あの王様は戦が好きじゃないようだにゃん」「そうね」「此の国の平和を望んでたにゃん」「そうだね」「…。」「チャチャなにが言いたいの?」「ドレシーが手助けすれば、此の国の人達は平和に暮らせるニャン」そうかも知れない、だけど世界は広い…。「此の国の平和を護る事から、始めたら良いにゃん」此の国の平和を「此の国が平和になれば、戦が嫌いな人が此の国に集まって来るにゃん、ドレシーの願いも叶う事になるにゃん」「チャチャは野宿が嫌なだけなんじゃないの?」「だけじゃないにゃん、飯も旨いにゃん」ははっ。
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「おはよう!魔女様、よく眠れたかい」「ええ、王様」「なんだい?」「わたし暫く此の国に滞在しようと思ってます。」「本当かい!暫くと言わず、ずーっと居てくれて良いんだよ」「なので宿を…」「ここが在るじゃないか!」そ、そうではお言葉に甘えて。
わたしが出来る事、先ずは王様と話し合いだ「王様?」「魔女様、私めの事はジークとお呼びください」「じゃあジークわたしの事もドレシーとお呼びくださいませ」「ド、ド、ドレシー、なんでしょうか?」ドドドって「ジークは戦を好まないのよね」「そりゃ勿論」「他国に攻め込まないのよね」「当然」お人好しなのか、馬鹿なのか「それが如何致しましたか?」(にこにこ)両方ね。「わたしがあなたの願いを叶えましょう」「わたしの願いを!おう!我妻ドレシー」やっぱり馬鹿ね!
それから国の地図、内政、内需を聞き、此の国は岩山を背に裾野が広がるように国が出来ていた。海も在る。敵は西から攻めてくるのよね?「外壁はどうなっているの?」「むろん国を囲う様に建てられているが、敵も攻め入る時は外壁を壊して襲ってくる。今も西の外壁は修繕中だ」
わたしはジークを引き連れて修繕中の外壁へ。強化魔法『鉄壁な壁』を外壁に施した。「ジーク、兵に外壁を壊すよう命じて」「ド、ド、ドレシー!壊すのか!」「ええ、壊せるものならね。ラドロフ兵の実力はどうかしらね?」「むむ、エルノフ近衛師団長!総力を挙げて外壁を破壊しろ!」「はっ!」
「せーの!ドドーン!せーの!ドドーン!せーの!ドドーン!」…。轟音が響くだけで変化は起こらない「せーの!ドドーン!せーの!ドドーン!せーの!ドドーン!」時間ばかりが過ぎていく「はあ、はあ、へ、陛下!びくともしません」「…、凄いな!」「この時間に外壁の上から攻撃されたら?」「…、全滅だな…。」
其れからわたしは1週間掛けて、国の外壁に強化魔法を施した『鉄壁な壁』『鉄壁な壁』そして外壁の上に国の旗と、わたしを形どった旗を設置した。『ふう、これで最後ね鉄壁な壁』『そんなに毎日毎日やらなくても良かったんじゃないにゃん』『こうしてる間にも戦はどこかで起きてるから』『全ては救えない、ドレシーは欲張りにゃん』『…。』外壁の上には、戦場の死神を大鎌と一緒に描いた旗だ!この旗を見て戦意をなくしてくれれば…。あとは此の国の人次第だ。
「チャチャじゃあ行こうか」「此の国を出るのかい?」「不満?」「ちょっと勿体ないなって」「此処にいると太るわよ」「其れはやだにゃん」―――。
城下街を歩いていると路地裏から…、「ほら、立てよ!」(ドンッ!)「あらよっと」(ドンッ!)「なんだ?その眼は」(パンッ!パンッ!)「ははは、なんとか言えよ!」(ドンッ!)…
『チャチャちょっと』『いじめだにゃん、どうするんだ?』『死神の大鎌』
「うっわー!死神だー!」ちりじりに逃げ出す子供達『…?』「あなたは逃げないの?」「わたしを迎えに来たの死神さん」「…。」死神が迎えに…、「だとしたら?」「…、やっと終わる…」それまで感情の無い眼をした少女の頬に一筋の涙と笑みが…。「あなた家族は?」首を横に振る少女「ひとりなの?」頷く少女「お名前は?」「…ニーナ」怒りで感情が、震えが止まらない!「死神さん行こ…」わたしは震える手でニーナを抱きしめた『聖なる癒し』『鉄壁の盾』「じゃあ行きましょう」頷くニーナの手を取り歩き出す『何処へ行くんだよドレシー』『バカ王の所よ』『にゃはは』
(ひゅ~、パタパタパタ)
城のてっぺんにはためくのは『死神の旗?』ラドロフの旗はどうしたのよ。
「死神さん此処はお城だよ」「そうね、ニーナわたしの事はドレシーと呼んで」「ドレシー…」
「魔女様のお帰りだ!橋を降ろせ!」(ガチャガチャガチャ、ドーン)『やたらと豪華絢爛な馬車がいっぱいあるわね』『外壁に魔法を掛けてるときに、遠目で見ていたおっさん達じゃにゃい』ああ、あの領主達ね。
「王様は何処?」「はっ!会議室に居られるかと」「そう」あー!腸が煮えくり返る!「王様はいる?」「はっ!ただいま」「いいわ」『天を揺らがす風』「「「ビュ―――!!!バッバ―――!!!」」」壁諸共、会議室のドアが吹き飛んだ(パラパラパラ…。)『あららにゃん何時ものように鎌で切れば良かったにゃん』『それじゃ!わたしの気が収まらなかったのよ』(ブルブルブル)『恐ろしいにゃん』「ゴホッゴホッ、ゴホッゴホッ」「何事だ!」「ゴホッゴホッ、ゴホッゴホッ」
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【少し時は遡り】
(ヒッヒーン!パッカポッカパッカポッカ)「橋を降ろせ!」(ヒッヒーン!)(ヒッヒーン!パッカポッカパッカポッカ)「いったい何事なんだ…領主達がこんなにも…」「知るか、取り敢えず宰相に伝達だ」
「何事です?」「宰相!陛下に謁見を」これみんなですか…、わかりました。皆様、会議室の方へ」
「皆の者、どうした?」(ざわざわ、ざわざわ)「恐れながら陛下にお尋ねします。」「なんだ」「わが国は”戦場の死神”の軍門に落ちたのですか?」「…、いや…だが私は”戦場の死神”殿に此の国を任せたいと思っている」(ざわざわ、ざわざわ)(がやがやがや)「何をバカな事を!」「そうだそうだ!」(がやがやがや)「血迷いなされましたか!陛下!」(ざわざわ、がやがや)「わたしは反対ですぞ!」「わたしもだ!」「わたしも!」(ざわざわ、がやがや)「静まりなさい!陛下どうぞ」「うむ、丁度良い機会だ、皆の決を採ろうではないか、宰相」「畏まりました。此の国を”戦場の死神”に預ける事に賛成の…「「「ビュ―――!!!バッバ―――!!!」」」(パラパラパラ…。)「ゴホッゴホッ、ゴホッゴホッ」「何事だ!」「ゴホッゴホッ、ゴホッゴホッ」
「ゴホッゴホッ、ゴホッゴホッ…陛下御無事ですか!」「ああ、ゴホッゴホッ」「なに奴!衛兵!衛兵!」『はあ~スッキリした!』「にゃはは」砂埃が晴れていく…「ド、ドレシー?…剣を収めろ!」「ジークどう言う事?」「?、あっ!あれかい、大きな旗だっただろ、我が国はこれより”聖国ドレシー”そして”聖都ラドロフ”『ねぇチャチャ、何を言ってるの?このバカは?』『バカの言う事を僕に聞かれても…。』「反対の者は居るか!」―――静寂―――「では、賛成の者!」…、「賛成…、」「賛成、」「わたしも賛成しますぞ!」(((わ―――!!!パチパチパチ!!!)))「死神様!ばんざーい!ばんざーい!」なに…これ?「と、言う事だ!ドレシー!」「…。」
「ジーク、この子を見てどう思う」「…、孤児かな?」「沢山の子供がいたわ」「戦が続き多くの親も亡くなった」「孤児がいて当然と?」「…。」国の民を護るんじゃ…、「聖国ドレシーでしたっけ?では私が女王で良いのかしら?」「勿論そのつもりだ」「そのつもり?」「いえ、女王陛下ドレシー様」「ジークに命じます、子供達に暖かい住まいと食べ物を、そして教育を」「はっ!」「さらに、子供達をないがしろにした大人たちには二度と子供が産れない罰を」「はっ!」『聖なる指の音』パッチン!「ジーク、そこの揺れてる三人、犯罪者です。領地を調べなさい」えっ!(ざわざわざわ)「…?直ぐに掛かりなさい!」(わいわい、がやがや)「大変な事になったぞ」「直ぐに領地に」(わいわい、がやがや)
『良かったのかドレシー』仕方ないチマチマ鎮魂していても変わらないのだから…、「死に神さ…、ドレシー?」「なーに?」「わたし…生きていて…良いの?」わたしはニーナをぎゅっと抱きしめた「ええ、これからはわたしがあなたのお母さんね」「お母さん…」ニーナがわたしをぎゅっとして激しく泣いた。そう、泣きたい時には泣いて、そして笑いたい時には笑う、わたしと共に…。
「ドレシー?」「なーに、ニーナ?」「さっき猫さんが笑ってた」「そうね、チャチャは喋れるのよ」ぎゅっとチャチャを抱きしめるニーナ『く、苦しい…』「良かったわね、こんなに可愛いわたしの娘に抱きしめられて」「にゃっ!」
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(わいわいがやがや)(わいわいがやがや)慌ただしい城を横目に、わたし達は城の中庭に魔法で家を建てた『安らぎの家』『ドレシーこんな魔法も出来たのか!…野宿しなくても良かったにゃん!』旅だったし、ふたりの時は野宿でも…。今はニーナに何時でも帰れる家を…。
「わあー!凄い!ドレシー!」えへへ。木々に囲まれた小さな家だ『嬉しそうだな、ドレシー』コツンッ!「にゃっ!」「さあ、わたし達の家よ、入りましょう」「ドレシー…わたし…汚い」「ジェフ」「はっ!此方に」流石優秀な執事ね「綺麗なお洋服もいっぱいあるし、三人でお風呂にはいりましょう」「…お風呂?」そうか…、「暖かい水が沢山あるから身体を洗いましょ」「わかった」ふふっ良い子ね「僕は部屋でまってるよ」…ぎゅっ!「チャチャも一緒」そうよねニーナ「僕は」ぎゅっ!「にゃっ!」
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寝静まった夜、わたしはひとり一冊の本を読んでいる「ドレシー様、お茶が入りました」「ありがとうジェフ。ジェフはわたしの執事になったの?」「はい、よろしくお願いします。」「此方こそよろしくね」「随分と読み馴染んだ本のようですが」そうなのだ、ママが残してくれた手書きの魔導書…。「ええ、わたしのママが…」「さようでしたか」「遅くまでありがとうね、下がっておやすみになって下さい。」「ありがとうございます。それでは失礼いたします、ドレシー様。」
(コンコン)こんな夜更けに「ジーク、どうしたの?」「此れからの事を少し良いだろうか?」そうね「どうぞ」「失礼する。ニーナとチャチャは寝たのか?」「ええ、今日は色々あったから…」「国の運営は今まで通りジークに任せたいのだけど」わたしには分からないしね「それは構わないが…相談もなくすまなかった」あら、ふふっ誠実なんだ「わたしは構わないけどジークはそれでよかったの?」「…ああ、私ではいずれ敵国に落ちるか内乱で国が亡ぶかしかなかった。それと例の三人、…人身売買をしていたようだ…。」「そう、国の護りはわたしに任せて、子供達のことありがとう」「いや、わたしが至らなかったせいだ。ドレシーには感謝している」ふふっ「聖都の主ジーク頑張ってね」「ああ、じゃあまた明日、おやすみ」「お休みなさい」人身売買ねえ…。
深い森の中わたしは目をさました…ママ!ねえママ!どこ!…返事はない…誰も居ない…なぜ?(ガサガサガサ)怖い!怖いよ!(ガサガサガサ)わたしは身を丸めて息をひそめる事しか出来なかった。何時間そうしていたのだろう、途方もなく永い時間だった。このまま獣に食べられてしまうんだ、わたしは。不思議と涙は出なかった。(ガサガサガサ)(ガサガサガサ)「そこの小さなお嬢さん」(ビクッ!)優し気な声がした「なにを丸まっているんだい?」恐る恐る顔をあげると…デカいおっさんが笑っていた…「ぎゃー!化け物ー!」「誰が化け物じゃ!」コツンッ!げんこつされた…。
その日からわたしはデカい化け物…もとい、おっさんと暮らし始めた。おっさんは色んなこと教えてくれた。生きるすべを、その中でも魔法を一から教えてくれた。「ほら、便利でしょ、あなたもわたしの様に華麗に華を咲かせなさい」鏡を見た事が無いのかと心の中で呟いた…コツンッ!げんこつされた。いつしかおっさんをママと呼ぶように…強制された!
少しづつ魔法が使えるようになったころ、おっさん…もとい、ママが一匹の黒猫を抱えて帰ってきた。綺麗な青い瞳をした黒猫…たべるのか?食べるんだろうな、コツン!「痛っ!」「ドレシーが名前を付けなさい」猫の名前か…?うーん…。「ほら、ちゃっちゃとつけなさい!」「じゃあ、チャチャ!」「にゃー!ありがとう僕の名前はチャチャ」喋った!猫が喋ったよ!うーん、雌だと思うんだけど僕か…おっさんが連れて来たからね。コツンッ!「痛っ!」そうして三人の暮らしが始まった…。
(((ゴォ―――!!!ゴォ―――!!!)))(((ゴォ―――!!!ゴォ―――!!!)))荒れ狂う炎(((ギシギシギシッ!ズド―――ン!!!)))倒れる大木。轟音と共に燃え盛る森、静まる事の無い炎『『『ママ!ママ―――!!!』』』『『『ドレシーお逃げなさい、あなたはまだ生きなくちゃいけない』』』『ママ!ママ!ママも一緒!』『わたしはこの森で長く行き過ぎた、わたしはここまで、ありがとうねドレシー、わたしの可愛い子。チャチャお願い!』『にゃ!』『『『ママ!ママ―――!!!』』』(((ゴォ―――!!!ゴォ―――!!!)))(((ゴォ―――!!!ゴォ―――!!!)))(((ギシギシギシッ!ズド―――ン!!!)))
…いつの間にか寝ていたのね、あれ?わたし泣いてた…、静かな夜だ。「ドレシー」ニーナ?「起きちゃったの?」目を擦りながらニーナが呟く「ぎゅっとして」わたしはニーナを優しく抱き寄せ”ぎゅっと”した「さあ、一緒に寝ましょうね」「うん…。」腕と足でわたしに抱き着きながら眠るニーナを連れて寝室に(ブルブルブル、うーん、シャシャシャ、くるりん)「お休みにゃん」ふふっ「お休み」
わたしにも娘ができたよママ。そう、わたしの育ての親、魔女マングロード、600年生きたと言う魔女…本当は男なんだけどね。久しぶりに見た夢…どうせ夢に出てくるなら笑って出て来てよ!ママ!
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戦場の魔女ドレシーの旅は始まったばかり、此れから沢山の物を見て、沢山の人と出会い、沢山幸せになってほしい、世界は混沌としているけれど、わたしの愛するドレシー。



