君がいる夜



困惑している彼女に「心配しなくて大丈夫」と答え、仕事をすると書斎へひとり籠る。

閉じられたパソコンが置かれているデスクには、まるで用済みとでもいう様にスマホが転がっている。

スマホには、『◯◯県 身元不明の白骨化遺体発見』という見出しのネットニュースが映し出されている。

先日の大雨によって発生した土砂崩れの現場から、白骨化した遺体が発見されたという。
身元は分かっておらず、死後十年以上が経過しているとみられている。


デスクの一番下の引き出しを開けると、奥に押し込まれていた古びた箱を取り出した。

なぜ今になってこれを取り出したのか、自分でも分からなかった。

その箱の中には、一通の手紙が入っており
宛名の書かれていない白の無地の封筒から手紙を手に取った。


「高瀬くん」という文字から始まるその手紙には、短い文章が書かれており、最後に
「自分がなりたい自分になれていますように。
どうか、お元気で。 
福原葉月」
と綴られている。


「…福原、」

小さく呟いた。
もう、17年も呼んでいなかった名前だった。