「…宮さん、どう思いますか、さっきの男」
駐車場に停めてあるシルバーのセダンの運転席へと坂木が乗り込む際に、バディである先輩の宮下へと投げかける。
「うーん…、そうだねー…」
宮下はひと仕事終えた感を醸し出しながら、車に戻る際に買ったブラックの缶コーヒーを開けて、グビグビと飲む。
「最後、当時の様子を聞いた途端、様子が変わったように見えました」
坂木は胸ポケットにしまっていた黒の手帳を取り出し、書いていた高瀬恒一の文字に大きく丸で囲う。
「…一旦、本部に戻るか」
坂木の問いに答えなかった宮下の言葉に坂木は了解です、と短く答えエンジンを掛けた。
先ほどのアパートがバックミラーの中で遠ざかっていくのを見ながら、坂木は小さく溜め息をついた。
