「…高瀬さん?」
ベテラン刑事感が強い男性刑事とは反対で、自分と同じ年代に見える女性刑事が自分の名前を呼ぶ声で、ハッと我に返る。
あぁ、すみませんと前置きをして、
「…確か、同級生だったはずです。中学の」と答えた。
「親しかったですか?」
男の刑事がさらに質問をしてくる。
「…だったと思います、当時は」
17年という長い月日が流れ、彼女がどこで何をしているかなんて知らない自分が、親しかったと口にすることさえ憚られた。
「そうですか。最近、会ったりは?」
「いえ、全く…」
「最後に会ったのは?」
「…覚えていません。彼女、確か途中で転校して…、…それ以来会ってないはずです」
「そうですか。当時、福原さんに変わった様子はありましたか?」
「…っ、」
男の刑事の言葉で疑問が確信に変わった。
あいつが…。
あの男が見つかったんだ。
「…分かりません。刑事さん達だって、中学時代に転校して行った子の事なんて覚えてないでしょ?」
こちらの動揺が悟られない様に、呆れた感じで言葉を返す。
「っ、」
女の刑事が何か言おうと口を開いたとき。
「恒ちゃん?」
声のする方へ顔を向けると、ランチ帰りの恋人の姿があった。
「どうしたの?」
彼女が戸惑った顔で、刑事達の顔を見た後、自分の顔を見て疑問の言葉を投げかける。
「もう良いですか?彼女も帰ってきた事だし」
彼女の手を引き、部屋の中へと連れ込む。
「…はい、ご協力ありがとうございました。何かまた思い出したらご連絡下さい」
女の刑事が自分の左薬指の指輪を少し凝視した後、お礼を言いながら名刺を渡した。
◯◯県警察本部 刑事部 捜査第一課
巡査部長 坂木 凪
と書かれた名刺を両手で貰い、ご苦労様です、とひと言かけて玄関の扉を閉めた。
県警本部の捜査一課が動いていて、しかも17年前の事を聞いてくる。
部屋に戻ると急いでテーブルに置いていたスマホを手にし、
『◯◯県 殺人事件 遺体』と自分の地元を名前を打ち込み、検索ボタンを押そうとした瞬間。
指が止まる。
いや、ダメだ。
「恒ちゃん、大丈夫…?」と彼女が心配する声も届かないくらい、焦りながら消去ボタンで文字を消し、『◯◯県 事件事故』と文字を打ち直して検索ボタンを押した。
