僕の季節はどこまでも青く

俺はクラスの田島真と言え男子に意地悪をされている。
 いじめではなく、意地悪だ。
 だって田島の顔を見てるとそれはわかる。相手を苦しめようなんて思ってはいなくて、瞳の奥に隠そうとされた欲望。それから好きな子をからかってみたいという幼い男の子ような純粋な瞳。両方を感じる。

 この前、田島は俺の体操服を川に流した。だけど最終的には体操服を川に浸かりながら取りに行ってたし、筆箱をゴミ箱に捨てたときだって同じだった。
 田島は俺のこと好きなだけなんだ。かつて小学生ころ好きな女の子に意地悪する男子を見て、俺もされたいといつからか夢見ていたことを今されてる。意地悪は全然エスカレートしない。一線を越えることは決してなく心地よかった。
 まるでみんなの前でキスしてるみたい、キスを見せつけてるみたいな気分。実際に田島にキスしてみたらどうなんだろう。田島は驚くだろうか、怒るだろうか。きっと田島のことだから、驚いて怒るに決まってるかな、表面上は。
 だけど俺と田島は同じ気持ちならきっと……。

「ねぇ、田島さ。キスしたことある?」

 そう聞いてしまった。驚く田島の顔が目に映る。
「お前何言ってんの?」

 いつもなら俺が意地悪されてる方。だけど妄想の中では俺がいつも意地悪していた。どうしても田島が壊れるところを見てみたいと思っていた。いつもは口が悪く、意地悪ばかりしてくる男の余裕のない顔、荒い息遣い、潤んだ瞳。全部見てみたかった。

「キスしてみない?」
 
 俺は真っ直ぐと田島に告げてゆっくりと顔を近づける。田島はイエスともノーとも言わない。田島の男の子っぽいあどけなさの残る顔が近くなる。

 キスなんてしたことない。だから探り探り田島の唇を探す。そしてゆっくりと唇に触れた。
 あ、キスできた。田島の目は驚きと不安と少し潤んでいた。妄想のなかではここからさらにキスを重ねる。田島をどんどん溶かしてゆく。俺と田島がひとつになるように吐息を交わえる。
 現実は違った、初めてのキスに余裕のない俺といきなりのことで余裕のない田島。
 最後に想いを伝えたくなる。
「意地悪って、する方だけじゃなくてされるほうも好きになっちゃうんだよ。田島の意地悪は小さな男の子が好きな子にする意地悪って俺気づいてるから」

 田島は丸い目をさらに丸く、猫のように俺を見る。
「お前、ホモかよ!男同士で好きとかキスとかありえねーよ」
 そう吐き捨てて田島は走り出し、公園から出ていった。まだ雨止んでいないのに。

 それから俺は1人公園に残り、色々考えていた。
 田島にキスをしてしまったこと。
 思わず、好きな気持ちを伝えてしまったこと。
 俺がゲイなこと。