「田島ー!お前は全く...」
呆れて息を吐く声が教室に響く、俺はこんなのいつものことで慣れっこなので、斜め前の席に座る人物をじっと見る。とある人物の反応が見たくて。
「だってこいつが...白川がうぜーから!」
白川は俺の斜め前の男。同級生の男だ。さっきまで消しゴムのカスを俺から投げつけられていた可哀想な男だ。
「白川は何もしてないだろ、いい加減にしろ!」
先生の言うことはごもっともだ。
だけど白川は俺にとっては迷惑なんだ、こいつを見るだけで心がざわざわする、今まで感じたことのない感情で自分が自分じゃなくなるような不思議な感覚に続き、こいつともっと話したい、そして触れたいと欲望が湧いてくる。
俺の平穏な日常をこんなに掻き乱し、狂わしてくる男。ただの男なのにだ。いや、白川はただの男ではないのかもしれない。白くて綺麗な肌、すっと通った鼻、何かを訴えるような瞳。優しい声、そして評判の悪い俺みたいなやつにも初めて会ったときから優しくて嬉しくて、もう目が離せなくなった、そんな男だ。
俺はどうしたらいいかわからない。だから白川に意地悪をしてしまう。今日は消しゴムのカスを投げつけてたけど、昨日は筆箱をゴミ箱に捨てた。もう少し前は白川の体操服を川に投げた。消しゴムは授業中だからバレたけどその他はバレないようにやってる。
こんなことしたらいけないってわかってる、でもどうしたら白川に近づくことができるのかわからないんだ。素直に好きだなんて口が裂けても言えない。だいたい男を好きになるなんておかしいに決まってる。クラスの奴らにバレたらホモだのなんだの言われるに違いない、いくら多様性の時代といっても現実はそんなもんだ。相手は男。それはどんなことがあっても俺には変えられない。白川が普通に女の子だったらよかったのに。
「起立ー、礼」
授業の終わりの合図がされ、一気に教室の空気が変わる。すると女子たちが別に隠すつもりのない音量で会話を始める。「田島ってまじでガキだよね」「わかる、私あんなやつとだけは付き合いたくない」「白川くんかわいそう」
あははと顔を見合わせて笑う女子たち。
なんとなく居心地が悪くなった俺は教室を抜け出した。
「わかってるよ、俺がガキなんてことは」とポツリと呟くと廊下に座り込みポケットに入れていたキャンディを口の中に放り込んだ。
最近の悩みは白川のことが好きすぎて女のグラビアとかエロいやつ見ても全部白川にすり替えてしまうことだ。
前は俺だって普通に女のこと考えて、1人でやってたし、エッチだってめちゃくちゃしてみたいって思ってた。だけど、今じゃ全部、あいつだったらどんな顔するかなとかどんなふうな香りがするんだろうとか白川のことばかり妄想してしまう。妄想する時はいつも俺は白川に意地悪をされる側。いつもは俺が意地悪をしているのに。
そんな考えに耽っていると俺の隣の席の小野川がいきなり話しかけてきた。
「田島さ、お前白川のことエロい目で見てるだろ」
全く予想もしてない言葉だった。小野川はいつも1人でいて休み時間は読書をするような一匹オオカミタイプのやつだ。何を言い出すかわからないやつだと思ってる。
「お前何言ってんの?俺は白川がうざくてたまんないの!」
咄嗟に言い返す。
しかし小野川は確信めいた表情で堂々とした口調で続ける。
「俺、お前の隣の席だろ。だからたまに暇な時に人間観察でお前の視線辿ってんだよ。だからわかるお前は白川をそう言う目で見てるって」
はっきりと言われてた俺の心臓はドキリと鳴った。バレたかでもここでバレるわけにはいかない。
「だからそれお前の勘違いって...」
食い気味で否定しようとした瞬間信じられない言葉を聞く。
「白川もお前のこと好きだよ」
嘘だろ?俺はあいつが嫌がるようなことばかりしてるのに?そんな展開ありえない。信じられない。
「じゃ」小野寺はそういい去っていった。
もしこの言葉が本当なら俺は...
