限の物理が終わり、僕は寝たふりをして6限までの時間を潰した。
そして迎えた6限の「現代文」
この授業は現代文の長文プリントが配られ、一時間は問題を解き、次の一時間は答え合わせをするという形式で進められている。
今回は問題を解く日だ。そしてこの授業で扱われるプリントは、そこまで時間がかかるものではない。そのため、余った時間は先生公認の元、好きな教科の勉強をしてもよいというお得な授業である。
ゴールデンウィーク前ということもあり、課題が溜まっている。さっさとやって、余った時間で課題を減らそう。
黙々と文章を読んでいくと、その内容は「人と揉めてしまった時どうすればいいのか」という説明文であった。
タイムリーすぎる内容に、写経作戦でせっかく忘れかけていた江波戸とのことを、無理やり思い出させられた。
『相手に悪気がない場合は、自分から謝った方が今後何のしこりもなく生きていける』と、書かれている。
そんなん分かっとるわという感想しか出てこない。別に揉めたというわけでもないし、というか謝りたくないわけじゃない。気まずくて顔を合わせたくない相手を山から追い出す方法とか、そういうのを書いとけよ。ていうか何だよこの駄文、問題にしていいレベルじゃねーだろ。
私情のせいで全く問題に集中できなかった結果、普段ならどれだけ時間がかかったとしても20分で終わるプリントが、授業時間の50分すべてを使っても解き終わらなかった。残りの時間でゴールデンウィークの課題をやろうと思っていたのに、すべての時間を使ってしまったせいで課題を減らすことはできず、むしろ家に持ち帰る分を増やすような結果となってしまった。
ゴールデンウィークの予定にない課題を増やしてしまったが、僕は今日のすべての授業を終え、何とかホームルームを迎えた。
担任のゴールデンウィークにおける生活の仕方についての、ありがたくも長い話が続いている。他のクラスはすでにホームルームが終わり、廊下が賑わい始めていた。
もうそんな時間か……と時計に目を向けると、そこには絶望的な時刻が刻まれていた。
これ以上話が長引くと、16時37分の電車に乗り遅れてしまう。早く帰ったところで別にやることがあるわけではないのだが、電車が30分に1本しかない田舎である以上、早い電車に乗れることに越したことはない。
最寄り駅もコンビニ以外何もないし、だからと言ってこの学校に長居したくもなかった。
「……という訳で、本日のホームルームを終了します」
何とか電車に間に合いそうなギリギリのタイミングで、先生のありがたいお話が終了した。
「起立、気を付け、礼」
「「「ありがとうございました」」」
挨拶が終わった瞬間、僕は預けていたスマホを回収し、教室を速攻で飛び出した。
このままモタモタしていると電車に乗れない。
しかし扉を開けると、トイレの前に人だかりができていた。いつもより廊下が騒がしいと思ってはいたが、20人ほどの生徒が溜まっている。
そこを通らなければ下駄箱まで到達できない。仕方なく人の波をかいくぐって進もうとしたその時、人だかりの中から突然、腕を強く掴まれた。
「北村!」
突然の出来事に、掴まれた腕の先を辿ると――そこには江波戸がいた。
なぜここに江波戸がいるのだろう。
そんな疑問が浮かぶと同時に、人だかりができていた理由が判明した。
この人だかりの原因、こいつか……!
江波戸琳翔はこの学校で知らない人はいない超有名人だ。毎回の全校集会ごとに何かしらの表彰をされており、さらに高身長でイケメンと話題になっていると、1年の時に風の噂で聞いたことがあった。
しかし、江波戸が進学コースの校舎から、僕たちのいる総合コースの4棟に来ることはまずない。全校集会も基本的には教室のテレビによる中継なので、生で見たことがあるのは進学コースの人間くらいと言っても過言ではないのだ。
そんな江波戸がわざわざ4棟へやって来れば、野次馬の人だかりができてもおかしくはない。
人だかりの謎は解けた。だが――なぜ江波戸がこんなところにいて、僕の腕を掴んでいるのかという謎は、解けないままだった。
そして迎えた6限の「現代文」
この授業は現代文の長文プリントが配られ、一時間は問題を解き、次の一時間は答え合わせをするという形式で進められている。
今回は問題を解く日だ。そしてこの授業で扱われるプリントは、そこまで時間がかかるものではない。そのため、余った時間は先生公認の元、好きな教科の勉強をしてもよいというお得な授業である。
ゴールデンウィーク前ということもあり、課題が溜まっている。さっさとやって、余った時間で課題を減らそう。
黙々と文章を読んでいくと、その内容は「人と揉めてしまった時どうすればいいのか」という説明文であった。
タイムリーすぎる内容に、写経作戦でせっかく忘れかけていた江波戸とのことを、無理やり思い出させられた。
『相手に悪気がない場合は、自分から謝った方が今後何のしこりもなく生きていける』と、書かれている。
そんなん分かっとるわという感想しか出てこない。別に揉めたというわけでもないし、というか謝りたくないわけじゃない。気まずくて顔を合わせたくない相手を山から追い出す方法とか、そういうのを書いとけよ。ていうか何だよこの駄文、問題にしていいレベルじゃねーだろ。
私情のせいで全く問題に集中できなかった結果、普段ならどれだけ時間がかかったとしても20分で終わるプリントが、授業時間の50分すべてを使っても解き終わらなかった。残りの時間でゴールデンウィークの課題をやろうと思っていたのに、すべての時間を使ってしまったせいで課題を減らすことはできず、むしろ家に持ち帰る分を増やすような結果となってしまった。
ゴールデンウィークの予定にない課題を増やしてしまったが、僕は今日のすべての授業を終え、何とかホームルームを迎えた。
担任のゴールデンウィークにおける生活の仕方についての、ありがたくも長い話が続いている。他のクラスはすでにホームルームが終わり、廊下が賑わい始めていた。
もうそんな時間か……と時計に目を向けると、そこには絶望的な時刻が刻まれていた。
これ以上話が長引くと、16時37分の電車に乗り遅れてしまう。早く帰ったところで別にやることがあるわけではないのだが、電車が30分に1本しかない田舎である以上、早い電車に乗れることに越したことはない。
最寄り駅もコンビニ以外何もないし、だからと言ってこの学校に長居したくもなかった。
「……という訳で、本日のホームルームを終了します」
何とか電車に間に合いそうなギリギリのタイミングで、先生のありがたいお話が終了した。
「起立、気を付け、礼」
「「「ありがとうございました」」」
挨拶が終わった瞬間、僕は預けていたスマホを回収し、教室を速攻で飛び出した。
このままモタモタしていると電車に乗れない。
しかし扉を開けると、トイレの前に人だかりができていた。いつもより廊下が騒がしいと思ってはいたが、20人ほどの生徒が溜まっている。
そこを通らなければ下駄箱まで到達できない。仕方なく人の波をかいくぐって進もうとしたその時、人だかりの中から突然、腕を強く掴まれた。
「北村!」
突然の出来事に、掴まれた腕の先を辿ると――そこには江波戸がいた。
なぜここに江波戸がいるのだろう。
そんな疑問が浮かぶと同時に、人だかりができていた理由が判明した。
この人だかりの原因、こいつか……!
江波戸琳翔はこの学校で知らない人はいない超有名人だ。毎回の全校集会ごとに何かしらの表彰をされており、さらに高身長でイケメンと話題になっていると、1年の時に風の噂で聞いたことがあった。
しかし、江波戸が進学コースの校舎から、僕たちのいる総合コースの4棟に来ることはまずない。全校集会も基本的には教室のテレビによる中継なので、生で見たことがあるのは進学コースの人間くらいと言っても過言ではないのだ。
そんな江波戸がわざわざ4棟へやって来れば、野次馬の人だかりができてもおかしくはない。
人だかりの謎は解けた。だが――なぜ江波戸がこんなところにいて、僕の腕を掴んでいるのかという謎は、解けないままだった。
