「俺、今まで友達がいたこともなかったし、こういう行事にちゃんと参加したことなんてなくて…」
僕は林間学校中に起きたことを一から江波戸に話した。飯盒に水が入っていなかったことや、それを僕のせいにする中村さんに対して、これ以上ことを大きくしたくないと思って黙っていたら宮野さんが言い返してくれたこと。その全てを話した。
「宮野さんや高橋に助けられてばっかで、それが申し訳なくて。でも、やっぱり自分で言い返せる勇気もなくて」
「うん」
「それに、あんなに優しくしてくれた高橋の告白も断っちゃって。それも何か申し訳ない気がして。でも、別に高橋のこと好きなわけでもないし、どうするのが正解なんだろう」
「高橋も申し訳ない気持ちで付き合ってほしいとは思ってないと思うから、断るのは正しいと思う。それと、周りが北見に色々してくれるのは、今まで北見が積み上げてきたものの結果だから、そこを申し訳なく思う必要はないよ」
「ありがとう。ただ、僕はこうやって逃げることしかできない自分が嫌になってるんだと思う」
これ以上優しくされるのが怖くて、話そうと思っていなかったことまで口から溢れた。
きっと頼りすぎて申し訳ないというのも本心だけど、その根底にあるのは自分で言いたいことも言えず、他人に言わせて逃げてしまっているということにある気がする。
「俺、今だから言うけど、林田先生のことが好きで……好きっていうのは、あのライクというよりラブ寄りの感情で。それでこの高校に来たんだ。でも、林田先生の結婚をきっかけに何も手につかなくなっちゃって……というか、林田先生と過ごすのも辛くなっちゃって、それで総合コースに逃げたんだ」
「俺こそそうだったんだ。俺てっきり、いや……なんでも。話の続きを」
「別に告白したわけでもないのに勝手に好きになって、勝手に失恋して笑えるよな。それで江波戸になんでやめたのか聞かれても何も言えず逃げて、逆ギレしてさ。僕、その時から少し人との関わり方とか直すように頑張ってたんだけど。結局あの頃から変わらないんだなって……結局俺は人に言いたいこともちゃんと言えずに、黙って逃げるの治ってなかったんだなって、自分に絶望してる」
「俺は今のままでいいと思うけど」
「えっ」
「むしろみんなの前では我慢して、ちゃんともめないようにしているのは、空気を悪くしたくないっていう全体のことを考えた行動なわけだし、そんなに悔しく思う必要ないよ」
「そっか、深く考えすぎてたのかも」
江波戸は僕の方をしっかり見て話してくれた。暗くてよくわからないけど、きっと僕の目をしっかり見つめて言ってくれている。僕が積み上げたものなんてないのに、そうやって僕を肯定してくれる江波戸に、僕は好意と恐怖が同時に降りかかる。
優しい江波戸にこのまま依存していってしまうのかという恐怖。そして、僕はそんないい奴ではない。江波戸がその事実に気づいて見放される時が来るのが、心底怖くなった。
「すごいデリカシーないこと聞くけど、いい?」
「いいよ」
「林田先生のこと、まだ好き?」
江波戸から投げかけられた言葉は、僕にとって想定外も想定外で言葉が見つからない。考えてみるとあれから時間も経っていて、失恋の傷も癒えてきていると言えばそうだ。
「わからない、けど」
「けど?」
「別に気になる人がいるから、もしかしたらだいぶ傷が癒えたのかも……」
「そっか」
思ったよりあっけない返事に拍子抜けした。
「ならさ、新学期から進学コース戻ってこない?」
「は?」
僕は林間学校中に起きたことを一から江波戸に話した。飯盒に水が入っていなかったことや、それを僕のせいにする中村さんに対して、これ以上ことを大きくしたくないと思って黙っていたら宮野さんが言い返してくれたこと。その全てを話した。
「宮野さんや高橋に助けられてばっかで、それが申し訳なくて。でも、やっぱり自分で言い返せる勇気もなくて」
「うん」
「それに、あんなに優しくしてくれた高橋の告白も断っちゃって。それも何か申し訳ない気がして。でも、別に高橋のこと好きなわけでもないし、どうするのが正解なんだろう」
「高橋も申し訳ない気持ちで付き合ってほしいとは思ってないと思うから、断るのは正しいと思う。それと、周りが北見に色々してくれるのは、今まで北見が積み上げてきたものの結果だから、そこを申し訳なく思う必要はないよ」
「ありがとう。ただ、僕はこうやって逃げることしかできない自分が嫌になってるんだと思う」
これ以上優しくされるのが怖くて、話そうと思っていなかったことまで口から溢れた。
きっと頼りすぎて申し訳ないというのも本心だけど、その根底にあるのは自分で言いたいことも言えず、他人に言わせて逃げてしまっているということにある気がする。
「俺、今だから言うけど、林田先生のことが好きで……好きっていうのは、あのライクというよりラブ寄りの感情で。それでこの高校に来たんだ。でも、林田先生の結婚をきっかけに何も手につかなくなっちゃって……というか、林田先生と過ごすのも辛くなっちゃって、それで総合コースに逃げたんだ」
「俺こそそうだったんだ。俺てっきり、いや……なんでも。話の続きを」
「別に告白したわけでもないのに勝手に好きになって、勝手に失恋して笑えるよな。それで江波戸になんでやめたのか聞かれても何も言えず逃げて、逆ギレしてさ。僕、その時から少し人との関わり方とか直すように頑張ってたんだけど。結局あの頃から変わらないんだなって……結局俺は人に言いたいこともちゃんと言えずに、黙って逃げるの治ってなかったんだなって、自分に絶望してる」
「俺は今のままでいいと思うけど」
「えっ」
「むしろみんなの前では我慢して、ちゃんともめないようにしているのは、空気を悪くしたくないっていう全体のことを考えた行動なわけだし、そんなに悔しく思う必要ないよ」
「そっか、深く考えすぎてたのかも」
江波戸は僕の方をしっかり見て話してくれた。暗くてよくわからないけど、きっと僕の目をしっかり見つめて言ってくれている。僕が積み上げたものなんてないのに、そうやって僕を肯定してくれる江波戸に、僕は好意と恐怖が同時に降りかかる。
優しい江波戸にこのまま依存していってしまうのかという恐怖。そして、僕はそんないい奴ではない。江波戸がその事実に気づいて見放される時が来るのが、心底怖くなった。
「すごいデリカシーないこと聞くけど、いい?」
「いいよ」
「林田先生のこと、まだ好き?」
江波戸から投げかけられた言葉は、僕にとって想定外も想定外で言葉が見つからない。考えてみるとあれから時間も経っていて、失恋の傷も癒えてきていると言えばそうだ。
「わからない、けど」
「けど?」
「別に気になる人がいるから、もしかしたらだいぶ傷が癒えたのかも……」
「そっか」
思ったよりあっけない返事に拍子抜けした。
「ならさ、新学期から進学コース戻ってこない?」
「は?」
