山の中、考え事をしていてどれくらいが経ったのだろう。散歩に出てからは大体30分くらいたったと思う。
土や木を踏み、何かが近づく音がする。あたりが暗く音の方向がイマイチ掴めない。一応持ってきていた小さな懐中電灯で辺りを照らす。
「北村こんなとこで何してるんだよ!?」
聞き覚えのある声のする方を照らすと、そこにはなんと江波戸がいた。
「そっちこそ、えっ、なんでここに?」
「お茶買いにロビー行ったら、こんな時間に山の方に行く北村が見えて心配で来たんだよ。で、北村はなんでこんなとこいんの?」
江波戸は僕がナイーブな気持ちの時、なぜだか、いつも一緒にいてくれる。不思議な存在だ。
「部屋に戻りたくなって、散歩してて気づいたらここまで来た。意外と山好きなのかも」
「山好きなのかもって、ここ動物も出て危ないしとりあえず、下山しよ」
座っている僕の両腕を掴み、引っ張り上げてくれたけれど、僕はどうしても部屋に戻りたくなかった。おなかに力を入れ、引っ張られても持ち上がらないようにした。
「ごめん、ほんとに今は部屋に戻りたくなくて。あと30分ぐらいしたら戻るから。江波戸は先降りてていいよ」
「こんな危ねーところに1人で残しておけるわけねーだろ。俺らのクラスもあと寝るだけだし、俺もここにいるよ」
1人になりたかったはずなのに、江波戸の申し出に僕はうなずいてしまった。1人になりたかったというわけではなく、安心できる空間にいたかったというのが正しいのかもしれない。その安心できる空間の中に、江波戸琳翔という存在がいることに僕は気づかないふりをした。
「林間学校どうだった?」
「どうだったってまだ最中だけどな。一応楽しかったよ。いつもと違う環境でする勉強って意外と新鮮味あるからか、眠くなりにくいなって」
「そうか?」
「意外とだからね。まあでも今回は自習メインだったのもあるとは思うよ。眠くなかったのは」
「なるほどね。他に行事とかやった?」
「サプライズで自由時間とかあるかと思って期待してきたんだけど、普通に裏切られたよね。だからほんとに何もしてない」
「そういうの、あんまり林田先生好きじゃないもんね」
やはり江波戸といると楽しくて、楽な自分で居られることを再認識した。
「どうして部屋戻りたくないの?なんかあった」
直球に聞かれて焦りつつ、僕は素直に答えることにした。
「おんなじ部屋だった人に告白されて…」
「え、告白って」
「僕もいきなりだったからびっくりして、一応友達になろうってことで終わったんだけどさ」
「部屋に戻りたくないってそういうことね」
「ただ一人になりたかったというのもある。久しぶりの集団行動で疲れたというか…というか林間学校中ずっとなんか……僕……」
泣きたいわけじゃないのにいつの間にか涙がこぼれ落ちていた。暗い山の中だからこちらから江波戸の表情はわからない。ただ声で泣いているのを察した様で「大丈夫だよ。ゆっくりで大丈夫だから」と僕の背中を摩ってくれた。
背中越しの手の暖かさに僕は今までにないほどの安心感を覚えた。
土や木を踏み、何かが近づく音がする。あたりが暗く音の方向がイマイチ掴めない。一応持ってきていた小さな懐中電灯で辺りを照らす。
「北村こんなとこで何してるんだよ!?」
聞き覚えのある声のする方を照らすと、そこにはなんと江波戸がいた。
「そっちこそ、えっ、なんでここに?」
「お茶買いにロビー行ったら、こんな時間に山の方に行く北村が見えて心配で来たんだよ。で、北村はなんでこんなとこいんの?」
江波戸は僕がナイーブな気持ちの時、なぜだか、いつも一緒にいてくれる。不思議な存在だ。
「部屋に戻りたくなって、散歩してて気づいたらここまで来た。意外と山好きなのかも」
「山好きなのかもって、ここ動物も出て危ないしとりあえず、下山しよ」
座っている僕の両腕を掴み、引っ張り上げてくれたけれど、僕はどうしても部屋に戻りたくなかった。おなかに力を入れ、引っ張られても持ち上がらないようにした。
「ごめん、ほんとに今は部屋に戻りたくなくて。あと30分ぐらいしたら戻るから。江波戸は先降りてていいよ」
「こんな危ねーところに1人で残しておけるわけねーだろ。俺らのクラスもあと寝るだけだし、俺もここにいるよ」
1人になりたかったはずなのに、江波戸の申し出に僕はうなずいてしまった。1人になりたかったというわけではなく、安心できる空間にいたかったというのが正しいのかもしれない。その安心できる空間の中に、江波戸琳翔という存在がいることに僕は気づかないふりをした。
「林間学校どうだった?」
「どうだったってまだ最中だけどな。一応楽しかったよ。いつもと違う環境でする勉強って意外と新鮮味あるからか、眠くなりにくいなって」
「そうか?」
「意外とだからね。まあでも今回は自習メインだったのもあるとは思うよ。眠くなかったのは」
「なるほどね。他に行事とかやった?」
「サプライズで自由時間とかあるかと思って期待してきたんだけど、普通に裏切られたよね。だからほんとに何もしてない」
「そういうの、あんまり林田先生好きじゃないもんね」
やはり江波戸といると楽しくて、楽な自分で居られることを再認識した。
「どうして部屋戻りたくないの?なんかあった」
直球に聞かれて焦りつつ、僕は素直に答えることにした。
「おんなじ部屋だった人に告白されて…」
「え、告白って」
「僕もいきなりだったからびっくりして、一応友達になろうってことで終わったんだけどさ」
「部屋に戻りたくないってそういうことね」
「ただ一人になりたかったというのもある。久しぶりの集団行動で疲れたというか…というか林間学校中ずっとなんか……僕……」
泣きたいわけじゃないのにいつの間にか涙がこぼれ落ちていた。暗い山の中だからこちらから江波戸の表情はわからない。ただ声で泣いているのを察した様で「大丈夫だよ。ゆっくりで大丈夫だから」と僕の背中を摩ってくれた。
背中越しの手の暖かさに僕は今までにないほどの安心感を覚えた。
