新たな恋は意外な場所からやってくる

結局中村さんは夕飯に現れなかった。先生に事情を話し、中村さんの分を残し片付けを終え部屋に戻った。
「俺隣の部屋行ってくるけど、北村と高橋どうする?」
「僕はお風呂行くからいいや」
「俺も、っちょっと疲れてるから今回はパス」
「おけ、風呂行くなら内鍵挟んで部屋しまらんようにしといてー」
「うい」
 田中はそそくさと隣の部屋に行き、高橋と二人っきりになった。
「じゃあ、僕風呂行ってくるね」
 着替えをもって部屋を出ようとしたとき、いきなり腕を掴まれた。
「ちょっと待って、俺北村に話したいことがある」
「なに?」
 改まってどうしたのだろう。なんか僕やっちゃった?心当たりがありすぎて高橋に何を言われるのか見当がつかない。
「実は俺、北村のこと好きなんだよね」
 突然の告白に僕は何を言われているのか全く理解ができなかった。というか考えていた言葉と180度異なる言葉を投げかけられ、思考が停止してしまったという方が正しい。
「実は北村が進学クラスにいる時からずっと可愛いなって思ってた。一年の時はクラスが違ったから関われなかったけど、2年になって俺のクラス来てくれて、それでもうこれは神様がくれたチャンスだと思った。でも北村から話しかけるなみたいなオーラをずっと感じてて、今まで話しかけられなかった。でも林間学校で同じ班になって仲良くなれて、それで俺お前のこと好きだって改めて思った。なんか勝手に好きになってストーカーみたいで気持ち悪いよな。ごめん」
「そんなことないよ。僕も似たような経験あるし……だけどごめん。僕高橋のことよく知らないし、ただいいやつだってすごい思ってて。今日のこともずっと感謝してるけど付き合うとかはわかんないかも」
「こちらこそいきなりごめん。でもこれからもっと仲良くなって友達としてでもいいから、一緒にいて欲しいなって思ってる」
「うん、これからもよろしく」
 人から告白されたことのない人生で、なんと返事すれば良いか全くわからない。
 曖昧な返事に気まずい空気が充満した。
 
 ただ意外と早く田中が戻ってきて「まだ風呂行ってなかったのかよ。まさか俺の事待っててくれた?」と気まずい空気を切り裂くように入ってきてくれたおかげで、2人の気まずい空気は何とか修復できた。
 風呂に入り、部屋に戻るはずだった。
 なのに部屋に戻りたくないと僕の体が訴える。気晴らしにトイレに行くフリをして外に出た。
 散歩をしようとぶらぶらする。どこか目的地があるわけでもなく、この場所に詳しいわけでもない。
 結局僕は歩く場所に迷って、セミナーハウスの後ろの山を登ることにした。
 もう誰の声も聞こえない。山奥の夜だから動物に遭遇してしまわないかだけが心配だったが、そんな心配は無用だったようで本当に何もいなかった。
 誰もいない。やっと1人になれた。この安堵感からなのか、なぜか手が震えた。
 なんというか、ここ二日間ずっと張り詰め続けていたのだろう。明日は帰るだけである。今晩だ。今日乗り越えれば帰宅できる。明日のこの時間には家にいると頭では分かっているのに、どうしても1人でいることを求めてしまう。
 高橋も田中もいいやつで、僕に気を遣ってくれているのはわかるのに、僕はその気遣いに対して何もできていない。むしろ告白を断って、気遣いを無駄にしている。
 中村さんによくわからないことを触れ回られた時、宮野さんにも助けられた。
 ほんとに僕は何もできていない。人に頼りっぱなしで迷惑しかかけていない。高橋の告白も断って、傷つけた。
 
 ほんとに高校やめようかな……
 そう思わずにはいられなかった。