新たな恋は意外な場所からやってくる

世界で一番美味しくないカレーを食べて、僕らはそそくさと部屋に戻った。
 部屋に戻ると高橋と田中が話しかけてきた。
「いやー、ほんと災難だったね」
「俺カレーの方にいて気づかなかったけど、何があったの?」
「飯盒放置して中村さんがどっか行ってたんよ。なのに北村のこと責めちゃって」
「うわ、なんだよそれ。明日中村に注意するよ俺」
「大丈夫。確認してなかったの僕だし。それにこれ以上、変な空気にしたくないし」
「北村がそう言うなら、何も言わないけどさ」
「ありがとう、そろそろ時間だし風呂行こ」
「それもそうだな」
「おう」
 夕飯作りでついた煙の匂いと今までの出来事を全部洗い流したくて、さっさとシャワーを浴びに行くことにした。
 そして初日にして肉体的にも精神的にも限界を迎えていた僕は、シャワーから戻るとすぐに寝てしまった。
 朝目が覚めて、僕は見覚えのない天井に焦り辺りを見渡す。
 まだ寝ているクラスメイトたちと、窓から見える自然に林間学校に来ていたことを思い出した。時計を見ると起床時間3分前。ベストタイミングで起きることができても、何も嬉しくない。むしろこの辛い行事の時間が、3分も増えてしまったことに絶望した。
 顔を洗い、歯を磨いていると高橋と田中も起きてきた。
 軽く身支度を終えると、朝食の時間になっていた。
 
 朝食会場に到着した。男子と女子で席が分かれており、僕の気は少し紛れた。
「ほんとに最悪なんだけど。あいつのせいで昨日米炊けてなくてさぁ、先生が新しいお米持ってきてくれなかったら食べられないところだったんだよね」
 水を入れ忘れたのは自分なのになぜか僕のせいにして、それを触れ回っている。まあ今更浮いている僕がそれを訂正して回る必要もないかと思い、ずっと黙って話を聞いていた。
 
 それを隣で聞いている高橋と田中はどこか怒っていた。田中は今にも飛び出して行きそうな気迫すら感じる。
「なあ、北村。あいつ殴っていいか」
「ダメだよ、これ以上面倒なことにしないで」
 ここにきて本音をこぼしてしまった。
「面倒なことって……そんなんじゃ……」
「僕は大丈夫だから」
「北村がそう言うならいいけどさ」
 煮え切らない表情の田中。この行事で本格的に話すようになったのに、ここまで怒ってくれるのは少しばかり嬉しかった。
「あのさ、全部北村くんのせいにしたいのか知らないけど、水入れ忘れたのあんたでしょ。黙って聞いてれば、途中であんたいなくなったせいで、北村くん水がないって気づいても火から離れられなくなって炊くの遅くなったんじゃない」
 突然隣の島にいた宮野さんが、机を叩いて大きな声で反論した。どうやらかなり腹に据えかねているらしい。
「失敗するのはいいけど、自分のやったこと全部人のせいにするって、あんたマジでどんな神経してるの?」
 一触即発の雰囲気に食堂は静まりかえった。先生たちがやってきてなんとかその場は収まったが、僕は本格的に山を下りる検討をし始めた。しかし今日は下りるどころではなく、登らなければならない。これもまた班のメンバーで登らなければならないのだ。非常に面倒な行事である。どうしたものかと考え続けても、結局答えは出ないままだった。
 結局死んだ空気のまま山登りとレクリエーションを乗り越えた。
 そしてまたやってきた夕飯作り。
 今日は五平餅を焼くらしい。中村さんは最初からいなかったため、穏やかな空気のまま夕飯作りが進んで行った。
「どこ行ったんだろう、中村さん」
「あんな奴のこと気にする必要ないよ」
「それな。北村くん、あんなやつの相手なんて時間の無駄だから気にするだけ損だよ」
「それもそうだね」
「それと、今朝はありがとう」
「何が?」
「僕のこと庇ってくれて」
「別に庇ったわけじゃない。普通にあんな女に言われ放題なのは我慢ならなかっただけ。北村くんのためでもないわ」
「それでもありがとう」
 頭を下げると宮野さんはどこか照れたように笑って、「さっさと焼くよー」と焼き場の方へ行ってしまった。
 あまり褒められたことではないが、共通の敵の出現によって宮野さんと少し仲良くなれた。