「ほんとにありえん」
「どうしたのそんなご立腹で。北村にしては珍しい」
江波戸と過ごすいつも通りの昼休み。ただいつもと違うことが一つだけある。それは、僕から江波戸に話しかけているということくらいだろうか。
「林間学校でバレー大会なんてありえない」
「そんなんあるの!?」
「え、逆にないの?」
僕は人生ではじめて進学コースを離脱したことを後悔した。こんな行事があると先に知っていれば、絶対進学コースに残ったのにと一瞬思ってしまった。林田先生の子供の話を聞いて、進学コースをやめてよかったと心の底から安心していたのは最近のことだったのに。それほどまでに、バレー大会は僕の精神をむしばんでいるんだ。
「う、うらやましい……」
「ないって言っても俺らずっと補習だよ。俺からするとバレー大会のほうがずっといいと思うけどなあ」
「そんな訳ない、ずっと座ってるだけでいい補習のほうがマシに決まってる」
「北村って運動苦手だっけ」
「苦手だよ! というか運動苦手じゃなくても、あんなアスリート予備軍みたいな連中の中に入れられたらどうしようもないだろ」
「それは確かに」
「でも、俺らのクラスよりよっぽどいいだろ。ほとんど勉強合宿みたいなもんだぞ」
江波戸はなぜか林間学校のしおりを持ってきていたようで、僕に見せてくれた。その中身の差に愕然とした。これは同じところに行くのか怪しいレベルの内容だった。
娯楽など一切なく、朝9時から夜10時まで勉強漬けの日程だ。レクリエーションなんて行事も一つもなく、ずっと勉強。これは先生の方が大変なのではないかというレベルである。ただ、集団行動が苦手な僕にとって最高のタイムスケジュールだ。山登りもなければ、レクリエーションなんて地獄の時間も存在しないなんてうらやましくて、自分から辞めたことすら忘れて、いよいよ本気で進学コースに戻りたくなってきた。
「さすがだな。この感じ懐かしい」
「普通に同じ学校なのか時々疑問に思うレベルだよな」
「確かにクラス変わってから、びっくりしたもん。校則まで違うなんて知らなかった」
「それな、北村と会うまで進学コースだけ校則厳しいの知らんかったし」
「そうだよな、名前が同じだけの別学校だと思ってる」
進学コースの時にはあった毎週の身だしなみ検査は、総合コースに来てからは一度もないし、ツーブロックの生徒も存在している。それは進学コースではまずありえないことだった。
「北村とは別の理由だけど、俺も林間学校そんなに楽しみではないんよ」
「それもそうか」
これは僕が総合コースという場所に身を置いたから「進学コースの内容なら全然楽だろ」という感想が出てくるのであって、きっと進学コースに居たままだったら、多分江波戸と全く同じ感想になっていたのだろうと思う。
「山登りとかはまあ時間かかるからないのはわかるけど、カレー作りくらいやらせてよって感じ」
「それはそれで面倒だけどね」
「でもわざわざ泊まりに行って、勉強だけって普通に手間だろ。だったらまだ学校で授業のほうが準備もなくて楽やん」
やはり僕は江波戸と同意見だ。意外と江波戸と気が合うと思うことが多い。一年の時には全く別の人種だと思って近づきもしなかったし、勝手に几帳面な人だと思い込んでいたが、彼のノートはぐちゃぐちゃで、参考書の書き込みは正直読めたものではなかった。テストなど他の人が読むものは読みやすいように書くらしいが、自分しか読まないものは基本的に適当らしい。
僕と同じ思考でノートをとっている人が存在しているとは思っていなくて、それを知った時、僕は少し歓喜した
この日の昼休みは僕が永遠に林間学校の愚痴を言って、幕を閉じた。
「どうしたのそんなご立腹で。北村にしては珍しい」
江波戸と過ごすいつも通りの昼休み。ただいつもと違うことが一つだけある。それは、僕から江波戸に話しかけているということくらいだろうか。
「林間学校でバレー大会なんてありえない」
「そんなんあるの!?」
「え、逆にないの?」
僕は人生ではじめて進学コースを離脱したことを後悔した。こんな行事があると先に知っていれば、絶対進学コースに残ったのにと一瞬思ってしまった。林田先生の子供の話を聞いて、進学コースをやめてよかったと心の底から安心していたのは最近のことだったのに。それほどまでに、バレー大会は僕の精神をむしばんでいるんだ。
「う、うらやましい……」
「ないって言っても俺らずっと補習だよ。俺からするとバレー大会のほうがずっといいと思うけどなあ」
「そんな訳ない、ずっと座ってるだけでいい補習のほうがマシに決まってる」
「北村って運動苦手だっけ」
「苦手だよ! というか運動苦手じゃなくても、あんなアスリート予備軍みたいな連中の中に入れられたらどうしようもないだろ」
「それは確かに」
「でも、俺らのクラスよりよっぽどいいだろ。ほとんど勉強合宿みたいなもんだぞ」
江波戸はなぜか林間学校のしおりを持ってきていたようで、僕に見せてくれた。その中身の差に愕然とした。これは同じところに行くのか怪しいレベルの内容だった。
娯楽など一切なく、朝9時から夜10時まで勉強漬けの日程だ。レクリエーションなんて行事も一つもなく、ずっと勉強。これは先生の方が大変なのではないかというレベルである。ただ、集団行動が苦手な僕にとって最高のタイムスケジュールだ。山登りもなければ、レクリエーションなんて地獄の時間も存在しないなんてうらやましくて、自分から辞めたことすら忘れて、いよいよ本気で進学コースに戻りたくなってきた。
「さすがだな。この感じ懐かしい」
「普通に同じ学校なのか時々疑問に思うレベルだよな」
「確かにクラス変わってから、びっくりしたもん。校則まで違うなんて知らなかった」
「それな、北村と会うまで進学コースだけ校則厳しいの知らんかったし」
「そうだよな、名前が同じだけの別学校だと思ってる」
進学コースの時にはあった毎週の身だしなみ検査は、総合コースに来てからは一度もないし、ツーブロックの生徒も存在している。それは進学コースではまずありえないことだった。
「北村とは別の理由だけど、俺も林間学校そんなに楽しみではないんよ」
「それもそうか」
これは僕が総合コースという場所に身を置いたから「進学コースの内容なら全然楽だろ」という感想が出てくるのであって、きっと進学コースに居たままだったら、多分江波戸と全く同じ感想になっていたのだろうと思う。
「山登りとかはまあ時間かかるからないのはわかるけど、カレー作りくらいやらせてよって感じ」
「それはそれで面倒だけどね」
「でもわざわざ泊まりに行って、勉強だけって普通に手間だろ。だったらまだ学校で授業のほうが準備もなくて楽やん」
やはり僕は江波戸と同意見だ。意外と江波戸と気が合うと思うことが多い。一年の時には全く別の人種だと思って近づきもしなかったし、勝手に几帳面な人だと思い込んでいたが、彼のノートはぐちゃぐちゃで、参考書の書き込みは正直読めたものではなかった。テストなど他の人が読むものは読みやすいように書くらしいが、自分しか読まないものは基本的に適当らしい。
僕と同じ思考でノートをとっている人が存在しているとは思っていなくて、それを知った時、僕は少し歓喜した
この日の昼休みは僕が永遠に林間学校の愚痴を言って、幕を閉じた。
