新たな恋は意外な場所からやってくる

江波戸から林間学校の話をされてかなり気持ちが沈んだまま、僕は5限を迎えた。

「起立、礼、着席」
「今日のこの時間は5月25日からの林間学校についてだ」

教室は大いに盛り上がっていた。僕だけが異世界に飛んできたのかというテンションの差に風邪をひきそうになりつつ、成り行きを見守ることにした。僕はどうせ班決めで配属があぶれるのだから、ここで何か大きなアクションを起こすことはない。

「班決めは先生の方でやらせてもらった」

教室がざわついた。先ほどの明るい盛り上がりとは異なり、ブーイングに近いざわつきだった。

「はーい、なんで先生が勝手に班決めしたんすか」
「班決めに時間取られると面倒くさいからな。それにみんなで決めたとして文句が出るのは決まってるだろ」

そう言って担任は黒板にどんどん名前を書いていく。このクラスは25人と少し少なめの人数で、男子15人女子10人という何とも言えない男女比である。そして僕以外は、強豪の部活に所属しているフィジカルエリート集団に、何もできない僕といった構成だ。このクラスで僕が浮いてしまう理由もお分かりいただけるだろう。

書かれる名前を見て一喜一憂しているみんなを見て、僕はどこへ配属になっても同じだと思い、特に何を見るでもなく教室の外を眺めて過ごしていた。

「じゃあ、班で固まってー」

担任の指示に、ようやく僕は黒板に目を移した。

3班か。別にだれか知っている人がいるというわけでもない。班員が集まっているところへ行くと、僕以外の男子2人と女子2人がいた。

「お願いします」

同級生相手に敬語という壁を自ら構築してしまったことに気づいたが、時すでに遅しである。そういえばこのクラスに来て僕はほとんど会話をした記憶がない。僕の学校はかろうじて名札が存在しているので、何とかそれを見ながらコミュニケーションをとる。

何となくリーダー気質っぽい高橋が場を回してくれる。

「まずは班長決めなんだけど、やりたい奴いる?」

そこに流れるのは沈黙であった。クラスの勢力図を何も理解できていないのだが、この場にいる全員がおそらく仲良くないことだけは分かった。おそらく担任はあえて微妙な関係性の人たちを組み合わせることで、ハブられる人を減らそうという魂胆らしい。担任の策に助けられたことに心の中で感謝した。ありがとう、増田先生。

「やりたい奴いないなら俺やるけどいい?」

おそらく自分がやるつもりではあったのだろうが、一応形式上募集してくれたのだろう。なんていい人なんだろう。話しにくいとしか思っていなかった同級生も、こうしてみるととてもいいやつに見えてくる。

「高橋君、やってくれてありがとう」
「先生に伝えてくる」

高橋はそのまま先生のもとへ伝えに行き、しおりを持って帰ってきた。

「これ、みんなに配っといてだって」
「あ、ありがとう」

配られたしおりに目を通す。班対抗のバレー対決という地獄のような行事に僕は目を見開いた。なんてヤバイ行事がここには存在しているんだ。

こうなったら仮病で休むしかない。というかこんなバカげた行事が存在していること自体がありえない。しかも男女混合なんて危険極まりないではないか。もっと言えば僕みたいな運動音痴にはまったく配慮のないこの行事は、ソッコーで廃止されるべきである。

「バレー大会なんてあるんだ」

ナイーブな自分とは対照的に、このクラスの者たちは大いに盛り上がっていた。さすが別名スポーツクラス。こんな行事に対しても全力でぶつかることができるなんて何とも素晴らしいことだ。では、こいつらと戦わなければいけないとても可哀そうな僕とのパワーバランスはどうなっているんだ。きっと高橋は運動ができるのだろうけれど、それでカバーできるほど僕の運動音痴は生易しくない。

「すげー、頑張ろうな」
「もちろん」
「やるからには優勝目指そうぜ」
「だね!」
「う、うん」

ここまで心の中で毒づいても、現実でそんなことを言えるわけがない。キラキラとした目で「頑張ろう」と言われてしまえば、僕は苦笑いしながらうなずくことしかできなかった。