新たな恋は意外な場所からやってくる

連休が明けて憂鬱なはずの火曜日。
僕はなぜだか、学校へ行くのがいつもより楽しみだった。楽しみと言っても、学校への評価がマイナス100だったのがゼロになっただけなので、別に評価がプラスに転じたわけではない。

ただ、学校へ向かう足取りがここまで軽いのは一年生の頃以来だろう。あの頃は林田先生のクラスになれたことが嬉しくて仕方なかった。それに数学の授業は基本的に毎日あった。何なら一日に2時間ある日すらあって、そんな日は少し早く起きて授業の復習をしていたものだ。難しいところを確認して、授業後に先生に話しかけるきっかけ作りに奔走していた。もともと得意というわけでもなかった数学を恋心だけで伸ばしていたあの頃の自分は、なかなか健気だったと思う。全く勉強しなくなった今の僕には、当時の数学の成績など見る影もないのだが。

少し思い出に浸っていると、電車の時間が迫ってきていた。急いで教科書をカバンに詰め込み、少し急ぎ足で家を出た。

今日も今日とて山を登り、僕はオアシスで江波戸と昼飯を食べていた。江波戸は英検が終わったため、特にここに来る意味もないはずなのに、相変わらず顔を出している。
英検の期間が終われば来なくなるだろうと勝手に思っていたが、そんなことはなかった。去年の記憶が正しければ、江波戸には友達がいるはずだ。なのに毎日こんなところに来ていて、周りから不審に思われないのだろうか。まあ、僕の知ったことではないけれど。

ただ、江波戸がこの山に来る理由として、ひとつだけ考えられることがある。進学コースの人間は、他のコースの人と関わることが基本的にない。一年次までは部活動に入ることができるのだが、二年次からは受験のため部活動への参加が認められなくなる。この制度のせいで基本的に進学コースの人たちは、一年の頃から部活に入らず毎日勉強漬けの日々だ。だから他のコースの情報を入手するのに、僕を使っているのかもしれない。だとしたら周りのことを何も知らない僕は、江波戸の役にひとつも立っていないことになるのだが。

「班決め終わった?」
「班決めって?」
「林間学校だよ、5月末の」
「そんな行事あったっけ」
「あるよ。ほら、学校が持っているセミナーハウスで二泊三日の研修。ほんとは一年の時にやる行事だけど、去年ハウスの改修で今年に延期になったって覚えてない?」
「そんなこともあったな」
「今日の4限で俺のクラスは班決めしたからさ。北村のクラスはどうだったんかなと思って」
「そういえばこの後、5限は総合だったような」
「その時に決めるんだよ」

普通に生きたくねー。休もうかな。特別仲のいいやつもいないし、班決めとか最悪すぎる。そもそも他人と同じ部屋で寝られる自信が全くない。

朝の元気はどこへ行ったのか。僕の生活は、あっけなくマイナス100まで戻ってしまった。