重なる唇から、彼の体温が鼓動を通じて伝わってくる。誰もいない放課後の図書室。窓から差し込む夕日が、二人の影を長く床に落としていた。
キスをしながら、美優は静かに目を閉じ、胸の内でそっと呟いた。
(ねぇ、優希くん。私ね、きっと優希くんに出会えてなかったら、こんな気持ちにならなかった。自分からキスをねだったり、きっとこの瞬間が一番幸せだって感じることができなかったと思う)
かつて負った心の傷が、完全に消えたわけじゃない。自分が不完全なままであることも、美優自身が一番よく知っていた。けれど、優希はそんな歪な自分をまるごと抱きしめ、愛してくれた。
(それを教えてくれたのも全部君なんだよ。ずっと私の事を一番に考えて、ずっと好きでいてくれたのもあなただった。これから私も、あなたに伝えていくから、それまで待ってて)
重ねた唇が一度離れる。すぐ目の前にある優希の瞳が、愛おしそうに美優を映していた。美優はもう一度、今度は自分から小さく背伸びをして、彼の唇にそっと触れた。
(あなたに恋して、これからどんどん伝えていくから。それまでずっと私を離さないでね……)
そんな溢れるほどの想いを胸に抱きながら、美優は優希と紡ぐ甘い時間に、ただ深く酔いしれていた。
静まり返った図書室のなかに、世界で一番甘くて優しい二人の時間が、どこまでも、どこまでも幸せに広がっていった。



