不完全な僕達は。【完結】



校庭へと続く廊下を、美優ははやる気持ちを抑えきれないまま、急ぎ足で進んでいた。

外へ出ると、夕暮れの心地いい風が汗ばんだ肌を掠めていく。運動場では競技の喧騒がすっかり収まり、生徒たちが散らばってテントや用具の片付けを始めていた。

「おい、片付けが終わった班から各自解散して帰っていいぞー!」

拡声器を持った先生の声が遠くで響く中、美優は自分のクラスのテントへと向かった。そこには、パイプ椅子を片付けながら首を長くして待っていた萌華の姿があった。

「もう、美優! なかなか帰ってこないから、すっごく心配したんだからね!?」

美優の姿を捉えるなり、萌華は手に持っていたパイプ椅子を地面に置き、腰に手を当ててツカツカと詰め寄ってきた。

「ていうかさ、リレーの後のあれ何!? 美優、色々と私に隠してることがあるでしょ! あとで一から十まで全部教えなさいよ!?」

鋭く問い詰められ、美優は「あー、えと……あははは」と、首元のマフラータオルを少しだけ押さえながら苦笑いで誤魔化すしかなかった。でも、さっきまでのような重い罪悪感はもうどこにもない。美優は真っ直ぐに親友の目を見て、ふんわりと笑った。

「ごめんね、萌華。……ちゃん今度は絶対に全部話すから」

過去を乗り越え、吹っ切れたような美優の晴れやかな笑顔を見て、萌華は一瞬きょとんとした。けれど、すぐにすべてを察したように、白い歯を見せて二カッと豪快に笑った。

「もー、しょうがないなー!……あ、そうそう。優希くんなら、もう着替え終わって『図書室で待ってる』って言ってたよ? はやく行きな!」

「えっ……!」

美優は小さく目を見開いた。彼が待っていてくれる場所――それは、二人の過去が交錯し、そして新しく始まった、あの思い出の図書室だった。

「萌華、本当にありがとう!」

美優は萌華に大きく手を振ると、大急ぎで更衣室へと向かった。体操服からいつもの制服へと着替え、髪を整える。リボンを結び直すとき、昨日優希が首筋に残してくれた小さな痕跡が鏡に映った。

(待ってて、優希くん)

美優はカバンをしっかりと握りしめ、静まり返った校舎へと足を踏み入れた。夕日が廊下を長く、オレンジ色に染め上げている。一段ずつ階段を上り、美優は二人の特別な場所である図書室へと、愛おしさを噛み締めながら足を運んだ。