不完全な僕達は。【完結】




雲一つない青空が広がり、運動場は朝から生徒たちの熱気と大歓声に包まれていた。いよいよ迎えた体育祭当日、会場のあちこちで賑やかな盛り上がりを見せている。

「いっけえぇぇー! 回れ回れ! ガンバレー!」

メガホンを両手に持った萌華は、開始早々テンションが最高潮に達していた。自分のクラスの出番でもないのに、身を乗り出して他のクラスの応援までしている始末だ。

「ちょっと、萌華! 他のクラス応援してどうするのよ」

美優は呆れ半分で苦笑いしながら、親友の制服の裾を引っぱった。そんな美優は、昨日の放課後に優希から刻まれたキスマークを隠すため、首元をしっかりと大きめのマフラータオルで覆い、隙間がないように固く結んでいた。少し汗ばむ陽気の中では、あきらかに不自然な重装備である。

「いーの、いーの! 他のクラスの男子もイケメン多いんだから、目の保養よ〜!」

萌華はよく分からない理由を並べ立てて、さらに楽しそうにはしゃいでいる。しかし、次の瞬間、彼女の鋭い視線がぴたりと美優の首元へと向けられた。

「てかさ、昨日の放課後、相良くん大丈夫だったの? 怒らせちゃって結構やばい雰囲気だったじゃん」

「っ……!」

不意の質問に、美優はギクリと肩を強張らせた。昨日の誰もいない教室での、あの強引な抱擁と、首筋に走ったチクリとした痛みの記憶が鮮烈によみがえる。

「う、うん……。ちゃんと話して、仲直りしたから大丈夫だよ」

動揺を隠すように、美優はよそよそしく視線を泳がせながら答えた。だが、そんな分かりやすい親友の態度を、恋愛に目ざとい萌華が見逃すはずもなかった。

萌華はニヤニヤと意地悪な笑みを浮かべ、美優の首元のタオルを指さした。

「ははーん、怪しい……。さては美優、そのタオルと何かしらの『関係』があるんでしょ! ちょっと見せてみなさいよー!」

「ちょ、ちょっと! 萌華! やめてってば……っ!」

萌華がタオルの端を掴んで引っ張ろうとするのを、美優は顔を真っ赤にして必死にディフェンスする。もしこれが外れて、優希のつけた赤紫色の痕跡がみんなの前に晒されたら、恥ずかしさで本当に気絶してしまう。

「いいじゃん、減るもんじゃないし! 相良くんにお仕置きでもされたのー!?」

「もう、萌華のバカ! 本当にダメだからっ!」

青空の下、テントの片隅で繰り広げられる二人の微笑ましい攻防戦。必死に首元を死守しながら、美優は運動場の向こうでリレーのウォーミングアップをしている優希の姿を盗み見た。

彼からの「俺のって証」を守るために必死になっている自分に、どこか気恥ずかしさと、それ以上の愛おしさを感じずにはいられなかった。