横浜での校外学習、そして保健室での甘い告白からしばらくが経ち、学校は一気に活気づく『体育祭』の季節を迎えていた。
「よし、じゃあ男子のリレーは相良で決まりな!」
「女子の借り物競争、私いくわー!」
昼休みの教室では、体育委員を中心に種目決めで大盛り上がりしていた。
クラスの人気者である優希は、当然のようにクラスの勝敗を握る「選抜リレー」のアンカーに大抜擢される。
隣の席でノートを広げていた萌華は「私は借り物競争にする!」と元気よく立候補し、運動があまり得意ではない美優は、萌華に背中を押される形で「障害物競走」の担当に決まった。
そして昼過ぎからは、全校一斉に運動場での各自練習がスタートした。
太陽の光が降り注ぐ運動場は、笛の音や生徒たちの歓声で満ち溢れている。リレーのバトンパスを何度も確認している優希の姿を遠目に見つめながら、美優はクラスの係の仕事に追われていた。
「美優、ごめん! あっちの体育倉庫から予備のカラーコーンと、女子のクラスゼッケン取ってきてもらってもいい!?」
「あ、うん! 分かった、行ってくるね!」
美優は汗を拭いながら、バタバタと慌ただしく走り出した。
運動場の隅にある体育倉庫へと向かう途中、ふとリレーの練習の手を止めて、こちらをじっと見つめている優希と視線が合う。
優希は美優の忙しそうな様子に気づくと、眩しそうに目を細めて、ひらひらと優しく手を振ってくれた。
その小さなファンサービスだけで、胸の奥がトクンと跳ねて、疲れが吹き飛んでいくのが分かる。
美優は小さく振り返し、足早に薄暗い体育倉庫へと足を踏み入れた。
重い鉄扉の向こうは、ひんやりとした空気が満ちている。埃っぽい匂いの中、美優は目的のゼッケンが入ったカゴを探して、倉庫の奥へと進んでいった。



