不完全な僕達は。【完結】



「俺ばっかり、美優のことを好きで……ほんとに、余裕がなかったんだ」

顔を覆ったまま、優希はポツリポツリと、心の奥底に沈めていた本音を吐き出すように話し出した。いつもの自信に満ちた姿からは想像もつかないほど、その声は小さく震えている。

「実はさ……、俺。美優があの伊澄と付き合ってたの……知ってたんだ」

「え……っ!?」

予想だにしなかった言葉に、美優は思わず声をあげてベッドの上で跳ね起きた。
なぜ優希が、自分がずっと隠してきた過去を、そして伊澄先生の名前を知っているのか。混乱する美優の前で、優希はついにすべてを観念したかのように、がっくりと項垂れて話し出した。

「美優は全然気づいてなかっただろうけど……、俺と美優、中学同じなんだよ」

優希は少し自嘲気味に、だけど優しく微笑んだ。

「クラスは違ったけどね。俺、あの頃は全然目立たない地味な生徒だったし。ある日、廊下ですれ違った美優に一目惚れしたんだ。それから、美優がよく図書室にいるのを見かけるようになって……」

「ちょ、ちょっと待って……っ!?」

あまりの衝撃の連続に、美優は優希の言葉を遮るようにして叫んだ。

「え?」

優希がきょとんとして振り返る。美優は混乱する頭を必死に働かせながら、目の前の彼を見つめた。

「私と、優希くん、同じ中学だったの……っ!?」

「だから、最初からそう言ってんじゃん」

優希は美優の慌てぶりに、思わずいつもの調子を取り戻したようにクスッと笑った。けれど、美優の心臓はさっきの告白とは違う意味でバクバクと激しく波打っている。

「じゃあ……優希くん、その頃から、私のこと……?」

そこまで言いかけて、美優は自分がとんでもなく恥ずかしいことを口にしていることに気づいた。自分で言っていて顔から火が出そうだ。

優希は美優から少し視線を逸らし、照れ隠しをするように頭の後ろをごしごしとかいた。

「……まあ、そーなんだけど」

ぶっきらぼうに、だけどはっきりと肯定した優希の横顔を見て、美優は顔が一気に赤くなるのを感じた。

あの中学時代。伊澄先生との歪んだ恋愛で頭がいっぱいになり、周りのことなんて何も見えていなかった。まさか、同じ中学校の同じ校舎の中に、自分のことを見つめてくれていた優希がいたなんて。そして、彼がずっとその想いを抱えたまま、高校で再び自分の前に現れてくれたなんて。

すれ違っていた二人の過去のピースが、いま、保健室の静寂の中でピタリと噛み合おうとしていた。