白いシーツの上に押し倒され、美優は息を呑んだまま優希を見上げた。
すぐ目の前にある優希のターコイズブルーの瞳は、いつもと違ってひどく揺れていて、胸を締め付けられるほど切ない光を宿していた。
「美優はさ……」
優希は掠れた声で、まるで壊れやすいガラスに触れるように言葉を紡ぐ。
「アイツが、好きなの……?」
その問いかけに、美優は小さく目を見開いた。
優希が何を不安に思っているのか、どうしてそんなに苦しそうな顔をしているのかが、痛いほど伝わってきた。だからこそ、美優の心に迷いはなかった。昨夜からずっと温めてきた、そして萌華に背中を押してもらったあの言葉を、まっすぐに口にする。
「ううん。私は……優希くんが好きだよ」
「え……」
今度は優希が、信じられないものを見たかのように呆然と目を見開いた。
完璧に見える彼の余裕を奪えたことが、ほんの少しだけ嬉しくて、美優は優希のシーツを掴む手にぎゅっと力を込めた。彼にすべてを知ってほしくて、自分の過去を、そして本当の気持ちを、一文字ずつ丁寧に語りかける。
「優希くんに、ずっと言えなかったことがあるの。私……中学の頃に、あの伊澄先生と付き合ってた。でも、最後はすごく傷つく形で別れて……それが辛くて、ずっと恋愛から逃げてきたの。感情がないって周りに言われても、仕方ないって諦めてた」
美優は優希の瞳をまっすぐに見つめ、優しく微笑んだ。
「今日、本当に偶然再会して、最初はすごく怖くて驚いた。……でもね、私は、優希くんと一緒に過ごしてきて、優希くんのことが本当に好きだって、気づいたの。伊澄先生との過去があったからじゃない。今の、私のありのままを受け入れてくれる優希くんのことが、好きだよ…」
一気に想いを吐き出すと、美優の目から一筋の涙がこぼれ落ちた。
それを聞いた優希は、しばらく硬直していたが、やがてじわじわと顔を赤く染めていった。あのいつもスマートな優希が、完全にキャパシティをオーバーしているのが分かる。
「なんだよ、それ……」
優希は押し潰されたような声を出すと、ゆっくりと美優の上から身体を起こした。そしてベッドの端に腰掛け、片手で顔を覆うようにして、美優から顔を背けてしまった。指の隙間から覗く耳の先まで、真っ赤に染まっている。
美優はシーツの上で上体を起こし、彼の予想外のリアクションに驚いて声をかけた。
「優希くん……?」
覗き込もうとする美優に対し、優希は顔を隠したまま、小さく肩を震わせて深くため息をつくのだった。



