萌華は大きく目を見開いた。驚きはすぐに、弾けるような特大の笑顔へと変わる。
「美優っ、良かったじゃん! めっちゃ良かったじゃん……っ!!」
萌華は叫ぶように言うと、勢いよく美優の身体に飛びつき、折れそうなほど思いっきり抱きしめた。カバンが二人の間でぶつかって小さな音を立てたけれど、そんなことはお構いなしだった。
「うわっ、萌華、苦しいよ……っ」
驚きながらも、美優の胸の奥には、言葉にできないほどの温かい感情がこみ上げていた。ぎゅっと背中に回された親友の腕の強さが、自分のことのように喜んでくれている証拠だった。
美優は少し目を潤ませながら、萌華の肩口にそっと顎を乗せた。
「うん……ありがと、萌華」
これまで、不完全な自分を隠すように、誰かを好きになることから逃げてきた。そんな自分が、誰かをこんなにも愛おしいと思えるようになったこと。そして、それを世界で一番応援してくれていた親友に、ようやく胸を張って報告できたことが、涙が出るほど嬉しかった。
萌華はゆっくりと身体を離すと、美優の両肩をガシッと掴み、真っ直ぐにその瞳を見つめてきた。
「ちゃんと、相良くんに伝えなよ、もう! 付き合ってるんだから、ちゃんと『好き』って伝えないとダメだよ!」
萌華は悪戯っぽく、だけど最高に頼もしい笑顔でそう言った。
「そうかな……」
美優が少し照れて視線を泳がせると、萌華は「何言ってるの!」と美優の頬を優しくつねる。
「言葉にしなきゃ伝わらないことだってあるの! 特に、あの相良くんが美優に『好き』って言われたら、絶対に余裕なくして真っ赤になるんだから! 告白のリベンジ、ちゃんとしなよ!」
「もー、萌華ったら……」
美優はクスッと声を上げて笑った。
オレンジ色に染まる通学路。優希への想いを自覚し、それを言葉にした美優の心は、驚くほど軽やかだった。



